海外メディアで取り上げられる「日本人」を検索してみると、頻出してくる記事がある。その一つが、「日本人のセックスレス」だ。ざっと調べてみても、日本メディアが取り上げる頻度とさほど変わらないくらい、海外でも話題になっているようだ。それだけ、セックスしない日本人というのは、海外の人からすると奇異に映るらしい。
英語で書かれたネット記事は、1日で多言語に翻訳される。筆者の義姉にも、「日本人はセックスしないっていう記事(フランス語)を読んだんだけど、本当?」と聞かれ、この話題が欧米人の注意を引くものなのだと改めて気づかされた。
日本ではタブーとされがちな「性の話題」だが、今後の日本の文化的・経済的な展望を考えると、このトピックからは逃れられないのではないだろうか。かつては、若者を消費に駆り立てるものが「恋愛」だったが、最近はセックスはおろか、恋愛自体を面倒だと感じる若者が増えている。この現象が続けば、日本人のセックスレスが経済低迷の一因となるのは明白である。
そこで今回は、海外では日本のセックスレスをどのように報じているのかを探ってみようと思う。日本人の感覚からは少しずれているかもしれないが、海外から見た日本を理解する目的なら、面白い記事だと思う。
英紙『the guardian』で紹介されていた、日本人がセックスしない理由は以下の通りだ。
5 Things To Know About Why The Japanese (Supposedly) Aren’t Having Sex
恋愛する意味あるの?
日本の若者は、恋愛自体に価値を見いだせないでいる。2011年に発生した東日本大震災、福島原発事故などは、若者に「恋愛は無益」という感情を植え付ける出来事だった。
日本は土地柄、昔から地震や台風など、自然災害が多い国だ。東日本大震災をきっかけに、「またいつ大地震が来るかわからない」という恐怖心を抱いた日本人は少なくない。2011年以降、「いつか大地震で死ぬかもしれないのに、コスパの悪い恋愛をする意味って何なの?」と考える若者が増えたのではないか。
仕事への野心
日本で働きながら子育てをするというのは、簡単なことではない。日本の若者は仕事熱心で、恋愛に時間とエネルギーを使いたくないと考える人も多い。
日本では、女性は結婚して最初の子どもが生まれたら、仕事を辞めるのが一般的とされている。このため、仕事を現役で続けたいと考える女性は出産の時期が遅れてしまうのだ。仕事を優先させる人生を選択する場合、結婚や恋愛は邪魔で、面倒なものでしかない。
また、結婚や恋愛目的以外でのセックス(セックスフレンド)は、出世に響いてしまうケースが多い。日本の若者にしてみれば、セックスはリスクであり、価値があるものではないのだ。
結婚に良いイメージがない
日本の昔ながらの家族のイメージと言えば、男が稼ぎ手で、女が家にいて子どもたちの面倒を見るというものだ。日本の職場環境はあまり良いとは言えず、稼ぎ頭の夫は仕事やつきあいの飲み会などで家にいない時間が長い。これは、女性側からすると、結婚=孤独で寂しい生活のスタートなのである。
男性のほうも、金銭面や自由な時間が減るなど、「結婚は人生の墓場」だと感じている独身者が多い。
コスパが悪い
日本の生活費は高い。バブル経済期のように、国民の生活に余裕がある時代ではないので、恋愛中のデートやプレゼントなどに投資する金銭的余裕がないと感じている若者は少なくない。
さらに日本では、恋愛して結婚したとしても、子どもの教育費にとてもお金がかかる。子どもに良い教育を与えたいと思うなら、夫婦共働きでないと難しい。しかし、日本の長い労働時間の職場環境を考慮すると、子持ちの母親はだんだん職場に居場所がなくなっていく。働き頭だと言われる男性側も、今のご時世では働けど働けど、収入は上がらない。現代の日本の若者は、「男は出世欲があるものだ」という昔の考え方を跳ね除ける風潮にあり、それが恋愛&家庭をもつこと全体へのイメージを下げていると言える。
テクノロジーの発展
現代は、性的欲求や人恋しさをテクノロジーで満足させることができる時代だ。自分の友達に実際に会うよりも、SNSのなかで会話することのほうが多いと答える若者は少なくない。恋愛を遠ざける“テクノロジー”も多数登場した。バーチャル恋愛ゲームやアイドルとつながれるソーシャルサービスなど、リアルな男女関係をもたずとも満たされる娯楽が揃ってきた。
こんなに便利なテクノロジーが揃っている現代で、わざわざ面倒な恋愛をする必要性がなくなってきていると考える若者が多い。スマホ一つで人と繋がることができ、同時に人間関係の面倒な部分を避けることができるので、わざわざ感情を伴う生身の人間と付き合おうと思う人が減ってしまったのではないだろうか。
まとめ 生身の人間は何かと面倒くさい
これが、海外から見た「日本人がセックスしない理由」のようである。確かに、人間関係は面倒なことのほうが多いが、恋愛しない人の考え方はあまりに無機質で、冷たい印象を受けるのは筆者だけだろうか。
しかし、特筆すべきは、海外メディアでは「セックスしない日本人」を奇異としながらも、否定はしていないという点である。女性向け情報サイトの『The Frisky』では、日本の若者の傾向をこのように評価している。
正直に言うと、日本の若者に関するこのニュースは、驚いて困惑させるようなものではなく、私を自由にしてくれた。私はアメリカ人だけど、結婚して平凡な幸せを手に入れつつ、キャリアアップをしろという社会のプレッシャーを感じているから。社会からの期待を無視して、自分のしたいことや自立を追いかける若い人が日本にはたくさんいるのだと知って、勇気づけられた。セックスしない日本の若者は、自分と同じような考え方をする味方が世界中にいると知ったら、非常に喜ぶと思う。
こういう捉え方をする海外メディアもある。「日本の若者は変わっている」と伝えておきながら、恋愛しないという選択は、案外世界的なトレンドなのかもしれない。
あなたは、日本人がセックスしない理由は何だと思いますか?