ハーフの男性は股間に「超巨大モンスターがついている」と思われている。だから、大浴場ではばっちりタオルで隠さざるを得ない…。(ハーフあるあるより)
外国人と結婚した人や海外生活の長い人、帰国子女など“外国との関係”を持っている人は、これまでに何かしらの「偏見」を感じたことがあるのではないでしょうか。国際感覚をもつというのは、世間の「偏見」にさらされるようになる“始まり”と捉えることもできます。
とはいえ、外国人との結婚も海外生活も自分の責任で選んだ道であるため、多少嫌なことがあっても「仕方ない」と流すことができますが、生まれたときから国際色豊かな「ハーフ」は世間の偏見をどのように思っているのでしょうか。
そんなハーフを取り巻く環境と、国際感覚のない純ジャパの特徴を紹介してくれる本がサンドラ・へフェリン著の『ハーフが美人なんて妄想ですから!! 困った「純ジャパ」との闘いの日々』。そこで今回は、この本の内容をまとめつつ、“ハーフの世界”を紹介します。
【著者紹介】 サンドラ・へフェリン
著者自身も母が日本人、父がドイツ人のハーフの女性です。母国語は日本語とドイツ語で、ドイツ・ミュンヘン育ち、現在40歳のサンドラさん。彼女のブログやコラムなどは独自の視点が面白く、筆者もたびたび参考にしています。
ハーフ・マトリックス
著者いわく、日本人はハーフになんらかの妄想を抱いているといいます。その日本人がハーフに期待することとは1)美人度、2)語学力、3)財力であり、これを元にハーフを4種類に分類できます。

1.理想ハーフ
語学が堪能で見た目も美しい、滝川クリステルのようなハーフ。日本人が妄想するハーフの理想型でありながら、このタイプのハーフはあまり多くない。両親の家柄も良く、金持ちであることが多い。
2.顔だけハーフ
容姿は目を見張るほど美しいが、使える言語は日本語オンリー。ダレノガレ明美や黒木メイサがこのタイプ。美貌を活かして俳優、モデルなど華やかな世界で活躍することも多い。
3.語学だけハーフ
日本語も外国語も自由に操れるが、容姿が普通の人たち。著者自身はこのタイプにあてはまると分析している。語学力のおかげで住む国や仕事のチャンスが広がり、海外に飛び出して通訳や大学の研究職など堅めの職業に就く人もいる。
4.残念ハーフ
純ジャパの考える「ハーフの特権」を全くもっていない人たち。美形でもバイリンガルでもないハーフ。「ハーフなのに…」と残念がられることが多く、就職活動でも苦労する。いっそ純ジャパになりたい。
困った純ジャパの4タイプ
このようにおおまかにハーフをカテゴリ分けできますが、さらにハーフに出会ったときの日本人の反応にも共通点があり、タイプごとに分類できるそうです。
1.積極的すぎる人々
ハーフに対して好奇心旺盛で、初対面でいろいろと質問してくるタイプ。「どこの国のハーフ?」、「両親のどっちが外国人?」という質問から、「納豆は食べられる?」、「異性は日本人と外国人どっちが好き?」まで尋問のようにまくしたてる人です。
2.思考停止する人々
ハーフのガイジン顔を見ると頭のなかが真っ白になる人がいるとサンドラさんは言います。「外国人に話しかけられた」と勘違いして動揺するタイプに多いといいます。いくら日本語で話しかけても英語で返されたり、自分は日本人だと説明しても理解してくれないことも多いのだとか。
3.偏見のある人々
「外国人の女は軽い!」と根拠もないのに信じている人や、フランス人とのハーフの子供に「フランスかぶれで生意気だ、調子に乗るな」と嫌味を言う人、外国人や外国人=不審者という価値観を持っている人などがこのタイプです。
4.親
「ハーフの子がほしい、だってベッキーみたいな可愛い子が生まれるから!」、「ハーフの子がほしい、だってそしたらモデルになれるから!」、「欧米人と結婚したい、だって子供がブルーの目になるから!」。こんな価値観をもった親がハーフにとっては最強に困った人だといいます。
ハーフにとってありがたい純ジャパとは?
この本によると、ハーフが好む日本人と言うのは「現実を見ている人」だそうです。例えば、ハーフが「語学ができない」といった時に「そうなんだ」とそのまま受け止めてくれる人。ハーフに期待せず、地味顔のハーフに「もうちょっとパパ似だったらね」とか、「ハーフなのに英語ができないなんてもったいない!」と言わない人だそうです。
おわりに
この本は「ハーフを理解するため」のものですが、読んでいて、国際結婚した人や海外在住者、帰国子女などさまざまな“国際人”にも共感できる部分が多いと思いました。
例えば、ハーフは1つの国に「アツく」なれないという点。両方の国の好きなところはたくさんあるけれど、どこか覚めた目で見ているという感覚は筆者も思い当たるところがあります。そしてそれがゆえに、「日本ってこういうこところが悪いから改善されるべきだよね」と、日本に住む日本人のように自らの国を批判しづらくなるというのも海外在住者には共通しているのではないでしょうか。
日本にいた頃は同じ仲間内の悪口として許されていたのに、海外に住み始めると日本人はどこか部外者になってしまいます。すんなりと「こっちの人間」として認められにくくなり、欧米崇拝の日本嫌いというレッテルを張られてしまうことも…。
とはいえ、ハーフも海外在住者も、国際カップルも嫌なことばかりでもありません。
この本の中で筆者が最も共感したのは、どちらの国にも“ただいまと言える幸せ”があるという項です。ここで少し本文を紹介します。
「ただいま」と帰ってこられる場所が2つあるということは、「地元」と言える場所が2つあるということです。2つの国を「観光客」としてではなく、「地元の人」として味わうことができるのです。(中略)
私にはドイツと日本という2つの地元にたくさんの思い出があるので「懐かしい」ものがたくさんある。
ドイツに関して言えば、1リットルのビールも、あのビアガーデンの雰囲気も地元の人として味わえる。一方で、日本にいるときに、夕方に「焼きイモ~♪」と聞こえてくると外に駆け出したくなる。
こういうときにハーフとして両方の国を「感じる」ことができてよかったと思うのです。これこそハーフの醍醐味のひとつではないでしょうか。
結論としては、「ハーフはいろいろと面倒なこともあるけど、悪いことばかりではないよ」ということでしょうか。
写真:JD Hancock