フランスでの家探しは、結構大変です。世帯収入の3分の一以下のアパートしか借りれなかったり、パリ自体が圧倒的な住居不足だったりで、なかなか思うような物件に巡り合えないです。
筆者はこれまで、グルノーブル・ニース・パリのそれぞれの都市で引っ越しを1-2回繰り返してきましたが、やはりパリでの引っ越しは他のフランスの地方都市に比べて難しいです。パリのアパート探しにはコツがいると思います。
そこで今回は、これまでのフランス国内引っ越し経験を通して知った「パリのアパート探しでこれを知っておけば絶対に得する情報」を6つ紹介します。これからパリでの引っ越しを考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
※ ここでは、日系不動産屋については書かれていません。日本語でアパート探しをする場合は、事情が異なる場合があります。
アパート探しは4~6月が狙い目
フランスでのアパート探しは4~6月が最もオファーが多く、狙い目です。これは、夏のバカンスを利用して引っ越しをしようという子育て世代が多いことが理由だと、不動産屋に聞きました。学生用のストゥディオ(ワンルーム)を探す場合も同じです。
パリ市内やその近郊の場合、よほど変な物件でない限り、不動産屋が借主が見つからなくて困るということはありません。1年中いつでも、アパートを探している人=需要があるわけです。
つまり、需要は1年を通して一定なのに対し、供給は4~6月が最も多いということ。この時期にアパート探しをすれば、いい物件に出会える確率は高くなります。
学生は保証人を立てれば、家賃上限なし
フランスの法律では賃貸契約で、賃金取得者は保証人を1人、学生は2人たてなければならない、となっています。しかし、それぞれのアパートの大家さんが独自に保証人(保険会社)を設けるので、実質的には賃金取得者は保証人を立てる必要がありません(保証人をたてることができません)。学生の場合は、保証人が2人必要なので、大家さんの決めた保険会社以外に、借主の知り合いや家族のなかからフランス在住の人を1人保証人に選ばなければなりません。
また、賃金取得者は給料明細書を提出し、世帯所得の三分の一以下の家賃の物件しか借りられないことになっています。この上限は何としてでも絶対であり、特に勤務先会社の契約がCDD(期限付雇用契約)の場合は審査が下りないことが多々あります。
こんな時の裏ワザが、学生証を提出すること。世帯主のなかに期限内の学生証を持っている人がいたら、その人名義で家を借りるようにすると(別に保証人を立てるので)所得による家賃制限がなくなります。これを知っているのと知らないのとでは大違いです!
特に学生を卒業したてで、就職先が決まったばかりの人がアパートを探すときには「学生証の期限内」で探すことをおすすめします。借りられる物件の範囲が全然変わります。
転職予定&妊娠は言わない方がベター
賃金所得者がアパートを借りる場合の家賃制限では、「これから先も安定して家賃を払い続けることができるか?」を不動産屋にチェックされています。不動産屋は収入に余裕があり、安定している人に貸したいわけです。つまり、今後収入が不安定になるかもしれない要素は、言わないほうが良いのです。
収入が不安定になりえる要素としては、転職や起業、妊娠など。働いている女性で妊娠を期に引っ越しを考えている方は、お腹が目立たないうちは隠しておいたほうが良いです。育児休暇の後に本当に仕事を続けるのかを疑われてしまうからです。妊婦さんはお腹が目立たないうちにアパート探しを始めましょう。
内見でチェックしたい3項目
アパート内見の際には、立地条件や日当たり、周辺情報以外に、”フランス&パリならでは”のチェックしたい項目が3つあります。それは、
- 通気口はあるか、どんな状態か
- 窓は2重窓か
- ショファージ セントラル or ショファージ インディビデュエルか
