「学校」にまつわるニュースといえば、いじめや自殺、体罰など、ネガティブな部分ばかりピックアップされている。以前書いた記事『外国人から見た日本の学校教育制度、日本教育の特徴と問題点』でも、外国人から見た手厳しい意見が多かったが、こういう話ばかりを聞くと、日本の学校は欧米より劣っているようなイメージを持ってしまう人もいるだろう。
しかし、実際には日本の学校は欧米と比べて、かなり優秀なのではないかと筆者は思う。どちらにも良い点・悪い点はあるのだが、決して日本の学校・教育システムが他の欧米先進国に劣るということはない。
そこで今回は、ここは欧米よりも日本の学校のほうが優れているのではないか?という点にスポットを当て、日本の学校の素晴らしいところを10ピックアップしてみた。嫌なニュースばかりを耳にする昨今、ここで日本の学校の素晴らしさを再発見してみよう!
学校給食が素晴らしい
まず、日本の学校の素晴らしいところは学校給食制度がある点だ。学校に行けば、貧しい家の子供もバランスのとれた栄養が取れるというのはかなり有り難い制度である。筆者の場合、小学校の給食を通して「栄養のバランス」を学んだ記憶が今でもあり、子どもの「食育」という面でも大きな役割を果たしていたように思う。
一方、欧米では基本的に学校給食はなく、それぞれがカフェテリアで買って食べるか、昼食時には一旦家に帰るという国もある。児童生徒に食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けさせるための指導は全くないといってもいい。
ちなみに、学校給食といえば「給食費未納問題」が深刻化しているとされているが、文部科学省では児童生徒ごとの未納が生じる主な原因について、「保護者としての責任感や規範意識」が原因とみている学校が約60%を占めており、学校給食費を負担することに経済的な問題がないと思われるにもかかわらず、その義務を果たしていない保護者が少なくない状況にあるとしている。
制服が素晴らしい
欧米でも、イギリスの私立学校なんかでは制服があるところもあるが、幼稚園から高校まで制服がある国はほとんどない。学校指定のみんな同じ制服があることの利点はとても多いように思う。
まず、親の出費が抑えられる。そして、例えばフランスでは、制服がないために子どもの持ち物や服を間違えて他の子供が持って帰り(盗まれることもある)、そのまま帰ってこないことが頻繁にあるが、名前が刺繍されてある制服ならこういったことも少ないのではないかと思う。
また「みんな同じ」制服なので、それぞれの家庭の経済事情を隠すことができる点もいい。欧米人でも「学校制服があったほうがいい」とする意見が案外多いのはこのためである。
掃除の時間・当番制度が素晴らしい
日本では掃除の時間があり、日直や給食当番など、学校運営に係るような雑務を子どもにあえてさせている。これに対しては反対する欧米人も多いが、筆者はむしろ「社会で、チームで働くことの意味」を知るための良い教育方法だと思う。
掃除の時間に関して言えば、日本に来た欧米人は「日本の道端にはゴミ箱が少ないのにとても綺麗」だと感激するが、これは小さい時からの学校教育のおかげではないだろうか。欧米人は当たり前のように公共の場にポイ捨てする人がいるが、彼らにとって「家以外の場所を掃除するのは清掃員」であり、他人の仕事だという意識が強い。
それに比べて、日本人一人一人が公共の場を「自分も使っている場」とし、綺麗に使おうと意識できるのも、小さいころからの「掃除の時間」という教育の賜物である。
5教科以外の科目が充実している
日本は欧米に比べ、音楽、技術家庭、保健体育、美術の実技4教科の内容がとても充実している。家庭科の授業で調理実習をさせるような国は、欧米ではあまりないのではないだろうか。体育ではマット運動や野球、プールなど、色んな種目をさせる。音楽でも、カスタネットやトライアングル、リコーダー以外の楽器に挑戦できるというのも欧米では珍しい。
日本はヨーロッパに比べて授業時間が長いとされるが、その分このように充実した内容の実技科目が学べるのなら、少々授業が長くても良いと筆者は思う。
学校施設・教材が充実している
実技科目を充実させるのに必要なのが、学校施設と教材である。日本の学校には技術室、家庭科室、音楽室などがあるが、もちろんこれらは欧米にはない。筆者が小学校の頃(公立校)は、音楽室にグランドピアノとシンバル、木琴、鉄筋、エレクトーン、ドラム、ウッドブロック、マラカスなどがあったが、これを欧米人に話すとたいてい驚かれる。
各テーブルにガス調理器のついた家庭科室や、パソコン室には生徒一人一台にパソコンが行き渡るようになっていて、サブ画面まであり、教師は席を離れずに生徒に指導できるようになっているという話をすると、欧米人に「君はどれだけお金持ちの学校に通っていたんだい?」と聞かれるが、どれも公立校の話だ。
