日本とフランスの数少ない共通点。それは日本もフランスもともに世界に誇る「長寿大国」であるという点である。
2009年度のOECD社会指標調査によると、日本の平均寿命はOECD諸国中最も高く男性で79.0歳、女性で85.8歳。
フランスは日本に次ぐ世界第2位の長寿国であり、平均寿命は男性で77.3歳、女性で84.4歳である。(グラフ参照)
一般に、日本人が長生きする理由として、日本人の食習慣が挙げられる。日本人は世界的にも、脂質が少ない健康的な食事をしていると知られているが、健康ライフとスキンケアに関する米国のブログ「skincare.body-money.com」では、日本人の食生活が日本人の長寿の秘訣だと綴られている。確かに日本食には、豆類・海藻類・根菜類など欧米諸国ではあまり見かけない、栄養価の高い食品を日常的に摂取している。
また、日本は世界トップクラスの漁業国であることから、栄養価の高い魚介類を使った食事が多く、またそれに派生する商品(魚肉すり身製品など)が多いため、どんな料理にも栄養価の高い食品を手軽に加えることができる。
また、日本人の体格の小ささが長寿の秘訣であるという見方もある。例えば相撲取りは日常的に運動し、体格がよくいかにも健康そうに思われるが、晩年は病気をしやすく早死にするといわれている。大きな体を維持するためのカロリー摂取量が多く、肝臓などの臓器にも負担がかかりやすい。一般に、動物実験ではカロリー消費量が低い方が長生きすると言われるため、肥満率が韓国についで世界に2番目に低い日本人は長生きするという仮説が立てられるのだ。
では、体格も大きく、アルコール消費量・カロリー摂取量ともに世界第4位(2004年WHO調査)のフランスが、他の先進国に比べて長生きできるのはなぜだろうか?
1つは、フランスの社会医療制度からくるものだろう。マイケル・ムーア監督の映画「シッコ Sicko」では、世界一の医療制度を誇るフランスを、夢のような医療大国として美化していた。もちろん現実は夢のようなことばかりではなく、日本に比べて面倒なシステムであったりして、映画のように何もかもが「素晴らしい」わけではない。しかし、フランスでは社会保険SS(securite sociale)などに入り、規定の手続きをふめば、医療費の6~8割を払い戻してもらうことができる点は国民にしてみれば実にありがたいポイントである。
また、出産のための入院(6ヶ月以降)は全額払い戻しができ、子どものめがねや歯の矯正も、払戻しの対象になるのだ。つまり、フランスは医療費の負担が少ない。また自分の主治医(Médecin Traitant)をもつシステムなので、同じ医師から定期的に検診を受けることができ、病気の早期発見・早期治療に繋がっていると言える。
また、フランス人のライフスタイルも長寿の秘訣ではないかと思う。年間連続5週間まで取得可能なバカンス休暇や週35時間労働制などからわかるように、フランス人は「余暇」を大切にする国民である。定期的に「余暇」を挟むことにより、仕事などで溜まったストレスを発散することができる。うつ病、神経症、胃潰瘍、過敏性大腸症候群、蕁麻疹、下痢、円形脱毛症など、ストレスが原因となる心身の病気を事前に防ぐ社会の仕組みになっているとも言える。
また、ストレスという点ではフランスの個人主義社会も、世間の目を気にしすぎることなく他人から干渉されることも少ないので、ストレスが溜まりにくいのではないかと思う。さらにフランス人の93%は文句ったれ!でも記したように、フランス人は不平・不満を溜めずその場で発散するタイプの人間が多いようである。この点からもフランス社会はストレスが溜まりにくいと言える。
以上のように、同じ長寿国である日本とフランスでもその理由には異なる点が多い。しかし健康的に暮らすことのできる要素が多いフランスでも、日本人の平均寿命に追いついたことは第二次世界大戦以降一度もない。健康に長生きしたいと望む人がいる限り、これからも日本人の健康・長寿の秘密は世界中から注目を集め続けるだろう。
長生きすることが本当に幸せなのか?という人もいるが、家族ができ、子どもを生み、そのまた子どもの孫ができることを想像すると、やっぱり長生きしたいと思うようになるのではなかろうか。
写真:Roman Boed