3年くらい前に『流暢な日本語で話しかけてるのにヘタな英語で返す日本人って何なの?』という記事を書いた。日本に住んでいる外国人のなかには、「きちんとした日本語で話しているのにヘタクソな英語で返されることが不満だ」と言う人が意外と多い。
日本人からすると、「英語で話したほうが相手にとってわかりやすいだろう」というシンプルな親切心で英語で話しているのだろうが、これが一部の外国人を非常にイラッとさせるのだ。
実は筆者も最近、「英語で話しかけられてイラッとする外人の心理」がよくわかった経験をした。
筆者はニースやラデフォンス、ヴェルサイユなど、フランスのなかでも比較的観光客の多い街に住んできた。すると、フランス人に外国人観光客だと間違われることがたまにある。こちらがフランス語で話しかけても英語で返される場合もあるわけだが、普段は全く気にならない。筆者自身、英語もできるし、相手のフランス人の英語レベルもある程度高い場合が多いので、フランス語であっても英語であってもどちらでもいいと思っている。
しかし、「フランス語で話しかけているのに英語で返す人」のなかには、どうにもイラッとさせる人がいる。パリで開かれ、マクロン大統領も訪れたスタートアップビジネスや新しいテクノロジーの展示会『Viva Technology 2017』に行ったときの話だ。
Googleのブースで話しかけたフランス人の男性が何が何でも英語で返答するタイプの人だった。「あそこの人だかりは何?」から始まり、「次のセッションはいつ?議題は何?」、「Googleグッズはいつもらえるの?」など色々な質問をフランス語でしたのだが、頑なに英語で返されてしまった。
会場にはたくさんの”英語を話す非フランス人”もいて、英語で案内することも彼の仕事なわけだし、彼の英語もフランス人なまりはあっても上手いし、会話は成立したのだから、そこまで腹を立てるほどではないのだが、どうにも心がモワンとする不愉快な気持ちになった。最初は私のフランス語の発音がよろしくないのかな?と思ったのだが、後から話に加わった筆者の旦那(フランス人)にまで英語で話していたので、これはもう言語レベルとか、人種だのの問題ではなかったのだと思う。
同じように、「フランス語で話しかけても英語で返事するフランス人」というのはたまにいるし、前述したように普段は全く気にならない。それではなぜ、Googleブースの彼にはイラッとしたのか。
それは、彼の行動が「自己中心的」に感じられたからではないかと思う。最初は相手を思いやっての親切心で「英語で話してくれてる」と受け取るが、何が何でも英語で返そうとする姿勢に「こいつは自分が英語で話したいだけか!」と思って、サーっと冷めてしまう。「Googleブースの彼」の印象は話せば話すほど悪くなり、5分の会話を終わるころには、「自己中心的でコミュニケーション能力に欠ける人だった」というイメージが出来上がってしまった。
だから、今英語を勉強中で、日本にいる外国人と友だちを作りたいと思っている人は要注意だ。勉強している英語を使ってみたい!という願望が強すぎると、”何が何でも英語で通す人”だと思われてしまうかもしれない。
外国人=日本語を話せないという思い込みがある人も同様だ。「外人だから英語で話さなきゃ!」で思考停止していて、相手の表情全く見ていない人や、しゃべっていることを聞いていない人がムッとさせる人なんだと思う。
結局のところ、「何語を話すか?」というのはさして問題ではない。大切なのは「何語を話すか?」よりも、「どんな意図をもって言語を選ぶか?」である。そして、自己中心っぷりは言葉が違う相手にも伝わってしまうものだ。
この話になると、「外国人の話す日本語がわかりづらいから英語で話す」という人もいるが、何も外国人のすべてがデーブスペクターや、ピーターバラカンのように流ちょうに話せないといけないというわけではない。相手の外国人の日本語のレベルが、自分の英語力よりも「下」だと確実にわかる場合なら英語で話してあげたほうがいいだろうが、基本的には日本語で話しかけてきた人には日本語で、英語で話しかけてきた人には英語で返すというのがマナーだと思う。
英語で話しているのに外国人をムッとさせてしまう日本人は、自己中心的でコミュニケーション能力が低い。
これが真実であれ、誤解であれ、こういう印象を外国人に与えていることは間違いないだろう。
顔が日本人じゃないからといって、日本語がわからないとは限らない。この感覚を身に付けることが、あなたが「真の国際人」になる最初の一歩ではないだろうか。