ホームジャパン【海外生活者インタビュー第5回】日本人と日本語は難しい マチューさん(25)

【海外生活者インタビュー第5回】日本人と日本語は難しい マチューさん(25)

海外で働く人、結婚する人、子育てする人、学ぶ人にはそれぞれいろんなドラマがある!海外で頑張る人のドラマを「これから海外に行こう」と考えている人に伝えたいと思い、海外在住者にインタビューしていきます。第5回目の今回は、日本語がとても上手なフランス人へのインタビュー。日本での留学経験もあるマチューさんに、フランス人から見た日本人や日本語学習の難しさについて語ってもらいました。

 

- マチューさんが日本に興味を持つようになったきっかけって何ですか?

インタビューにこたえてくれたマチューさん
インタビューにこたえてくれたマチューさん

マチュー 兄が東京へ旅行にいったことがきっかけでした。兄から東京での暮らしを撮った写真やビデオを見せてもらい、「日本って何だか面白そうな国だな」と思うようになりました。それからインターネットで日本について調べてみたり、日本のドラマやアニメを見るようになりました。そうするなかで、日本人とフランス人には気質や性格の違いがあるということに気が付くようになり、ますます日本のことが知りたくなって…。当時僕が思っていた日本人のイメージは「静か」、「真面目」、「シャイ」でしたが、フランス人にはあまり見られない日本人のこういった一面に魅かれ、次第に日本に行ってみたいと思うようになりました。

 

- 実際に日本に行ってみて、それまでイメージしていたものとは違ったことはありましたか?

マチュー フランス人がもつ日本のイメージはアニメや漫画、コスプレなどが多いのですが、実際に行ってみると日本人はそこまで“アニメ好き”というわけではないんだなと思いました。

あと、僕が日本人に対して持っていたイメージは、日本人を知れば知るほど、それが先入観だったということに気が付きました。

例えば、東京駅で品川への行き方を街の人に英語で聞いてみたとします。すると、大半の日本人が「わかりません」や「ごめんなさい」と答えます。日本に来た当初は「日本人はシャイだから答えない」、「本当に行き方がわからないから答えない」と思っていましたが、次第に英語で間違えたくないから答えないのではないか?と思うようになりました。あやふやな英語で説明して、僕がおかしな方向に行くのを避けようとしているのではないか?と思うんです。これが日本人とフランス人の違いですね。

フランスで人に道を尋ねても、教えてもらった道順が絶対に正しいとは限りません。ひょっとしたら、ジョークのつもりで間違った方向を指さす人もいるかもしれない(笑)。道を聞かれた方もそこまで真剣になって正しい行き方を教えようとは思いません。わからなくても、おおよその検討で答える人がフランスでは大半です。日本人が“話さない”のは、シャイだからという理由ではなく、相手への思いやりが背景にあることを知りました。

 

- 日本人とフランス人には大きな違いがあると語るマチューさん。日本人とつきあう上で難しいと思うことはありますか?

マチュー 日本人とは友達になっても、親しくなることが難しいなと思います。東京という土地柄もあるのでしょうが、人間関係が空虚だなと感じることも少なくありませんでした。日本人はフランス人に比べて、基本的に忙しくて時間がないことも関係しているのでしょうが、日本ではみんな毎晩新しい友達をつくり、その後に会おうとはせず、その場限りの人間関係をもつ人が多いという印象です。大人数だと会ってくれるのに、少人数では会おうとしない人もいます。

それに、日本人同士の人間関係ではお互いに自分のいいところや悪いところをなかなか相手に見せにくいのではないかと思います。フランス人は基本的にみんな自分の気持ちをストレートに表現します。

例えば、フランス人の友達に相手の嫌なところを言ったとします。フランス人の場合は、それに対して「そんな風に言わなくてもいいじゃないか」とか、「そんなことないと思う、だって~」のように、思ったことを素直に言葉にします。その場で言葉にするから、お互いに話し合うことができ、ちょっとしたいざこざもその場で終わらせることができます。

反対に日本人は、相手に何か嫌なことを言われた場合でも、その場は笑って流すという人が多いように思います。怒りたいときも、がっかりしたときも、それを相手に伝えることなく自分のなかでため込んでしまう。こうして内側に秘めた気持ちが堪っていくと、人間関係がストレスになってしまうのではないでしょうか。かといってフランス人のコミュニケーションが完璧かと聞かれたらそうではないし、フランス人もはっきり言いすぎる面がありますが、日本人はもう少し自分の思っていることや考えを言葉にしてもいいのではないかと思います。

そうすれば、人間関係もよりシンプルになると思うし、もっと早く相手の性格や考えなどを理解できるのではないでしょうか。僕は相手の気持ちを思いやる日本人の気質が好きですが、もう少し相手に踏み込んでみることも良い人間関係を構築するうえでは必要なのではないかと思います。

 

- 今では日本語がとても上手なマチューさんですが、なぜ日本語を学んでみようと思ったのですか?

マチュー 日本のドラマや雑誌を見て、日本語には漢字とひらがな、カタカナの3種類があることを知り、面白い言語だと思いました。特に漢字は、日本人から見るとまぎれもない「文字」ですが、僕のようなフランス人から見ると漢字は「絵」なんです。その絵がそれぞれどういった意味をもつのか知りたくなりました。今でも漢字は知れば知るほど奥が深くて面白いなと思います。

 

- 日本語は難しいとよく言われますが、フランス人から見て日本語の難しいところってどんなところですか?

マチュー 日本語を習い始めた当初は、正直日本語は簡単だと舐めていました(笑)!時制も現在と過去の2種類しかないし(フランス語は動詞が8種類に変化する)、発音も難しくはありません。しかし、勉強すればするほど難しい言語だなと思うようになりました。目上の人に使う敬語や、ニュースで使用される言葉などは普段使っている日本語とは全然違って難しいです。

それと日本語は、1つの音でたくさんの意味を持つところが難しいです。例えば、「かみ」という単語は、「髪」、「紙」、「神」、「加味」、「噛み」と表記することができます。漢字で書けば意味がわかるのに、音だけ聞いたら意味がわからない。これはフランス語にはあまりないことですね。日本語の漢字はとても面白い。それと同時にやっぱり難しいです。

 

今年の10月から日本での生活を再スタートさせるというマチューさん。日本人の真面目で控えめなところが好きだと語る彼は、フランス人とは思えないほど物腰が柔らかく、日本の社会にもすんなりと溶け込んでいきそうな印象を持つ青年だった。これからの目標は日本語検定1級に合格し、日本で仕事を見つけることだという。好奇心旺盛な彼がこれからどんな「日本」を発見していくのか、今からとても楽しみである。

マチュー フォンタナ(まちゅー ふぉんたな)

1987年モナコ生まれ。兄が行った日本旅行がきっかけで日本に興味を持ち始める。22歳で銀行を退職後、本格的に日本語の勉強を始める。その後1年ほど日本の語学学校に通いながら、大好きな東京ライフを堪能。現在は、ラチュルビーにて日本人の彼女と一緒に暮らしつつ、日本での生活に向け着々と準備を進めている。

 

 

 

関連記事

12 コメント

人気記事

最新のコメント