フランスは階級社会だというが、フランス人たちは本当に何でも階級をつけたがる。
ミシュランガイドにしてもそうだし、ホテルにしても星の数でランクを決める。お金持ちのするスポーツはこれ、貧乏人の暮らす地域はここ、ミドルクラスのバカンスの行先はここ…などなど。一から十まで全部決まっているようにも感じる。
日本では、キャバクラのお姉さんや女子大学生が必死でためた貯金をはたいてブランドものを買ったりするが、フランスではそういった現象は見られない。金持ちは金持ちらしく、普通の人は普通の人らしく、貧乏人は貧乏人らしく、らしくあるための見えない境界線が必ずそこにある。
そんなフランス階級社会の一番わかりやすい例が、スーパーの品物である。あなたがもしフランスに行く予定があるなら、日本のイオンのようなスーパー(オウシャンやカルフール、カジノなど)にぜひ行ってみてほしい。品物が見事に階級分けされてあり、そのランクが一目両全である。
フランススーパーで一番安いものはmarque premier prixと言い、下の写真のような商品だ。これはペットボトルのアイスティーだが、写真を見てもらえばわかるようにパッケージがとてもシンプルである。スーパーの最安値商品は必ず決まってこれらであり、簡素なパッケージのお陰でたくさんある商品のなかからの見分けがすぐにつく。一番安い商品なので、味が薄かったり水っぽかったりで、それなりである。
そして、その次に高い商品はmarque de distributeursと呼ばれるもので、小売店のスーパーが独自に開発・販売している商品である。下の写真はカジノのディストリビューター商品だ。ディストリビューター商品の特徴は当たりとハズレが多いことである。
そして、フランススーパーで一番高いアイスティーはこちら。ネスレのネスティーやリプトンなどのメーカーが出す商品だ。メーカーの商品だから、広告宣伝も多い。レストランで出されるアイスティーは(そのレストランがインチキしていない限り)ブランド商品のモノである。メーカーの商品は(モノによっても異なるが)一番安いプルミエプリの商品の価格の2~4倍ぐらい。高いぶん、品質は保証されている。
このように、フランスは食品にまでもランクがある。日本のスーパーは、特売日をもうけてどんな商品でもとにかく安く売ることに必死になっているが、フランスではあまりそういったことはなく、全ての商品がそれなりの価格で売られている。だから、日本では割と簡単に安くて品質もいい商品に出会えるが、フランスではなかなか難しい。安いものは安っぽく、高いものは高く。中間層はハズレの可能性がある。それがフランスだ。
全く何から何まで格付けされているようで不愉快に感じることもあるが、消費者からしてみるととてもわかりやすいシステムである。自分の所得に見合った商品を手に入れればいいのだ。だからフランス人にスーパー商品の格付けについて質問してみると、こんな答えが返ってくるのだ。
「むしろなぜ日本の商品はランク分けされていないのか?そっちの方がよっぽど不自然だ。」と。
こういう人もいる。
「日本はフランスと違って、みんながみんなミドル~富裕層なんじゃない?だから最安値ランクをもうける必要がないんだよ。」
なるほど確かにフランスで暮らしている人たちは、日本に比べて所得格差が激しい。
フランススーパーの商品陳列棚は、そんなフランスの階級社会の縮図である。
写真:Dean Hochman