こんな充実した学校施設・教材が公立校で揃っている国というのは、日本以外にはなかなか珍しいのではないだろうか。
どの生徒も平等に教育
日本では相当の問題がない限り、義務教育中に落第することはない。どんなに成績が悪くても、どの子も自動的に進級できる代わりに、飛び級がほとんどなく、高度な学力を得るのに年齢を待たないといけないという面もある。日本の学校教育は、どんな成績の生徒であっても平等に扱うことを徹底している。
これに関しては賛否両論あり、欧米人は「成績が追い付いていないのに進級させるのはかわいそうだ」と考えるそうだが、横並びで管理することを良しとする日本と、個人のレベルに合わせた成果主義かつ個人主義の欧米の文化の違いともいえる。
子どもだけで登下校
日本の学校生活のなかで、欧米人が最も驚くのはこれだろう。日本では小学校にあがったら、どの子も子どもだけで学校に通うようになる。欧米では12歳位まで親が送り迎えをするのが一般的なので、幼稚園児くらいの小さな子供が、子どもたちだけで歩いている様子を見て、とてもショックを受けるようだ。欧米は共働き夫婦が多いため、子どもの送り迎えをしなくて済むというのは親にしてみると、とても有り難いのであろう。
子どもだけで登下校させられる理由としては、日本は治安が良く、子どもだけで登下校させても誘拐されることがないからだとされている。しかし近年は、小さな子供を狙った誘拐事件やいたずらなどが報道されることも多く、今後はこの慣習も変わってしまうのかもしれない。
学校行事が多い
日本の学校は欧米に比べて、学校行事が非常に多い。欧米でも発表会や遠足くらいの行事はあるが、それでも学校行事は非常に少ない。日本は運動会や文化祭、合唱会、もちつき大会、お楽しみ会など、様々な行事があるが、これほど学校行事が多い国も珍しいように思う。
このような日本の学校行事は最近になって、世界で注目を集めているようだ。JICA(国際協力機構)では、20カ国以上の国から運動会を開く手助けをして欲しいという要請があったという。日本の政府系の団体やスポーツ団体が運動会の開催を支援しているそうだ。今後、日本の運動会が世界に広がるかもしれない。
部活動が素晴らしい
日本では70%以上の中学生と50%以上の高校生が運動部に入っており、半分以上の先生が部活動の顧問をしている。海外では学校ごとの部活動はほとんどなく、地域ごとのクラブチームが主流だ。
教師の過労の原因の一つだとされる、部活動。ネガティブなものだとして批判されることも多いが、学校ごとの部活動が用意されていることの利点は大きい。
先輩後輩といった異年齢間の交流ができるし、部活動の目標達成のために自分のやりたいことを我慢する自律心も養える。社会性が育成されるし、勉強以外に自分の可能性を試せる場を確保するという意味でも部活動はあったほうがいいのではないだろうか。
先生が丁寧で素晴らしい
なんだかんだ言って、日本の学校教師はしっかりと生徒を見て管理し、丁寧だと思う。もちろん、いい先生&悪い先生はどこの国にもいて、教師全ての一括りで語ることはできないが、それでも日本の先生たちのほうが「担任であることの責任」をきちんと担っているようである。
欧米はやはり教育現場であれ、どこまでいっても個人主義だ。日本では不登校の生徒にも通学を促す処置をしているが、欧米なら来ない人は知らないといった感じだ。学校を休ませる場合にも、わざわざ欠席理由を学校に知らせる義務はなく、学校に行く行かないは各家庭の責任である。
学校から一歩外に出てしまえば、それは各家庭の親の責任となるため、例えば生徒が放課後に何か問題を起こした場合でも、学校に連絡が入ることはまずない。学校が責任を負うのは「子どもが学校にいる間」だけで、それ以外のことは学校は完全にノータッチであり、責任の所在はシビアにはっきりと区別されている。
欧米の学校が授業や学習、子どもが学校にいる間の安全を守るものであるのに対し、日本は「学習面以外でも子どもを育てる場・集団」という考え方であるように感じる。
欧米の学校事情に比べて、日本で起きた子供のニュースなどを見ていると、何でも学校のせいにしすぎているという気がする。
おわりに
以上が筆者が思う、日本の学校が欧米より優れている10の理由である。ここにあげた項目には、見る視点によっては「これはむしろマイナス」というものも含まれているかもしれない。
しかし、総じてやはり日本の学校教育は優れているのではないかと筆者は思う。
あなたは欧米に比べて、日本の教育をどう思いますか。どんな点が優れていると思いますか。コメント欄で教えてください。