飲食店に入ってどこに座るか?
こんなところにも国民性の違いというのは現れる。日本人もフランス人も飲食店に行く目的は「おいしいものが食べたい」だったり、「恋人や友人、家族と素敵な時間が過ごしたい」だったりして、似たようなものである。しかし、その目的にたどり着くための方法が異なるのだ。
日本のタウン情報誌の飲食店紹介を見ていて、これはとても日本的だと思うフレーズは『個室アリ』である。フランスではあまり見かけない「個室付きレストラン」だが、なぜ日本人は個室を好むのか?一番多い回答は、「他のお客さんに気を遣うことなく、仲間内で飲める」だったり、「おしゃべりが目的の女子会だから周囲の人に聞かれたくない」だったりする。つまり裏を返せば、個室じゃないと自分たちの仲間とは関係のない人に気を遣ってしまう、ということ。この辺りが、他人からの視線に常に気を配る日本人的な部分だと思う。
またこれはあくまで個人的な印象だが、日本人は欧米人に比べ、外と内の境界線をはっきりさせがる。関係のある人とない人をはっきりと区別したがるのだ。例えば、フランス人たちのするパーティーでは、特別に自分たちだけを招待された場合を除いて、みんなが自分の友達や恋人を連れてくる。パーティーのホストと参加者が初対面のパーティーが日本に比べて多い。一種の合コンのようなものだが、フェイスブックのような「友達の友達」という安心のできる社交場を作り出すのがフランス流パーティーだ。
それに比べて、日本の場合はあまり関係のない人を連れてこない。大学のサークルの飲み会は基本的にはサークルメンバーが参加者だし、会社での飲み会は仕事仲間が参加者。最近はやりの“女子会”も、基本的には自分たちの仲がいい友達だけを誘い、友達の友達を引き合わせるようなことはあまりしない。
まさに飲食店の個室は、この日本人の「外と内」をはっきりさせたいという需要に応えたものであるように思う。“仲間うち”や“コミュニティーの和”を大切にする日本人の特徴をうまくつかんでいる。
日本人とは違い、フランス人は何よりも“テラス席”に座りたがる。フランスの南に行けばいくほどこの傾向は顕著に表れ、なかには店内の席はなく、テラスだけ!という飲食店も存在する。そこでフランス人に「なぜテラスがいいのか?」と尋ねると、大抵が「太陽に当たりたい」だったり、「外の方が気持ちがいい」と答える。日本人からすると、なんだか落ち着かない外の席=テラスだが、フランス人にとってはよりリラックスできる席という認識のようだ。フランスでは飲食店内での喫煙が禁止されているのも、テラスの席が人気となる理由の1つであろう。
しかしフランス人がテラスを好む理由は“バカンス”からくるのではないかと私は思う。フランス人といえば1年中バカンスのことばかり考えていて、今年の夏が終わり、バカンスを満喫した後すぐに「来年のバカンスはどこに行くか?」で頭を悩ませるような人たちである。フランス人の1年の楽しみであるバカンスは、日常からの解放と素敵な時間の象徴。そんなバカンスでフランス人がすることといえば、色んな観光地を巡る日本のパックツアーのようなものではなく、とにかくだらけることだ。夏の海辺で日光浴をしたり、キャンプ場で夕日を浴びながら本を読んだり、景色のキレイな場所でピクニックしたり…。時間を気にせずゆっくりとできるというのが、フランス人の理想的なバカンスの過ごし方であり、最高の贅沢である。
だから開放的な空間=外で太陽にあたり、風にあたって自然を感じるテラス席の方がフランス人にとっては魅力的に映るのである。室内の狭い空間に入れられるより、より広い空間に行きたい、日常から解放されたような感覚を味わいたい、風に当たって休憩したい、そんなフランス人の願いを叶えるのがテラス席なのだ。
ちょっと飲食店を覗くだけで、その国に生きる人の考え方や価値観が垣間見れるのが面白い。フランス人とレストランに行くなら、テラス席を用意してみよう。
※ちなみに、日本在住の外国人(フランス人&アメリカ人)に「日本の居酒屋の個室をどう思うか?」と尋ねると大抵が「好きだ」と答える。海外でも、“個室”飲食店は流行るかもしれない。
日のあたりの良さって大事だと思う。
日光に当たると人って健康になり体内時計も整いますからね。
不食の人はソーラーパワーで生きてるそうだから
日当たり重視だそうだ。