ホームジャパンなぜ日本は震災後も治安のいい国なのか?

なぜ日本は震災後も治安のいい国なのか?

悪夢のような大震災から4か月が経過した。

これまで、世界中の新聞やテレビが大々的な報道をしてきたが、日本国民のお互いを助け合う精神を褒め称える海外のメディアが多かった。これほどの被害に遭いながらも、日本人はパニックには陥らず、秩序と礼儀を保つ国民として礼賛された。

ヨーロッパや米国などの欧米諸国から見ると、“信じがたい”日本の現象だ。震災後、知り合いのフランス人たちにはこう言われることが多かった。

日本はスゴイね。フランスでもし同じことが起こったら、各地で暴動がおきたり、暴力行為に走る人が増えたり、日本よりももっと大変な被害になってたと思うよ。

日本好きの外国人が挙げる日本のいいところで一番多い回答にも「治安の良さ」があるが(日本のいいところランキング)、それではなぜ日本はこんなにも治安のいい国なのか?この質問への答えの一つに犯罪環境学の理論が成り立つのではないかと思う。

『ブロークン・ウィンドウ理論』という言葉をご存じだろうか。

これはアメリカの犯罪学者が考案した理論で、「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」という意味だ。

イギリスでの実験では、落書きされたポストとキレイなポストを放置して経過を比較すると、落書きされたポストの方が中の手紙を盗まれる可能性が高くなったそうだ。

ガラスの割れた車を放置しておくと、その街は荒廃し、犯罪が増える。つまり、『よからぬこと』を見て見ぬふりしていると、やがてそれが大きなトラブルを招くという意味だ。 フランスではよく目にする落書き

これは本当に良く当たっていると思う。

私はフランスに来て、毎年最低2回の引っ越しと部屋探しをして各地を転々としてきたが、『ここは危ないから気をつけて』と主人に注意される界隈は決まって壁への落書きやストリートのごみが多く、街全体が灰色に荒んだ印象だった。反対に、道路にお花がきれいに飾ってあったり、小さな子どもが多く街全体が小奇麗、かつ活気のある所では窃盗や暴力事件などの話をあまり耳にしなかった。

一般に、日本は欧米諸国と比べて街全体が美しい。先ほどの外国人が選ぶ日本のいいところランキングでも『街のキレイさ』は2位に挙げられており、建物の落書きも少なく、また吸い殻などのごみも少ない美しい国だ。

日本と同じく街のキレイさで有名な国といえば、シンガポール。クリーン&グリーンをスローガンにしているこの国では、煙草やゴミのポイ捨て、つば吐きにも厳しい罰金が科せられる。シンガポールは日本よりも治安の良い国だと評価されることも多く、やはり街のキレイさと犯罪件数には関連性があるのだ。

日本よりも落書きの多いフランスを転々とし、暮らしてみて感じるのは、『日本人は公共の場をきれいに使おう』という意識が高いということ。これは親や学校教育によって、「他人に迷惑をかけてはならない」と、幼い時からきちんとしつけられている日本人が多いからだと思う。『常に他人を思いやることができる』というのが日本人の特徴であり、国民性ではないか。今回の震災によって、多くのモノが壊れたり失ったりしたが、日本人に『他人を思いやる精神』が根付いているおかげで、欧米のメディアが予測するような混乱が日本では起らずに済んだのだと思う。

その点、フランス人やアメリカ人などは「他人の迷惑」よりも「自分の都合」を優先する節があり、それがよからぬことも『ま、いっか』で済ますようになるのだ。

ごみのポイ捨てや落書きなど、一見ちょっとしたことのように思えても、「よからぬこと」を『ま、いっか』で流す国とそうでない国とではのちのち大きな違いがでてくる。

それが大震災後も治安の揺るがない国ニッポンの秘密であり、日本人が何よりも誇りにすべき点だと私は思う。

写真:William Anderson

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