ホーム海外事情日本との違い「貧しくて学べない」フランスの教育にニッポンが学ぶべきこと

「貧しくて学べない」フランスの教育にニッポンが学ぶべきこと

フランスが世界に誇るもののなかに、「徹底した平等教育制度」がある。フランスの公立学校は、全て授業料無料。核兵器を保有する軍事国家であっても、文部予算は国防省のそれを上回る。だから、日本在住のフランス人はよく「日本の教育制度は不平等だ」と口にする。

フランスの小学校、中学校では教科書が教科書は貸与され、ノートや鉛筆の類が支給されることもある。その後の高校(リセ)は義務教育ではないので教科書も自前になるが、この間に支払う授業料はもちろんない。高校3年次に、フランス全土で行われる国家試験(バカロレア)に受け、大学に登録する権利を得て大学進学。よって受験料、入学費、授業料など資金の用意をする必要はない。そして、フランスの大学のほとんどは国公立であり、無償である。

確かにフランスの教育制度は日本に比べ、「平等教育」が徹底している。私の友人に、家がお金がないために大学はおろか高校にも進学できなかった人がいる。これまで勉強してきてないのだからペーパーテストでの点数は悪いのかもしれないが、私は彼女を馬鹿だと思ったことは1度もない。反対に、会話の節々で彼女の「頭の回転の速さ」を感じ、この子があのまま勉強していたら…と理不尽な気持ちになる。

言い換えれば、日本では生まれたときから「成功者」と「落第者」に分けられるのだ。もしあなたが毎日食べていくのでやっとの家庭に生まれたのなら、日本では「教わる」ことをあきらめなければならない。高校へ進学するよりも家族のために働くことを選ぶようになるだろう。しかし、この不景気の時代に中卒の人間が就ける職業というのは、一体どれくらいあって、どれくらいの収入を期待できるのだろうか?

そもそも日本の教育にはお金がかかりすぎるように思う。公立の小学校、中学校では授業料と教科書代は無料だが、給食がある学校では給食費が必要であるし、修学旅行の積立金やワークなどの教科書以外の学習用品の費用が必要となってくる。中学校ではほとんどの生徒が塾に通うようになり、塾に通わない生徒は学校で浮いてしまう。高校の授業料も馬鹿にならない。

「高い教育費」は少子化傾向にも繋がる。本当は子どもが3人ほしいけど、その余裕がないから…と、子どもをつくらないカップルは日本でどれくらい存在するのだろうか。教育費の高さは晩婚化にもつながる。教育費が高いので沢山の子供は育てられない。従って、慌てて結婚し、出産を開始する必要がない、まずは働こうとする者。教育費が高いので、給料が安い若いうちに子供を育てるのは無理。キャリアをつみ給料が高くなってから結婚、子育てをしようとする者。「高い教育費」は働く人のキャリアプランにまで影響を及ぼしている。

教育費が高いと特殊出生率は下がる

国にとっても、高すぎる日本の教育制度は失うものが多いのではないか。大学まで進めなかった人たちのなかにも、国を豊かにするような頭脳の持ち主がいたかもしれないし、日本人のノーベル賞受賞者の数も本当だったらもっと多かったかもしれない。子どもたちの未来へ向けた無限の可能性を、「お金がない」というものさしで切り捨ててしまうのは本当にもったいないことだと思う。

社会学創設者、コンドルセ

『全ての人に提供することのできる教育を全ての人に等しく与え、全ての国民に与えることが不可能な高等教育をも、誰にも拒んではならない。』

これはフランス革命の際に発足した立法議会の公教育委員会委員長を務めたコンドルセの言葉である。

もし日本がフランスのように教育の機会均等が充実していたら、今とは少し違った日本になっていたかもしれない。

 

貧困に苦しむ日本の子どもたち(2009年12月放送)


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