ホームつきあいカップルなぜ日本の妻はいつも不機嫌なのか?共働き夫婦先進国フランスとの意外な共通点

なぜ日本の妻はいつも不機嫌なのか?共働き夫婦先進国フランスとの意外な共通点

先日、NHKクローズアップ現代+の『妻が夫にキレるわけ ~“2800人の声”が語る現代夫婦考~』という回を観たのだが、これが非常に面白かった。

なんでも、昨年発表された国の調査によると、日本の離婚件数が5年ぶりに増加したらしい。なかでも急増しているのが『妻から精神的な虐待を受けた』と夫のほうから離婚を申し立てるケースだ。

今、日本の夫婦に何が起きているのか。なぜ、日本の妻はいつも不機嫌なのか?今回は、キレる妻が急増する日本人夫婦と、共働きが当たり前となって久しいフランス夫婦の実態と比べてみて、を探ってみようと思う。

 

現代の日本人夫婦が離婚する理由

なぜ日本の妻は不機嫌なのか?女性就業率85%のフランス夫婦との違い

上のランキングは、過去30年の夫の離婚動機の変化を表したものだ。注目されるのは、1985年には第8位だった「妻からの精神的虐待」が、最新の調査で第2位に急浮上したことである。

全国2,800人の既婚の男女を対象に番組が行った独自調査で明らかになったのは、妻を「怖い」と感じている夫の多さ。例えば「人格を否定するような暴言」「鬼の形相で責められる」「結婚したときと同一人物とは思えない」など、妻から精神的に追い詰められている夫の姿がうかがえる。

番組では、家に帰りたくないと「ノー残業デー」に街中をぶらつく夫の姿や、常にイライラしている妻の様子を映していた。

いったい妻は何にいらだっているのか。それは働く妻が感じている、強烈な「不公平感」らしい。

 今や共働きは、専業主婦の1.5倍。もはや、こちらが多数派である。しかし、夫の長時間労働は相変わらずで、家事・育児に費やす時間は1日たったの24分。妻の1割にも満たない実態があるのだ。

なぜ日本の妻は不機嫌なのか?女性就業率85%のフランス夫婦との違い

女性の社会進出に関する意識調査を行った東京大学大学院、本田由紀教授はこう語る。

「私だって仕事で輝いていた時期だってあるのに、ある種、悔しい思いもしながら家庭に入っているのに、男性側はそういうことに、まったく気づかず、自分は世話してもらって当然だというようなふるまいをされると、女性としてはイライラするのは十分想像できます。」

その結果、仕事を辞めて家庭に入った妻たちも、大きな不公平感を感じており、この不公平感が夫への恨みのような感情につながっているというそうだ。これが、妻が常に不機嫌になってしまう理由だという。

この女性の気持ちは筆者もよくわかる。大学卒業後すぐに結婚してフランスに来たばかりの頃は、就職して社会に出ていく夫のことを恨めしく思ったこともあった。「本当だったら私だって日本の社会に出てバリバリ働きたかったのに…」という悔しい思いは5年くらい引きずっていたし、自分の役目や生き方を肯定的に受け入れられなかった。こういう時期というのは、いつも何かにイライラしていて、時に卑屈になって、それはそれは「可愛くない妻」だっただろうと思う。

共働きが当たり前となった現代、こういった夫婦間の問題は「よくあること」なのだろう。特に日本の場合は、ちょっと前の世代が「専業主婦」が当たり前だったから尚更だ。人は家庭をつくるとき、無意識のうちに親の真似をしてしまうというが、「夫は外で家族のために働き、妻は家で家事をしながら子どもの世話をする」という家族の”こうあるべき”というイメージが無意識のうちに刷り込まれている可能性は否定できない。

日本人の子育て世代(30-40代)の親たちの時代といえば、まだまだ専業主婦が多かった。今の日本の子育て世代というのは、言ってみれば「手本のない新しい夫婦の形」を手探りで模索しているような世代なのだ。このことからすると、今、日本の夫婦のあり方に異変が起きていてもおかしくはない。

 

女性就業率85%、フランス夫婦の実態

それでは共働きが当たり前となって久しいフランスではどうだろうか。日本ではフランスの夫婦というと、「女性も働くのが当たり前だから、夫も家事を分担してくれそう」とか、「子供が産まれてもいつまでも若いカップルのようにデートを楽しむ」とか、「子どもより夫婦愛を優先にする文化だからうまくいく」とか、そんなイメージを持っている人もなかにはいる。

しかし、筆者が周りのフランス人夫婦をみていて思うが、実態はそんなに単純ではない。確かに、女性で取締役まで出世している人も日本ほど珍しくはないし、家事をすることに対する抵抗感もフランス人男性のほうが低いようにも思う。フランス人家庭のホームパーティーに招かれたときに、男性のほうが料理に腕をふるい、食器の後片付けまでするというケースもある。よく家事をする夫を「あの旦那さんはよくできた人ね」と特別褒められることもなく、フランスでは「当たり前」といった感じだ。フランスでは専業主婦の家庭は珍しく、どこの家庭でも大抵が家事や育児を夫婦で分担している。

そういう意味では、共働き夫婦のあり方がフランスのほうが確立されており、日本の一歩先を行っていると言えるかもしれない。フランス夫婦は、妻も夫も「夫婦平等」。それぞれができることをする、といった感じだ。

