フランス人はよくプライドの高い国民だと言われますが、フランスで暮らして7年目になる筆者も、フランス人はつくづく高慢で“面倒くさい奴ら”だと思うことがあります。好き嫌いがはっきりしているフランス人は、日本人にとっては当たりが強すぎる側面があり、これが原因でフランスを嫌いになってしまう日本人旅行者も少なくありません。
そこで今回はフランス人特有の“プライド”とは何なのかを探りつつ、フランス人の性格&気質で面倒臭いところを6つ紹介します。これからフランス旅行をされる方やフランス人と付き合いのある方などは是非参考にしてみてください。
挨拶なし=人格無視?
このブログでも再三書いていますが、フランス人は挨拶に厳しい国民です。例えば、お店やレストランでトイレの場所を聞く時も、「すみません。トイレはどこですか?」という聞き方をしてしまったらアウトです。フランスでは何をするにもまず、「こんにちは(ボンジュール)」と言って会話を始めるようにしましょう。
挨拶なしで店員に話しかけるのは、店員を格下に見ているという非常に失礼な態度です。お客様のほうが格上で当たり前だろうと思われるかもしれませんが、ここはフランス。店員であれ、客であれ、「人間」という意味では同等であるという考え方です。育ちのいいフランス人は小さな頃から挨拶を厳しくしつけられているので、例え相手がお客さんであっても非常にシビアです。
フランス文学世界一
フランス人に「フランスの好きなところをいくつか挙げてみて?」と聞いてみると、たいていの人がフランス文学やフランス言語を挙げます。それほど、フランス人はフランス語に誇りを持っているのです。実際にフランス人に「フランス語のどこがそんなに素晴らしいのか」と尋ねてみると、発音の響きや表現出来る幅の広さ、韻を踏んだときの音の美しさなどを熱心に説明してくれますが、正直言って、筆者にはあまり理解できません(!)。
「フランス語は世界で一番美しい言語だ」と思っている人が多いからこそ、外国人にもフランス語を話すことを要求するのではないかと思います。パリに来た日本人旅行者が英語で道を尋ねると、「フランスにいるのだからフランス語で話なさい」と英語で叱られたという話もあるほどです。実際に、片言であってもフランス語を話すのと英語で話すのではフランス人の対応も180度変わります。
フランス料理も世界一
フランス人を相手にフランス料理をけなそうものなら、猛烈に反論されるでしょう。これは日本人に日本製品(自動車や電機製品)の悪口を言うようなものです。フランス人はフランス料理にプライドを持っている人が多く、「フランスが世界の料理をリードしている」という感覚を持っています。フランス人は基本的に食への関心が高く、他の国の料理でもいい面は褒めますが、それでもやはりフランス料理が世界一だと思っている節があります。
筆者もこれまで何度もフランス人に「フランスのチーズ(ワイン、肉…etc.)は美味しいでしょう?」と聞かれてきました。「美味しいよ!」と答えると、「やっぱりそうでしょう!」と満面の笑みで喜びます。フランス人をいい気分にさせたければ、まずはフランス料理を褒めること!間違っても「フランス料理は日本人の口には合わない」なんて言わないように…。
気分を顔に出す
パリに来た日本人がいわゆる「パリ症候群」になってしまうのは、気分を思いっきり顔に出すフランス人の気質によるところが大きいのではないかと思います。フランス人は日本人よりも、好き嫌いをそのまま表現し、相手が誰であれ不快感を隠そうとはしません。
態度が冷たいフランス人に会うと、日本人旅行者は自分が何か悪いことをしたのではないか?と不安に思いますが、話を聞いてみると、「前に来たお客さんが嫌な客だった」とか、「忙しくてお昼ご飯の休憩に入れない」とかだったりします。関係のない人にも無愛想になる点が日本とフランスの文化の違いであり、フランス人の面倒くさいところ。フランスで冷たい態度をとられても、あまり気にしないようにしましょう。
主張は譲らない
フランス人は議論好き。仲の良い友人や家族と答えのないどうでもいい議論を延々と楽しそうにします。日本のことわざには「言わぬが花」というものがありますが、フランス人は言うことこそが花です。議論の場で、沈黙でいる人は「そのトピックに関して特に意見のない人」だと思われます。
そして、日本人なら議論の末に「そうだね」と言って何となく話をまとめようとしますが、頑固者のフランス人は最後まで自分の意見を突き通します。フランス人の議論では、話が平行線のまま、何となく他に話題が移って終わることが多いですが、当のフランス人たちは答えの出ない会話でご満悦なようです。
格好つけたい
フランス人は格好つけたがる国民だなと筆者は思います。外国人に対してフランス語を話すように求めるのも、自分が下手な英語を話して馬鹿っぽくなりたくないという心理が働いているのではないでしょうか。
フランス人は日本人よりも「馬鹿っぽく見られること」に抵抗感が強いように思います。ダンスやカラオケ、スポーツなどでも、日本人は初めてのことでもわりとすぐにチャレンジしますが、フランス人は難しそうなものや不得意なものには最初からやろうとしません。モノマネや一発ギャグをして笑いをとる人も、日本人のほうが多いです。
フランス人は「お高くとまっている」とか、「保守的だ」と言われますが、その背景にはフランス人の「馬鹿だと思われたくない恐れ」のようなものを感じます。
まとめ
このように面倒臭さ満載のフランス人ですが、筆者は日本人もフランス人に負けないくらい面倒臭い国民だと思っています。「面倒臭さ」というのは、裏を返せば「人間臭さ」だったり、その人が持っているコンプレックスや不安を表しているものだったりします。
だから、面倒臭いフランス人も日本人もあっぱれです。
筆者にとってフランス人は、憎まれ口が減らないのに、なぜか嫌いになれない愛すべき女房のような存在です。
※これらはあくまで筆者の主観であり、全てのフランス人に当てはまるわけではありません。
写真:Stefan Lins