トルコの海岸に男の子の遺体が打ち上げられている写真が、全ヨーロッパに大きな波紋を広げました。さらに3日、ハンガリーの鉄道に難民が殺到し大混乱になるなど、ヨーロッパの移民問題に大きな注目が集まっています。
この事件を受けて、ネットでは「難民受け入れを義務にするなんておかしい」、「難民を受け入れたら国内がアラブ人だらけになるぞ」、「難民なんて正直迷惑なだけ」…といったコメントが目立ちました。確かにこれらの意見もよくわかります。実際、同じように考えているフランス人も多いですし、貧しくて言葉もわからない難民を受け入れれば、国内の経済や治安が悪くなってしまうことを心配するのも当然です。オランド仏大統領が難民を全面的に受け入れるなんて言おうものなら、筆者も大反対です。
しかし、命からがら母国から逃げてくる人たちの藁にもすがる思いをまるっきり無視するのは、人間としていかがなものだろうかとも思います。私たち日本人はたまたま、お金のある平和で恵まれた国に生まれてきたラッキーな国民なわけで、仮にシリアやアフリカで生まれていたら同じように豊かな国へ逃げたいと思うのではないでしょうか。
そこで今回はヨーロッパへ殺到する難民の厳しい現実をとらえた10枚の写真を紹介します。あなたはこれを見て、どう思うでしょうか。
サブサハラアフリカからの難民、2004年
2004年、カナリア諸島の地方新聞の記者が撮影した写真がこちら。サブサハラアフリカからの難民をたくさん乗せた小さなボートが島にたどり着いた。スペインの治安警備隊の調べによると、難民を乗せた船は転覆し、9人の男性が溺れ死んだと言う。29人の生存者のうち2人を海から救助するところを撮影したこの写真は、翌年の世界報道写真アワード(World Press Photo award)で賞を獲得した。
瀕死の難民を助けようとする観光客、2007年
カナリア諸島は2年前までは、アフリカ難民の主要な目的地であった。モーリタニアやセネガルから1000キロ以上の危険な船旅をしてカナリア諸島まで辿り着く。島に到着する頃にはほとんどの難民が餓死寸前だったり、脱水症状をおこしている。この写真はPlaya la Tejitaのビーチで撮影されたもので、沖にたどり着いた難民を観光客が助けようとしているものだ。これも2007年に世界報道写真アワードを受賞している。
ゴルフを楽しむ人とフェンスを乗り越える難民
スペインの2つの小さな飛地領であるセウタとメリリャはヨーロッパへ移民してくる人の入り口である。このゴルフ場は大陸までの隔たりがレイザーフェンスのみであるため、このように乗り越える難民があとを絶たない。写真ではゴルフスイングをする人の背後にフェンスを登っている難民が写ると言う、何ともシンボリックな写真である。
携帯電話の電波を探す難民、2014年
ジブチからの難民はアデン湾に立ち寄り、比較的安いソマリアのブラックマーケットで携帯電話のSIMカードを買っていく。写真家John Stanmeyerは、かすかな電波を探す難民グループに出会い、この写真を撮った。彼曰く、私たち人間全ての“普遍性”を感じたと言う。人間とは一対なんだろうか。2014年、世界報道写真アワードを受賞作品。
取り残された子供用のベット、シリアとトルコの国境にて
地中海にたどり着くまでに、ほとんどの移民たちは疲れ果てている。強烈な暑さや砂埃、荒れ果てたシリアとトルコの国境にはいつも、疲れから泣き叫ぶ子どもをあやす大人がいる。しかし、ロイターの記者は誰もいないこの地に辿りついた。そこには、子供用のベットがぽつんと捨てられていた。記者は語る。
「捨てられた子どものベットは、希望のなさを象徴しているようだった。難民が希望があると信じていたら、捨てなかったはずだ」
イタリア海軍のヘリから撮影された難民ボート、2014年
2014年、イタリアとリビアの間の海で撮影された難民ボートの写真。船内には難民が500人以上すし詰めにされており、この状態で5日間過ごす。2014年、世界報道写真アワードを受賞作品。
ギリシャの沖で救助されるシリア難民、2015年
4月、シリア人とエリトリア人を乗せた木製のボートがギリシャに到着寸前のところで岩に激突した。ギリシャ軍曹のAntonis Deligiorgisは奥さんと海辺でコーヒーを飲んでいたところ、溺れている人を発見。すぐに駆けつけ93人の乗客のうち20人を救助した。写真左の女性Wegasi Nebiatもその一人。救助された難民の中には妊娠中の女性もいたが、彼女は後にギリシャの病院で子どもを出産すると、自分たちを救助してくれた男性の名前にちなんで赤ん坊を名づけた。
息子と娘を抱き、安堵の涙を流すシリア人男性
娘と息子を胸に抱き、安堵の涙を流すこのシリア人男性は、トルコからギリシャまでゴムボートに乗ってきた。このゴムボートは少しずつ空気が漏れていたそうだ。「シリア全体の痛みがこの父親の表情に表れているようだ」とリビア情勢の研究者であるMaryFitzgerはツイートし、後にこのツイートがニューヨークタイムズで報道され、話題を呼んだ。
警察の包囲網を越えようとする父親、マケドニア
マケドニアが難民に国境をふさいだ先月、多くの難民が無人島で一夜を過ごしました。翌朝、警察の包囲網を無理やり破ろうとする難民が続出し、警察も手榴弾を投げるほどの混乱になりました。写真はそのときの様子。若い父親とその子どもの絶望感が表情に表れています。その後3週間にわたって、3万9千人の移民がセルビアとハンガリー経由でヨーロッパに入り、EUの難民登録を済ませました。
家族を支えるためにペンを売る男性、レバノン
この写真は先週、ソーシャルメディアで話題になった写真。家族を支えるために、レバノンの首都・ベイルートでペンを売り歩く男性です。彼はシリアからのパレスチナ難民、Abdul Halim Attarであるとネットで特定されました。この写真を見たGissur Simonarsonがクラウドファンディングを立ち上げ、現在では $181,000の寄付が集まりました。
これを知ったAttarは驚きのあまり圧倒されたそうです。Attarの夢は、シリアの子どもたちのために教育基金を設立し、ベイルートから一刻も早くシリアへ帰れる状態になることだそうです。
まとめ
世の中は、本当に不公平だと思いませんか。これらの難民たちは命を落とすのも覚悟でヨーロッパにやって来るほど、母国にはいられない状態であると想像すると、「難民は迷惑だから来るな!」と単純に撥ね付けていいものなのか疑問に思います。
私もパリで、シリアやリビアなどからの移民と話すことがありますが、彼らは私たちとは何ら変わりのない人間なのです。先進国の私たちが偉いわけでもなく、難民の彼らが劣っているわけでもありません。
だから移民を全面的に受け入れてもいいのかと問われると、それはまた別問題ですが、難民の立場に立った見方をするのも大切なのではないかと感じました。
参照:bbc.com