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フランスでの出産|無痛分娩を実際に経験して初めてわかったこと6つ

日本ではまだまだ実施数の少ない「無痛分娩」。”産みの痛み”を経験せず楽して産もうとするのは良くないというネガティブな意見や、無痛分娩による事故死のニュースなどから、何となくマイナスのイメージを持っている人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、この無痛分娩、実際に経験してみたら想像やイメージとは違ったことが結構ありました。そこで今回は、フランスで無痛分娩で出産した筆者が経験した「無痛分娩を実際に経験してわかったこと」を6つ紹介します。あなたは無痛分娩に賛成ですか?それとも反対ですか?

無痛=麻酔失敗

“無痛”というからには痛くないんだろう、と思う人もいますが、これは間違い。いや、むしろ本当に「無痛」になってしまったら、麻酔失敗です。実際に、無痛分娩の麻酔をすると、以下の3つのパターンになる可能性があります。

  1. 麻酔効きすぎパターン… 痛みや感覚を全く感じないくらいに効いている状態
  2. 麻酔がちょうどいいパターン… 痛みや陣痛感覚を感じられる状態
  3. 麻酔が効かないパターン… 普通分娩と変わらない状態

フランスの産院では2の状態を目指していますが、実際に麻酔がどの程度効くのかには個人差があり、身長や体重から事前にある程度の予測はできますが、完全ではありません。この点が、無痛分娩のリスクです。

そして、これら3パターンのうち、最も母体と胎児に負担をかけるのは1の効きすぎパターン。こうなると、陣痛の波に合わせていきむことが難しくなり、お産が長引いてしまいます。難産になると、赤ちゃんの頭を吸引しなくてはいけなくなります。

ちなみにフランスでも無痛分娩が広まった当初(20年前位)は、完全な無痛を目指していたそうです。お産が長引き、胎児を吸引して出産させたせいで赤ちゃんの頭の形が悪くなったなどの問題から無痛分娩に反対の意見も昔は多かったそうですが、現在ではそのような事例も少なくなりました。

麻酔後は「休息タイム」

筆者の場合、麻酔はちょうどいい効き具合でした。このちょうどいい効き具合というのはどの程度かというと、陣痛の始まりの痛さです。「あれ?これってもしかして陣痛?」と思い、時計を見て陣痛間隔を図り始めるころの痛みといった感じでしょうか。余裕で我慢できる痛みです。

筆者は子宮口が6センチまで開いたところで麻酔をしましたが、麻酔後は嘘みたいに痛みが和らぎ、自然と笑顔になりました。助産婦さんに「今のうちにしっかり休んでおいて」と言われ、ベットに横たわっていたらウトウトしてきて、軽く仮眠をとることもできました。

今振り返ってみると、ここでしっかり小一時間休めたことで体力を温存し、頭をスッキリ冴えた状態で出産に挑むことができたと思います。

麻酔が必要なのは「いきむとき」ではない

日本で無痛分娩をする場合は、計画出産(=出産の日にちを決め、計画的に出産する)になる場合が多いですが、フランスでは産院に24時間365日麻酔医が待機しているので、普通に陣痛が来るまで待ちます。となると、よくあるケースとして、「無痛分娩するつもりだったけど間に合わなかった」という場合があります。病院についた時点で、麻酔をする時間がなく、そのまま分娩する場合です。

こんな話がよくあるので、妊婦さんはよく「麻酔に間に合いますように…」と言いますが、これは少し間違い。麻酔が必要なのは、いきむときではなく子宮口が3センチ位開いてから全開になるまで。すでに全開まで子宮口が開いて、あとは産むだけの段階では麻酔をする意味がないのです。

お産というと、最終段階のいきむときが一番痛く、そのときのために麻酔をすると思っていた筆者にはこれは意外でした。無痛分娩とは、要するに「途中経過の痛みを軽くするショートカット」に過ぎないわけです。

無痛分娩=冷静でいられるお産

映画やドラマなんかで観る「お産」のイメージは、妊婦が痛みに悶えながら、汗をかきながら、パニックに近い興奮状態で必死に産む…という感じですよね。これが無痛分娩だとこのイメージが少し違ってきます。筆者も出産前はこんなイメージを持っていたんですが、無痛分娩で出産してみて、「お産」のイメージが変わりました。無痛分娩は妊婦が「冷静でいられるお産」なんだなぁと思いました。

いよいよ本番のいきむ段階でも、我慢できる程度の痛みなので、とにかく周りの状況がよくわかります。医者がいう「こんなふうにいきんで」というアドバイスも冷静に聞けて、意味を理解し、指示に従えます。これは無痛分娩の素晴らしい点だと思いました。

痛みが強いと分娩中はいきむときに呼吸を止めて力を入れるため、赤ちゃんに届く酸素量が減るといわれています。無痛分娩は、痛みが軽減されることによって子宮への内圧が余分にかからないため、胎児が酸素不足になるということがないというメリットがあります。

麻酔針が案外痛い

フランスをはじめ、欧米での無痛分娩は硬膜外麻酔(硬膜外鎮痛法)です。背骨の脊髄に近い場所にチューブを入れて麻酔薬を注入する方法で麻酔薬の影響が母子ともに少ないものです。

しかし、この注射が案外痛かった…。はっきりと「管っぽいもの」が背中のなかに入っていく感覚がわかりました。陣痛と陣痛の間を見計らってチューブを入れるのですが、この間背中をぐっと丸めた状態で痛みに耐えなければいけません。陣痛の痛みに比べたら、チューブを入れる痛みは確かに取るに足らないのですが、それでもやっぱり痛かった。麻酔針を打つ痛みのことなんて妊娠中は考えていなかったので、意外で驚きました。

「回復が早い」は本当だった

無痛分娩は産後の体力回復が早いというのは、よく知られています。しかしなかには、子宮の戻りが悪く出血が続いたり、無痛分娩のほうが回復が遅くなるという例もあって、出産するまでは半信半疑でした。

しかし実際に経験してみて、「回復が早い」は本当なんだなぁと思いました。どれくらいかというと、産後1週間でウォーキング1時間くらいできるくらいでしょうか。産後に家事ができないほど体力が落ちたということは全くなく、退院後すぐに普通の生活に戻った感じがします。

日本の妊娠&出産関連の情報を見ていると、「産後1カ月は無理しないで安静に」といったフレーズがよく登場してくるので覚悟していましたが、拍子抜けしました。本当に体力的に「いつもと違う」と感じたのは最初の一週間だけだったと思います。もだえるような痛みを感じる時間が短くなるぶん、回復が早いというのは、当たり前だといえば当たり前ですね。

 

おわりに
筆者は実際に無痛分娩にしてみて、良かったなぁと思うことのほうが多かったです。出産は人それぞれで、一概にどちらがいいと言えるものではないですが、陣痛の痛みをショートカットすることで得られるメリットは確かにあります。

それと同時に、麻酔なしで出産する日本の女性たちは本当に凄いなぁと思いました。私は途中でずるをしました(?)が、あのまま痛みがどんどん強まっていってお産に至ることを想像すると、普通分娩の過酷さを思いました。やっぱり、日本のママたちはすごい。正直、頭があがりません…。

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