「近頃の若い女性は、貞操観念がない!」、「最近の日本人女性は軽い!」とよく言いますが、これは本当でしょうか。そもそも“軽い女”と“そうでない女”を区別するのは、個人の判断によるところが大きく、明確なラインを引けるわけではないので、若い日本人女性が軽くなったと言える証拠というのは実際のところ存在しないのかもしれません。しかし、10代20代の女性の性感覚に影響を与えるものがあふれているのが現代社会。そして、それは日本社会だけに言えることだけでなく、先進国全てに言えることなのかも知れません。
日本というアジアの国と欧米諸国の性感覚を比べる上で言及しなくてはならないのは、リプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)の分野で、女性の主体性を認めるか否かの点でまったく正反対の意識となっていることです。
この調査から、避妊については日韓は男性が主体的に避妊するものだという意識が多くを占めているのに対して、米国、フランス、スウェーデンでは女性が主体的に避妊するものだという意識が大半を占めているのがわかります。望まない妊娠への対処としては、欧米、特にヨーロッパでは、そもそも女性の権利として中絶が認められるべきとの考えが圧倒しているのに対し、日韓では、母体に害なら認められるという「あるべき」論を回避したプラグマティックな考え方が中心となっています。
フランスの場合、「この20年間で女性の人生を変えることに最も貢献したものはなにか?」と問いかけた調査結果によると、とフランス人女性の59%が「避妊の自由化、特にピルの使用」を挙げていることがわかりました(参照:「女のコの味方~ピル服用のススメ」)。つまり、フランス人はピル解禁こそ女性革命の第一歩、ととらえているのです。避妊を男性任せにするのではなく、女性がコントロールすることで男性と対等にセックスを楽しめるようになりました。
しかし、フランス社会でも「女性の性の解放、自由化が進みすぎている」という危惧があるようです。フランス女性誌ELLEによると、現代の20代そこそこの女性は、先輩女性がもたらした“自由”に慣れきった年代であり、貞操観念が縮みあがっていると警笛を鳴らしています。また、若い世代の性意識に影響を与えるものとして、フェイスブックなどのインターネットソーシャルサイトや、レディー・ガガのような体の露出が多い音楽アーティスト、イギリスドラマ「Skins」のヒット、一般人の実生活を元にしたバラエティー番組、télé-réalité(テレ・リアリテ)を挙げています。
télé-réalité(テレ・リアリテ)というのは日本ではあまり馴染みのないものですが、例えばLes Dilleme(レ・ディレンム)という番組では男女数人を同じ場所に住ませ、2つのチームに分かれてチームのメンバーそれぞれがニ者択一の選択(どちらを選んでも不利益となる)をして、チームの合計獲得金額を競うという番組である。この番組に出演した若者はテレビや雑誌でも取材され、放送中のチームの様子は24時間インターネットで閲覧可能。ちょっとした有名人の着替える姿やトイレ、カップル2人でいる様子なども覗くことができ、これが若者の性意識を曲げているとの指摘もあります。
それでは、セックスが依然として男性任せになっているはずの日本の社会ではどうでしょうか。
発達加速研究の結果によると、日本人の初潮の平均年齢は1961年から2002年の間に約1歳下がり、郡部と市部の差異がますます小さくなってきていると言われています。また、去年の6月、小中学生が援交をしていたという事件が明るみに出て世間を騒がせたましたが、日本の若者全体の性体験が低年齢化しているのかもしれません。
海外ドラマ人気も若者の恋愛観・性行動感覚に影響を与えるものでしょう。日本の恋愛ドラマの場合は、好きになる(なかなか気持ちが伝わらない)→告白→つきあう→セックスといったものが主流ですが、海外ドラマではこういった恋愛の順序はあまり見られません。海外ドラマからセックスから恋愛が始まるものだと認識してしまう可能性もあります。
フランスの場合はレディー・ガガを例に挙げていましたが、日本の場合はセクシーを売りにしている倖田來未のPVやライブパフォーマンスも若い女性の「なりたい女性像」に影響を与えているのかもしれません。
さらに、日本特有の性行動低年齢化の原因として挙げられるのが、少女漫画の過激な性表現。親の気づかぬところで、曲がったセックスの感覚を性についての意識がまっさらな状態の少女に植え付けてしまいます。若ければ若いほど、影響を受けやすく、「恋愛はこういうものだ」と鵜呑みにしやすい。
低迷していく世界経済。性をコマーシャル化することで、この危機を何とか乗り切ろうとする先進国の報道メディアたち。
その影響を一番に受けるのは何も知らない若者たちなのかもしれません。