ホームジャパン日本のパパが欧米人に比べて「蚊帳の外」にされやすいのはなぜか?

日本のパパが欧米人に比べて「蚊帳の外」にされやすいのはなぜか?

仕事・家事・育児のすべてをお母さんひとりで回す「ワンオペ育児」。この言葉をよく耳にするようになり、ますます日本のお父さんの育児不参加が問題視されるようになった。「夫は外で働き、妻は家を守る」という従来の価値観から変わろうとしている今、その狭間を生きる子育て世代は既存の価値観を払拭するのに苦労しているのだと思う。

「ワンオペ育児」を取り上げるとき、欧米家庭と比較して「欧米人男性は家事育児に積極的」と伝えられることが多いが、実際はもそんなにうまくいっていないということは以前の記事で触れた。(参照:共働き先進国フランスの育児が実はうまくいっていない4つの理由

欧米人夫婦も家事育児の分担で揉めるし、互いに不満を蓄積させ、離婚に至るケースも珍しくない。日本よりも共働きや働き方などの社会システムが整っていても、やはり夫婦間で仕事・家事・育児をうまく切り盛りしていくのはそう簡単なことではないようだ。

しかし、共働きであれ、片働きであれ、日本と欧米の「家族観」で決定的に違うことが1つある。それは、家庭内での「お父さんの立ち位置」だ。日本は欧米に比べ、お母さんと子どもがくっつき、そのせいでお父さんが蚊帳の外にされる傾向にあると思う。

例えば、家族の寝室の違いだ。日本では子どもが小さいうちは「母親と子どもが同室で、父親は別で寝る」という家庭が(少数派ではあるが)存在するが、これはまず欧米ではありえない。家族はあくまでも夫婦が中心と考える欧米諸国の人にとっては、寝室が父親だけ別室だというと「離婚寸前」だと疑われるだろう。欧米では夫婦同室で、子どもが別室というのが一般的である。

夫は家庭での居場所を失って、疎外感や孤立感を感じるようになります。

また、朝の情報番組等でも特集され、最近徐々に増えている「帰宅恐怖症の夫」も、日本のお父さんが蚊帳の外にされている一例である。これは、妻が子供にばかり関心を向け夫に関心を向けなくなったり、妻と子供の関係性が深くなりすぎて夫と子供との関係が浅くなってしまったりすることが原因だと言われている。夫は家庭での居場所を失って、疎外感や孤立感を感じるようになるのだ

欧米では珍しい里帰り出産だってそうだ。同じ家族なのに、一時的とはいえ父親だけ別の場所で暮らし、母と子だけで出産&産後という大変な時期を乗り切っていくというのも、欧米では考えられない。

このように日本のお父さんがいかに家庭内で距離があるかを示す例は探せばきりがないが、欧米人たちと最も違うところは、どこか「父親は離れていて当たり前」とする私たちの潜在的な意識にあると思う。

筆者の家にたまに日本人の友人が遊びに来ると、何も言わずに息子のオムツを変えたり、ごみを捨てたり、皿を片付ける夫の姿を見て感心されることがある。でもこれはフランス家庭では普通のこと。休日は夫が子どもに食事を与え、オムツを変え、一緒に遊び、お風呂に入れる。友人が遊びに来た時にせっせと料理やワインの用意をするのは夫、という光景も珍しくない。土曜日の朝早くにオムツとトイレットペーパーと牛乳パックを片手に、食品の買い出しを済ますフランス人夫たちの姿は、見ていて何とも微笑ましい。

フランス人に言わせると「父親も家族の一員なのだからやって当たり前」だといい、むしろ「子どもの世話ができる休みの日こそ一緒に過ごして絆をつくりたい」と考えているそうだ。

このへんの意識が日本人とは少し違うように思う。日本は「子育てにおける母親の役割」をあまりに強調しすぎているせいで、父親の役割を軽視し、「母と子がくっつくのは当たり前」としている傾向があるのではないだろうか。母と子の関係ばかりにスポットが当てられ、父親の存在は忘れられがちになっているように思う。

そして最悪なのは、私たち日本人がそれをどこか「当たり前」と感じている点だと思う。ワンオペ育児問題は、単純に父親が1週間に何時間家事育児をしたかという表面的な数値が問題なのではなく、もっと深い私たちの無意識にある。この意識を変えていかない限り、いつまでたっても夫は「家事育児を手伝ってやっている」という“やらされている感”に縛られてしまうし、妻のほうも「母親の役割の重要性」に押しつぶされ、気が付いたころには「自分以外誰にも頼れない」と疲弊してしまうだろう。

良いお父さんというのは「子育てする母親」をサポートする人ではない。良いお父さんというのは、妻と協力して「同等に子育てする」人だ。

子どもにとって大切な存在はお母さんだけじゃないし、お父さんだって、お母さんと同じくらい重要な存在なのだ。これを父親も母親も、もう少し意識していくべきだと思う。

すでに「蚊帳の外」にされている日本のお父さんにイクメンブームを押しつけ、「家事手伝え」と文句を言うだけでは、お父さんたちの不満がたまるのも無理はない。妻のほうは夫に家事育児をやってくれるように頼む前に、家庭内に「お父さんの居場所」を作ることに力を注いだ方がいいのかもしれない。

とはいえ、妻のほうも本当は自分だって外で働いて自分の時間が欲しいと思っているのに、ワンオペ育児で「いつも自分を後回し」にされる日々が続けば、蓄積した不満が爆発するのも当然だ。「私は育児のためにキャリアを犠牲にしたのにあなたは…」という不公平感があれば尚更、夫婦関係を良好に保ちながら協力して育児をするのは難しい。

となると、最も罪深いのは「仕事か家庭か」という二者択一の選択を強いられる日本の社会働き方にあるのかもしれない。仕事をしながらでも家族や子どもと過ごす時間を持てるようなゆとりのある働き方ができるようになれば、夫のほうも「外で稼いだだけで父親としての仕事は終了!」と意識がなくなる。

休日出勤、残業、職場での飲み会を減らすこと。日本人の働き方を改革し、誰もが当然の権利として家族と過ごす時間が持てるようになれば、ワンオペ育児もなくなり、ニッポンのお父さんたちが蚊帳の外にされることもなくなるだろう。

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