海外で働く人、結婚する人、子育てする人、学ぶ人にはそれぞれいろんなドラマがある!海外で頑張る人のドラマを「これから海外に行こう」と考えている人に伝えたいと思い、海外在住者にインタビューしていきます。第3回目の今回は、日本に住んでいた外国人へのインタビュー。大学生の頃に日本に留学したりんりんさん(25)に「台湾人から見た日本」について語ってもらいました。 |

-りんりんさんが日本に興味を持つようになったきっかけって何ですか?
りんりん 私と同世代の日本好きな台湾人はみんな同じだと思いますが、「ジャニーズ」がきっかけでした。中学生の時にテレビでやっていた「学校へ行こう!」を見て、V6の岡田くんが大好きになりました(笑)。その頃は日本のジャニーズがたくさん台湾にコンサートしに来たりしてて、ジャニーズをきっかけに日本に興味を持つようになりましたね。J-POPの歌の歌詞の意味を調べたり、日本の番組を見たりすることから、徐々に日本語の勉強を始めました。高校に入ると「日本語勉強会」というサークルに入って、みんなで日本の映画を見たり、日本の歌を歌ったり、楽しかったです。本格的に日本語を勉強し始めたのは大学に入ってからですが、日本語勉強歴はかれこれ11年になりますね。
-大学2年生の20歳の時に初めて日本に行ったというりんりんさん。実際に行ってみた日本の印象ってどうでしたか。
りんりん アイドルやアニメ、オタクの印象が強かったんですけど、行ってみるとそうでもないんだなって思いました。台湾で日本語の勉強をしている大学生はみんな日本のドラマを毎晩欠かさず見て勉強してたりするんですけど、実際、日本の大学生はそんなに台湾人ほどドラマを見ていなくて拍子抜けしました。あとは、日本は空気もキレイだし、天気も台湾と違って四季がハッキリしてて、四季折々のイベントもたくさんあって本当にいい国だなぁと思いましたね。
それと語学に関してですが、今では日本語も上達して日本人とも日本語で難なく会話できますが、日本に行く前までの学校の成績は決していい方ではありませんでした。20歳はもうアイドルを追いかける年でもないですし、このまま日本語の勉強を続けていくべきか悩んでいたんです。でも20歳の時初めて日本に3週間ほど滞在して、それまで台湾の学校で習ってきた日本語を実際に使う機会ができ、“相手を知るためにもっと日本語を勉強しないと!”と思うようになりました。台湾で勉強してきたことが実際にも使えるんだと実感したことで、その後の日本語の勉強に熱が入りましたね。
-日本に行って逆にがっかりしたことってありますか。
りんりん 日本人のアジア軽視には正直がっかりしました。交換留学生として1年間福岡の大学にいたときは、日本の大学生と留学生の交流会が定期的に行われていたんですけど、日本の学生はアジア人よりも欧米人が好きなんだろうなって思うことが何度かありました。台湾人の他に中国人、香港人、韓国人がいましたが、日本人の学生のほとんどはアジア人よりもアメリカ人、フランス人、イギリス人にばかり話しかけていて、差別されたような気がして腹がたちました。分け隔てなくつきあう日本人ももちろんいましたけど。
-日本人と付き合ううえで難しいなと思ったことはありますか。
りんりん 日本人の言う「今度会おうね」の“今度”がいつなのか、最初のうちはよくわからずに困りました。いわゆる日本のホンネとタテマエというやつが厄介でしたね。最初のうちはどこまでが本音で、どこまでが建て前なのか、なかなか見分けがつきませんでした。また、台湾人は自分のことを積極的に話しますが、日本人は自分のことをあまり語ろうとしないなと思いました。おそらく親友や本当に仲のいい人には自分のこともたくさん話すんでしょうけど、それほど仲がよくない人には極力語らない。例えば日本人であまり仲良くない人に「明日空いてる?」と聞いた場合、たいていが「明日はちょっと用事がある」って言いますよね。台湾人からすると、「いやいやその用事って何?」って思っちゃいます。台湾ではそれほど仲がいい人じゃなくても「明日は彼女とデートだから」とか、「バイトの人と飲みに行くから」とか、何をするかまでを言う人が多いですから。
-本音と建て前を区別する日本人とうまく付き合っていくために、りんりんさんがしたことは何ですか。
りんりん 私、日本の居酒屋って、日本人同士の人間関係を築く上で物凄く重要な役割を果たしていると思うんです。台湾だったら、クラブやバーでお酒を飲むっていうのが主流なんですけど、日本って居酒屋でお酒を飲んで交流を深める文化がありますよね。バーやクラブのようにうるさくない場所で、ゆっくり座っておいしいお酒と料理に舌鼓をうちつつ、仲間との会話を楽しむ…。私はそんな居酒屋の空間が大好きです。居酒屋はちょっとほろ酔い加減になって、相手の“本音”を引き出す場でもあると思うんです。普段、「本音と建て前」の社会で生きる日本人のコミュニケーションには居酒屋のような場所がとても合ってるんじゃないでしょうか。この人のことをもっと知りたいと思ったら、一緒に居酒屋に行けばいいんです。居酒屋は普段は見えにくい日本人の“人情深さ”が知れる場所でもあると思います。
-大学卒業後は台湾で日本人旅行客のツアーガイドをしていたというりんりんさん。台湾に来る日本人観光客にはどういう人が多かったですか。
りんりん 私が働いていた会社のお客さんは50代以上の方が多かったんですけど、8割は良いお客さんでしたね。時間も守るし、ガイドさんに対する礼儀もきちんとしてました。なかには、日本からお土産のお菓子を持ってきてくれたり、お見合いを持ちかける人もいて、フレンドリーな方が多かったです。残りの20%のお客さんは、台湾を日本だと勘違いしている人です。マーケットやお店に行って「日本円使えますか?」と言ったり、「何で日本語のメニューがないの?」、「何で日本語話せないの?」というクレームをつけたり…。世界は日本を中心に回ってるわけでもないし、台湾は日本じゃないんだから…と思いました。あと、台湾に来てまで日本の食べ物や日本のショップに行く人もいますが、もう少し冒険してもいいんじゃないかなと思います。
日本留学後は「いろんな世界を見て冒険したい」という思いから、現在はオーストラリア・シドニーで働いているりんりんさん。中学生のころから日本が好きだったと語る彼女は物腰が柔らかく、穏やかで優しい雰囲気をもった女性だった。将来は「台湾の人に福岡の魅力を伝えていくのが夢だ」と語る、そんな彼女の冒険はまだ始まったばかりである。
Jennifer Lin(じぇにふぁー・りん) |
1987年サウジアラビア生まれ、台湾育ち。台湾人の父親とフィリピン人の母親を両親に持つ。中学生のことから日本に興味をもちはじめ、大学は半数以上が卒業後日本語教師になる厳しい台湾東呉大学日本語学科を卒業する。大学4年次に福岡の大学に交換留学生として留学する。卒業後は台湾の日本人観光客向け旅行会社に就職し、添乗員や旅行手配業務に携わる。現在はオーストラリア・シドニーにワーキングホリデーで1年滞在している。 |