海外のテレビ番組を見ていると、その国の国民が関心を抱くトピックや日本との違いを知ることができて面白い。特に30秒ほどの短い映像で商品を売り込むテレビコマーシャルは、文化や価値観の違いが顕著に表れる媒体だ。
日本のテレビCMと海外のCMの一番の大きな違いと言えば、『芸能人やタレントの起用の有無』である。日本で現在放送されているコマーシャルの多くは誰もが知っているような人気芸能人を起用しているものが多いが、アメリカを初めとする欧米では有名人がCMに出るのは非常に稀だ。なぜこのような違いが表れるのだろうか?そこで今回は海外の日本語教育サイトより、日本好き外国人クレイトン・マクナイトさんが答える「日本のテレビコマーシャルが教えてくれる日本の文化」を紹介する。
私たちが普段何気なく目にしているテレビCMにも、日本文化の秘密がたくさん隠されている?のかもしれない。
アメリカで芸能人をCMに起用しないワケ
日本のCMへの疑問もそうだが、そもそもなぜ海外では芸能人をCMに使わないのだろうか。これには様々な憶測があるらしい。クレイトンさんいわく、アメリカで人気芸能人がCMに出たがらないのは「売れ残った人」というイメージをもたれるからだという。日本では”CM女王”という言葉があるように、CM出演数とその芸能人の人気度が比例している場合が多い。しかし海外では反対に、人気を失った芸能人がする仕事がCMといった認識が強いようだ。
また他にも訴訟社会のアメリカではCMの商品に問題があった場合、その商品を紹介した芸能人が訴えられる可能性があるため、芸能人がCMに出たがらないという説もある。さらに、国民の誰からも好かれているような大スターでない限り、少しでもその芸能人を嫌う視聴者がいれば逆効果になってしまうという懸念も大きい。有名人の起用が商品の印象を薄れさすという指摘や大スターへの高額な出演料などの理由からアメリカではテレビCMに芸能人を起用しないようだ。
とはいえ、最近ではこの傾向もなくなりつつあるという。ジョージクルーニーのNESPRESSO 「カプセルコーヒー」や、ヒュージャックマンのリプトンアイスティーのCMなどがそうだ。少しずつアメリカのCMの位置も変わりつつあるようだが、やはり日本のようにほとんどのCMで芸能人を起用するような状態になるには、まだもう少し時間がかかりそうだ。
なぜ日本のCMでは芸能人を起用するのか?
それではなぜ、日本では多くの企業が芸能人がテレビコマーシャルに起用したがるのだろうか。それには、日本独特の文化が背景にあるのではないかとクレイトンさんは語る。
「おそらく、日本人は他人への関心がアメリカ人よりも強いのではないだろうか。そしてその”他人”とは、自分の知っている人のこと。テレビや雑誌などで何度も見たことがある人に強い関心があるように思える。一般的に、日本では芸能人やタレントに自分と似た部分を重ね、自己投影しているのではないだろうか。芸能人は日本人にとっての憧れであると同時に、自分そのものなのだ。
だから、日本のCMはこう語りかける。
“あなたはこんなタイプの人間ですか?だったら、これを買ってください“と。
反対に、アメリカのCMではその商品が‟あなたに”どんなに良い効果をもたらすかを強調する。カロリーゼロなのにおいしい!とか、節約しつつも美しくなれる!とか。日本では好感をもたれている芸能人を起用すること、アメリカではその商品がどれだけ役に立つものかを説明することが、消費者の購買意欲につながるようだ。」
なるほど、確かにそう言われてみると日本のテレビコマーシャルは出演している芸能人に自己投影しやすいような内容になっているものが少なくない。これは日本に住む外国人の推測にすぎないが、日本のCMと海外のCMには確かに違いがあり、その違いがどこから来るのか憶測を立ててみるのも面白い。
あなたはなぜ日本のテレビCMは芸能人を多く起用するのだと思いますか?文化の違いが関係しているのでしょうか。それとも国によって消費者行動に違いがあるからでしょうか。あなたの意見を聞かせてください!