ホームジャパン「やって当たり前」が日本のママを苦しめる!海外子育てとの違い5つ

「やって当たり前」が日本のママを苦しめる!海外子育てとの違い5つ

フランスで息子を育てて6カ月。最近思うのは、子育ては日本でも海外でも、大変な大仕事だなぁってことです。きっと、子育て自体の大変さは世界中のお母さんが共感できるものなんじゃないかなぁと思います。

しかし、日本から離れた国で育児をしていると、たまに日本語媒体の育児情報を見たときにギャップを感じることがあります。もちろん、日本全国の育児の仕方を一般化することはできません。しかし、日本の場合は他の先進国に比べて「母親なんだから子どものためにこれくらいやって当たり前」というラインがあり、このラインが案外きついものだと感じることがあります。もちろんそれでも、楽しく育児をしているお母さんもたくさんいますが、筆者のようなズボラママにはこの当たり前が少々苦しいのです。

それでは具体的にどんな「やって当たり前」が日本のママを苦しめているのでしょうか。今回は、赤ちゃんの世話をして感じた「日本での育児常識」を5つ挙げたいと思います。

赤ちゃんと一緒に寝る

親子で「川の字に寝る」ことが、親子のスキンシップの一つとして習慣がある日本。『「川の字」で寝る日本人の“睡眠”は不思議すぎ!海外との違いとは?』という記事でも少し触れましたが、この習慣は欧米にはありません。子供が産まれる前の妊娠中から「赤ちゃんの部屋」を作り、生後しばらくしたら子どもとは別に寝るのが一般的のようです。ちなみに、この理由を日本の住宅事情だとする説もありますが、パリなどの家賃が高い大都市でも「赤ちゃんの部屋」を設ける家庭が多いので、住宅事情というよりも文化の違いなのではないかと思います。

筆者も息子が生後3か月の頃から徐々に子供部屋で寝かせる時間を延ばしていきました。これを日本人に話すと「別室で寝かせるなんて心配じゃない?」と言われるのですが、結論から言うと筆者は赤ちゃんを別室で寝かせて良かったと思っています。

賛否両論あるでしょうが、ビデオ付きのベビーモニターで常に様子を見ることができるようにしているので赤ちゃんの寝顔がすやすや見られ、泣けばマイクが作動して知らせてくれます。私たち夫婦が寝るときの部屋の出入りで赤ちゃんの睡眠を邪魔することもないですし、生後6カ月の今では夜ミルクを飲ませて寝かしつけたら朝までぐっすり自分のベットのなかで寝てくれています。

何より、寝室が別になっているおかげで、寝かしつけが終わったら夫婦の時間をもてることがいい点だと思います。心理的な意味でも「夫婦二人と子ども」という区別ができ、育児の気分転換やメリハリをつけることにもつながります。寝かせるときは一人にして、その分昼間はいっぱい抱っこして遊んであげる。赤ちゃんと寝室を別にしたほうが母親の負担が軽くなるのは間違いありません。

高い添い乳率

正確なデータはありませんが、日本語媒体の育児情報を見ていると、日本人はフランス人に比べて「添い乳」をする人が多い印象です。赤ちゃんと同じ部屋で寝る&ベットではなく布団で寝る文化などから、このような違いがあるのではないかと思います。日本では1歳まで添い乳をしていたという人も珍しくありませんが、フランスではあまりそういった話は聞きません。フランスの産院ではベットからの転落や窒息などの危険性を説明され、おっぱいをあげたまま一緒に寝てしまったと話すと「赤ちゃんはきちんと自分のベットで寝かせるように!」と厳しく指導されます。

とはいえ、授乳する時間は我が子を「愛おしく見つめる時間」。筆者自身、授乳後にそのまま赤ちゃんと眠るのも気持ちがよく、ほっこり温かくて、すごーく幸せな気分になりました。夜間の授乳も体を起こさずにそのまま授乳できる「添い乳」は、特に育児疲れと睡眠不足が辛い時期にはありがたい授乳方法です。

しかし、添い乳は短期的に見れば非常に楽な方法ですが、続ければ続けるほど添い乳を卒業するのが難しくなり、夜間授乳をする時期が長引くので、長期的にみると母子ともに負担が大きいと思います。さらに添い乳が癖になっていると、生後6か月ごろから始めるネントレも難しくなります。日本ではどこか「添い乳が当たり前」という印象を受けますが、夜間断乳という観点から見ると母親の負担を大きくしている一因のような気がします。

離乳食は手作りする

こんなに違うの?日本の離乳食の与え方の特徴、海外と違うところ5つ』という記事でも触れましたが、日本の離乳食は「素晴らしく手が込んでいる」のが特徴です。すりつぶしたり、裏ごししたり、すりおろしたりなど、とーっても面倒臭そう!なのに離乳食は手作りしているママが大半だと思います。これは手作りの離乳食を与えることが「母親の愛情」であり、市販のベビーフードを与えるのは手抜きをしているようで罪悪感を感じる…という人が多いからではないでしょうか。