の3点です。1の通気口は、パリの湿気対策のため。乾燥していると言われるヨーロッパですが、パリは意外にも湿気がとても高く、建物も古いので冬にはカビができやすいです。
筆者は以前住んだアパートには窓の上に通気口がなく、冬は寒いので閉め切っていたらタンスの裏にごっそりとカビができていて、ショックで卒倒しそうになったことがあります。それ以降はアパート探しでは必ず窓の上の通気口をチェックし、空気の入れ替えができるようになっているかを確認しています。
2の二重窓は、冬の寒さ対策でもありますが、どちらかというと夏の暑さ対策のためです。パリのアパートはほとんどが暖房は完備されていますが、冷房はついていません。パリの夏といっても、本当に暑いのは1カ月程度ですが、猛暑のときに扇風機しかないと言うのは割と辛いです。2重窓のアパートなら、外気を遮断できるので夏でも冷房なしで涼しく快適に過ごせます。冬の暖房も室内温度が外に漏れにくいので、電気代の節約にもなっていいです。
3のショファージセントラルとは、セントラルヒーティング(中央暖房)のことです。白いコイル状の暖房器具で、建物の各部屋にこの器具があり、専用の配管を通って建物全体にお湯が循環しているもの。これはさほど場所をとらないのにしっかりと部屋を暖めてくれ、朝でも夜中でも24時間あったかいという優れものです。光熱費も管理費に込みなので、中央暖房ではない同じようなアパートがあれば、絶対にセントラルヒーティング物件のほうがお得です。
セントラルヒーティングの良さを一度知ってしまうと、もう個別暖房には戻れません…。冬でも洗濯物が室内干しでよく乾く!一年中乾燥機なしでOKです。
すぐに連絡&即決する
パリはいいなーと思う物件があれば、その日のうちに電話してアポを取りましょう。良い物件は競争率が高いので、2-3日考えている暇はありません。内見していい!と思った物件が見つかれば、即契約です。迷っているうちに、他の人が契約してしまいます。呑気に構えていて、失敗する人が案外多いと不動産屋に聞きました。
パリの人気地区はそもそもの物件自体が少ないので、本格的にアパート探しを始めたらぼ~としている暇はありません。メールで新しい物件の通知を受け取るように設定したり、物件がなくても不動産屋を回っていい物件があればすぐに連絡してもらうように頼みましょう。また、ほとんどの人が仕事が休みの土曜日に内見の予約を入れるので、平日に先手を打ってアパートの下見ができたらさらに優位でしょう。
同じ不動産屋に頼むべし
もし、これから何十年も住みたいと思うような気に入った地区を見つけたら、その地域で最も物件数の多い不動産屋に行きましょう。できたらこの不動産屋が提供するアパートを借りるのがベストです。
というのも、きちんと毎月家賃を払っていたという実績を不動産屋が承認している場合、大家さんに話を通しやすくなるそうです。賃金所得者の家賃制限に関しても、不動産屋の担当者が「この借主はうちの物件で○年住み、家賃の滞納はない」と言えば、大家さんの許可が下りやすいとのこと。
さらに、これはうちがひいきにしている不動産屋から聞いたことですが、家賃が比較的安く条件もいい良い物件=借主がすぐに見つかるであろう物件はインターネット上には載せないらしいです。長く付き合っている顧客リストのなかから電話をして、不動産屋のほうから提案をするようにしています。というのも、明らかに良い物件というのはネット上に載せたらすぐに電話が殺到し、それにいちいち対応する手間を考えると、あらかじめいる顧客に電話を入れるほうが早くて済むからだそうです。
ひいきの不動産屋が見つかったら、ちょくちょく出向いてみて、「本気で部屋を探してるんだ」アピールをしましょう。その時に、ちょっとしたお土産なんかを持っていくのも一つの手です。フランスでは面倒臭いですが、こういった一対一の人間臭いつきあいの積み重ねで成り立っています。
パリでアパートを借りるならその先のことも考えて、まずはひいきにしたい不動産屋&担当者選びから始めてみましょう。