しかし、かといって、この”一歩進んだ”フランス夫婦がうまくいっているのかというと話は別である。ここに面白いデータがある。

  • Près de 45% des mariages finissent par un divorce
  • Près de 70% des femmes qui divorcent exercent une activité professionnelle
  • Ce sont les femmes qui demandent le plus souvent le divorce.
  • Cela constitue une évolution sociétale considérable. Par le passé, c’était les hommes qui prenaient l’initiative de la majorité des divorces. En partie parce que les femmes, sans activité professionnelle pour la plupart, dépendaient de leur mari.
  • フランスでの結婚の45%が離婚に終わる(日本は約34%)
  • 離婚した女性の70%近くが就業している女性
  • 離婚を申し立てるのは女性のほうが多い
  • これはつまり、女性の社会進出が進んだことを表している。過去では、離婚の申し立てを行い、先導していくのは男性のほうであった。昔は女性はほとんどが専業主婦だったので、男性に依存していたからである。(jurifiable.comより抜粋)

 

つまり、女性の社会進出は離婚率の増加に繋がると言えなくもないわけだ。事実、会社の重役ポストにいるフランス人女性は、離婚経験者が多い。夫婦平等と言えば聞こえはいいが、現実にはこの“平等”なバランスを保つというのはそう簡単ではないことが伺える。男女それぞれの役割が曖昧になってしまったぶん、夫婦が衝突するきっかけが増えたのだ。

実際に、筆者の周りのフランス人の夫婦も、男女ともに愚痴ばっかり言っている人が多い。「子どもの世話が大変」、「私のほうが働いている」、「夫はあまり手伝ってくれない」、「いつも自分ばかりが時間がない」などなど。日本人的な筆者の感覚からすると、十分夫婦で家事分担しているように見える夫婦でも同様だ。また、男性と女性どちらも同じ勤務時間の長さで、家事をきちんと分担できているカップルでもなぜか男性のほうが「俺が家族を養わなければ!」と気負っているケースもよくある。

愚痴るのがフランスの国民性なのだと片付けてしまうこともできるが、こういう愚痴を言うカップルからは男女ともに大きな不公平感を感じているように受け取られる。

となると、結局は今の日本の夫婦が抱えている問題と大して変わりがないようにも思えてくる。日本以上に共働き夫婦が多く、またその歴史も長いフランスでも結局のところは、「不公平感」が問題の根底にあるようだ。フランスと日本を比べても、夫婦関係と仕事&家事の両立にいたっては、衝突しやすい議題のようである。

 

専業主婦が一般的だった時代

それでは、こんな「不公平感」を持たずにいつまでもうまくいく夫婦でいるにはどうしたらいいのだろうか。その明確な答えはないが、筆者にとってはある60代の在仏日本人女性の言葉がヒントになった。

「私がフランスに来たばかりの頃は言葉ができないし、当時は国際電話も高かったから誰とも話ができずに、とにかく寂しくてね。小さなわが子をあやしながら、毎朝早くに仕事へ出かける夫の背中を見送ったあと、いつも泣いていたわ。仕事に精を出す旦那の邪魔になりたくなかったから、当時は彼に言えなかった。」

「夫は料理にうるさい人で、すき焼きも鍋物も食事のうちに入らないって言われたけど、頑張って夫が認める食事を毎晩作ったよ。だって、専業主婦ですもの。それくらいしなくちゃ。

他にも彼女の話をしていると、今の時代ではなかなか耳にしない「主婦の鏡」のような武勇伝がいろいろと聞ける。「専業主婦だからそれくらいしなくちゃ」と自分の役割を受け入れて、精一杯頑張ってきた姿が何とも潔く、かっこいいなと思う。そして何より、今は亡き夫に対する深い愛情を感じる。

専業主婦が当たり前だった時代のほうが、「夫婦それぞれの役割」というのが明確でわかりやすかった。離婚率が今より低いのも、これがひとつの原因だったといえなくもない。夫は外で働き、妻は家を守るという家庭のあり方が理想とされてきたのにはそれなりの理由があるのだ。

しかし、景気が良かった時代とは異なる現代では、正直夫の給料だけで生活していくのは難しいという事情もあるし、男性だからと言って「仕事向き」とは限らないい。女性だからと言って「家庭的」と決めつけるのは今や時代遅れな気がする。

さらに、「女性の権利」という観点から考えても、専業主婦しか生き方がないというのは問題だ。東南アジアの田舎出身の女性たちのように、結婚した男性の良しあしでその後の人生が決まるような「完全に男性に依存した生き方」しかできない状況では、女性に自由が保証されているとは言えない。

それなら現代の「うまくいく夫婦のあり方」とはどんなものなのだろうか。

それは妻が働く/働かないにかかわらず、互いが互いの役割と頑張りを認めてあげ、感謝の気持ちを言葉にして伝えてあげるというのが一つの解決策だと思う。

仕事で疲れて帰って来る夫に対しては、「いつも朝早くから遅くまで大変だね。ありがとう。あなたが外で頑張ってくれるおかげで、私たちは美味しいものや欲しいものが買えるし、安心して生活ができるんだよ。会社には嫌な人もいるだろうし、理不尽なこともたくさんあるんだろうけど、それをじっと我慢して、家族のために毎日出勤してくれてありがとう。」と伝えてみる。

休みのない家事&育児で疲れ果て、自分の要求はいつも後回しにしている妻に対しては、「終わりのない家事と、緊張感のある育児でいつも大変だね。疲れているでしょう?いつもありがとう。たまには休んで、好きなことをしてもいいんだよ。僕がその時間を作ってあげるから。君は本当に毎日よく頑張っているよ。だからたまには休憩しよう。」と伝えてみる。

そんな優しい言葉かけと、素直な心からのコミュニケーションをとる時間が、現代の余裕のない夫婦には必要なのではないかだろうか。

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