実は筆者もその一人で、瓶詰のベビーフードを温めて与えるのは何だか味気なくて、手抜きしているようで申し訳ない気持ちになっていました。しかし、そんな筆者の罪悪感とは裏腹にフランス人たち(小児科医も含める)は「瓶詰ベビーフードも与えるの?」とよく聞いてきます。彼女たちの話す様子では、「市販のものよりも手作りのほうがいい」といった概念は全くありません。手作りも既製品も同程度で、どちらかが劣っているという考えはないようです。瓶詰にするか手作りにするかは個人の自由であり、その個人の選択を尊重している感じです。

筆者は今でも離乳食を手作りしていますが(とはいえベビーフードメーカーで簡単です)、家事と育児で疲れた時はベビーフードにいつでも切り替えようと思います。このように選択の自由があり、後ろめたさを感じなくて済む点は非常にありがたいです。

育児はママが筆頭

日本も一昔前と比べ、男性も家事や育児に参加する時代になりました。とはいえ、「男が稼いできて女が家を守る」というような昔からの概念というのは、私たちの意識のさらに深いところまで浸透しているように感じます。子供向けの絵本や育児関連書、テレビドラマの家族事情などを見ても、日本は他の先進国に比べ「育児はママがする」といったイメージが強いです。

実際に政府の調査によると、6歳未満の子どもを持つ父親の家事・育児に費やす時間は、わずか1時間ほどだそうです。同様に、共働きの母親は1日約6時間、専業主婦の母親で1日約9時間。1990年代と比較しても、父親の育児、家事に費やす時間はさほど増えていません。これに対し、アメリカや北欧では、1日に3時間以上も父親が家事や育児をしているというデータがあります。(『ワンオペ育児』 藤田結子教授インタビューより)

しかし、日本の労働環境を考慮すると、男性の育児参加がなかなか難しいのも事実です。残業や職場の人との飲み会などで毎日深夜に帰宅してくる夫に対して、「赤ちゃん寝かしつけてよ」と頼めないのも当然です。こういった日々が積み重なり、母親が赤ちゃんに添い寝する習慣も相まって、気がつけいたときには子どもは母親ばかりになつき、父親は蚊帳の外になっていた…というのも日本家庭にはあるあるなのではないでしょうか。この根源には「育児は母親がするもの」という凝り固まった固定概念があると思います。

いい母親プレッシャー

これだけ「母親なんだからやって当たり前」という条件があるのに加え、これらをうまくこなしていかなければならないとプレッシャーに感じている人も少なくありません。NHKの情報番組「あさイチ」によると、“いい母プレッシャー”を感じるのはアンケートに答えた約1600人の母親のうち、68.4%にもなりました。

さらに番組で行ったアンケートによると、9割以上の母親が「自分はいい母じゃない」と思うことがあるそうです。どうして日本のお母さんはこのようにプレッシャーを感じ、悩んでいるのでしょうか。

これは彼女たちが「周りは自分よりうまくやっている」と感じるからではないかと思います。

日本は家事、育児に限らず、基本的に「仕事の出来が素晴らしい」国。みんなが時間とルールを守り、与えられた役割に責任を持ち、何事もきちんとこなします。そのため、傍から見るとどの人も「そつなくうまくやっている」ように見えるのです。

仕事をしつつ、化粧もおしゃれもして、手作りのお弁当だって作って、ママ友の付き合いもうまくやりこなし、子どもにはいつも笑顔で接していられる。最近のSNSや女性誌なんかを見ると、誰もがそんなスーパーウーマンのような錯覚を起こします。

日本では育児以外の面でも、「みんなきちんとしているから自分も頑張らなくては!」というプレッシャーがあると思います。育児の場合、「子供がかわいいから、私もみんなと同じようにきちんとできるはずだ」と考えることに苦しさの根源があるのではないでしょうか。

ちなみにフランスの場合は共働き家庭が多いので、結構皆さん手抜きしてます。私の友人のフランス人女性は市販のベビーフードを温めません。哺乳瓶のミルクも水のままです。もちろん手作りお弁当なんて作ったことすらありません。シャツのアイロンもクリーニング任せです。そして、これはフランス人にありがちなのですが、会うといつも「疲れた」と愚痴ってます。愚痴ることに抵抗感がありません。

自分の周りのお母さんたちがみんなこんな感じなら、日本のお母さんたちも“いい母プレッシャー”なんて感じなくて済むのではないでしょうか。いつも子どもに笑顔で接し、おだやかに機嫌よくいられるためには、「手を抜けるところで手を抜く」ことなんじゃないかと最近思います。手を抜くことに罪悪感を感じなくていい社会。きっとそんな社会になれば、日本での子育てもずっと楽なものになるのではないでしょうか。

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