フランスといえば、革命から連想されるように「自由」と「平等」という言葉が頭に浮かぶ人も少なくないだろう。しかし、実際のフランスはそんなに生易しいものではない。
日本でも最近は中産階級の崩壊が叫ばれるようになったが、フランスの明確すぎる格差社会と比べるとさほど深刻ではないのかもしれない。何しろフランスでは日常私たちがただ生活しているだけで、そこに住む人々の所得格差を目の当たりにし、何とも言えない気持ちになることが少なくないのだ。
そこで今回は、そんなフランスの格差社会を肌で感じる瞬間を5つご紹介します。日本の警察のキャリアとノンキャリアの違いのようなフランスの社会構造が垣間見れる瞬間はどんな時でしょうか。
1.セットしたてのブロンドヘアに気品があり、見るからにあたたかそうで高級そうな毛皮のコートを着たマダムと、擦り切れたビニールのダウンジャケットの懐に盗んだものを隠して走るオジサンがすれ違った瞬間
この寒い時期にはコートのなかに盗んだものを隠している人を見かけることがあります。反対に、リッチな人は見た目もリッチ。フランスのお金持ちには、自分で髪の毛を洗ったことがなく、いつも美容院で洗髪とセットをしてもらっている人もいるそうです。
2.シャンゼリゼ通りにあるルイ・ヴィトン本店の前で、LVマークの入った紙袋をいくつも抱え記念撮影をしているアジア人観光客グループの300メートル先に、地べたに座って紙コップを持ち、通行人にお金を恵んでくださいと頼むホームレスがいる
観光客の多いシャンゼリゼ通りにあるルイ・ヴィトンの前はいつも長蛇の列ができています。そこに並んでいる観光客の大半は、日本人や中国人などのアジア人。高いブランド物を買いご満悦な表情で店の前で写真を撮る人をよく見かけます。とても華やかなシャンゼリゼですが、必ずと言っていいほど物乞いのホームレスに出くわします。花の都パリを期待していた旅行者のイメージが崩れ、ショックを受ける人も少なくありません。
3.「私たち家族から家を奪うな!」という垂れ幕をした空家に不法占拠するスコッターの近くに建設中の新しい家がある
家を買おうとする人もいれば、廃屋・廃ビルや他人の敷地や家屋に無断で侵入し、生活をする人たちがいるのがフランスです。他人の敷地をわざわざ不法占拠までして生活する必要がない日本ではあまり馴染みのない“スコッター(Le squat)”という言葉ですが、フランスからイギリスなどの国外に流れる失業者も多いそうです。また、長く寒い冬が続くパリでは路上で凍死してしまうホームレスが多いため、冬の寒い時期だけはスコッター行為が許可されています。家主からすると迷惑な話ですが、この時期の警察官は寒さに凍えるスコッター家族に立ち退きを命じることができません。ちなみに、フランスの厚生担当相がホームレスに「屋内にとどまるよう」アドバイスし、嘲笑の対象となっていましたが、このニュースにはスコッター行為の許可という背景があるわけです。
4.お金がない人は入れないフランスのエリートな学校“グランゼコール”出身でぽんぽん出世する人と、20年働き続けてどんなに頑張っても出世できない一般大学出身者
フランスでは大企業で課長以上の管理職になったり、官公庁に勤めたりしたかったら、グランゼコールを出ていなければなりません。高校の最後の年にあるバカロレアという統一試験を取得した人のうち、グランゼコールへ進むのは残りの5%弱だけであり、非常に“狭き門”ですが、「グランゼコールを出たか」「どのグランゼコールを出たのか」は、ほぼ一生を左右します。つまり、普通に大学を出ただけの人は一生頑張って働いても、グランゼコール出身者のような出世はできないということ。入社以前にすでに自分がどこまで出世できるのか決まっているのです。大学出身者はグランゼコール出身者に対して羨望と嫉妬の入り交じった感情を抱くのと同時に、「自分たちとは違う世界だ」というあきらめの感情を抱えている場合が多いと言います。
5.誕生日にプライベートジェットを買ってもらう子どもと、学校も行かず毎日朝から晩まで働き続ける子ども
フランスの金持ちの子どもは誕生日プレゼントも車やジェット機など信じられないような豪華なモノをもらうそうです。反対に、誕生日にも家族のために働き続ける子どももいます。昼間学校へも行かずマルシェでモノを売ったり、親に付き添って物乞いをしたり、ポエムを売り歩いたり。一日中、ひったくりやスリをしているジプシーの子どももいます。子どもの世界にも格差社会が明確に表れているのがフランスで、同じ国に住んでいても住む世界が全く違います。