人間を誘拐などの強制手段や甘言によって誘い出し、移送し、売り払う人身売買。世界でも最も凶悪な組織犯罪の1つです。そして人身売買は世界中で現在も行われているのです。普段あまり触れられないトピックではありますが、日本も人身売買に関与している国として諸外国、特にアメリカ合衆国や欧州連合から批判を浴びており、他人事ではありません。
そこで今回は世の中のあらゆるランキングを紹介する米国サイト「TOP10LIST」より、「人身売買に関与している国ランキング(Top 10 Human Traffickers)」を紹介します。
このリストはアメリカの3階層システムに基づいて作成されました。
第一層: 人身売買撲滅のための最低基準を完全に満たしている
第二層: 人身売買撲滅のための最低基準を完全には満たしていない、十分な努力をしていない
第二層ウォッチリスト
第三層: 人身売買撲滅のための最低基準を満たしていない、努力をしていない
1. ミャンマー連邦共和国 (第三層)
ミャンマーは人身売買被害者の送出国であり、中継国でもあります。ミャンマーの女性(特にカレン族)は中国、タイ、バングラデシュ、インドなどの国々で売春を強制されています。子どもたちは、さらに物乞いをして仕事をするように義務づけられています。国内の雇用機会の欠如が高所得への欲求につながり、ミャンマーでの人身売買取引へのプッシュ要因となっています。軍隊自身のために子供を使うミャンマー軍事政権は、人身売買撲滅に協力的であるとは言えません。2006年、軍事政権から400人の密売人が告発されましたが、問題は依然として解決されていません。
2. ソマリア (特別なケース)
ソマリアの状況は制御不能です。人身売買撲滅のための中央政府がソマリアには存在しません。人身売買は国内のみで完結する場合が多く、内部告発によって明らかになる場合がほとんどです。貧しい経済状況が多くの家庭を苦しめ、子どもを捨ててしまうケースも多発しています。難民キャンプで生活する人々は他の国への移住を望む人が多く、人身売買のターゲットにされやすいとされています。ソマリアでの人身売買はこのようにして貧しい者を利用し、最悪のシナリオを辿っていくのです。
3. トルクメニスタン (第三層)
トルクメニスタンは、人身売買や強制労働の主要な温床です。男女ともにトルコ、ロシアとイギリスでの強制労働や売春にかけられます。トルクメニスタンは、反人身売買法施行へ向けた努力を行っているとは言い難く、人身売買撲滅のための最低基準を満たしていません。人身売買被害者の保護と取引の予防、密売の告発への政府の努力はありません。
4. 朝鮮民主主義人民共和国 (第三層)
北朝鮮は「厳しい」状況を超え、むしろ悲惨な状況と言えます。北朝鮮の女性や子供は中国に逃亡し、そこで強制労働や売春を強いられます。人身売買被害者の多くは被害を明らかにされないため、世の中には知られていません。中国は北朝鮮の人身売買撲滅への協力は行っておらず、多くの場合被害者は後に北朝鮮へ送還されます。北朝鮮は多くの人が知っているように、世界で最も抑圧的な政権国の1つです。
5. ベネズエラ (第三層)
ベネズエラは人身売買の送出国であり、中継国であり、受入国でもあります。多くの女性や子どもが貧しい田舎町から 売春を強制する都市エリアに連れて行かれます。人身売買被害者の多くは、外国人から好条件の仕事のオファーがあると言って騙された人です。ベネズエラ政府はこれまでに援助を少しだけ行いました。しかしながら、人身売買を禁止する法が施行されているにも関わらず、避難所を設けるわけでもなく、実質的な援助はNPOに任せっきりとなっている状況です。国の政情不安を考えると、人身売買撲滅計画はまだ行われていないようです。
6. イエメン (第三層)
多くのイエメンの子ども(特に男児)は強制労働と物乞いを余儀なくされています。多くはそれらの理由により、サウジアラビアに国境を越えて行われます。イエメン政府は、人身売買撲滅のための最低基準を完全には満たしていません。実際には売春を合法化する161章を制定しています。つまり、性的搾取のために女性を使用する密売人の起訴への努力がなされていないのです。
7. 中華人民共和国(第二層ウォッチリスト)
中国は性的搾取と強制労働を目的とした人身売買の送出国であり、中継国であり、受入国でもあります。被害者の数は年間でおよそ1万人から2万人に上るとされています。人身売買が行われる過程の始まりは、甘言による騙しのケースが多いです。多くの犯罪組織が加担していることから、政府のアクションは未だに十分だとは言えません。しかしながら、中国政府はこの問題に苦しむ人へ向けたヘルスケアシステムや避難所などを設けています。
8. インド (第二層)
インドもまた人身売買の送出国であり、中継国であり、受入国です。男性も女性も子どもも、工場での労働につられて売買されていまします。下位のカーストの女性と子供は住むところがなく街中を放浪し、売春することを余儀なくされます。Aakashという名前の少年が奇跡的に9年間の残酷な状況を生き延びたとされています。他の多くの子どもたちは今でもAakashように、車に乗った見知らぬ人へ報酬を提供しています。被害者の子どもたちは売春のための劣悪な部屋に閉じ込められて生活しています。Aakashの2人の友人は“自由”という言葉を知らないまま息を引き取りました。人身売買撲滅に向けた十分な努力をしていないだけではなく、インドは強化法施行対応のための包括的な制度を制定しました。今後ますますインドにおける人身売買撲滅に力を注ぐと報告されています。
9. モルドバ共和国 (第二層)
モルドバは女性売春の主要な送出&受入国の1つです。モルドバの女性はカナダ、米国、トルコ、ロシア、キプロス、ブルガリア、アラブ首長国連邦、コソボ、イスラエル、インドネシア、イタリア、ギリシャ、ウクライナ、ルーマニアなどに送られ、性的搾取が行われます。それに加え、アゼルバイジャンのような他国からも多くの男性や女性、子どもがモルドバに送り込まれ強制労働を強いられます。人身売買に関するレポートによると、モルドバ政府はこれまで不均一な人身売買への対応をしてきましたが、現在は新しい法律のおかげで、徐々に人身売買の取り締まりを行っている状態です。
10.日本 (第二層)
日本は人身売買の中継国であり、受入国です。多くの女性と子どもたちは中国、東南アジアや東欧から日本へ人身売買されています。 被害者のすべての女性は、組織犯罪を強要されています。お金と豊かな生活を約束され来日した被害者たちは、目的地に到着するとパスポートは没収され、移動を制限されます。オーナーへの支払いのために労働(売春)を余儀なくされます。2011年6月27日に米国務省により発表された世界の人身売買に実態に関する年次報告書によれば、日本企業の実施する「外国人研修・技能実習制度」が、賃金不払い、長時間労働、パスポートを取り上げるなどの不正行為によって移動の制限を行うなどにより、中国、東南アジア出身者の人権を蹂躙したり、暴力団組織が性風俗産業で外国人女性を強制労働させている実態を紹介し、日本政府による対応の不備を指摘しました。このため、「人身売買根絶の最低基準を満たさない国」(4ランク中上から2番目)に分類されており、これは7年連続となります。これまでに保護された女性の多くは祖国に送還されたり、避難所に入れられています。政府は人身売買撲滅メッセージを多言語で記載したパンフレットを配布するなどして対応にあたっています。
ソース:Top 10 Human Traffickers