「何で?どうして日本人はあんなに冷たいの?」
外国人留学生200人と同じ寮で生活していたある日、アメリカ人女性のヨランダがすごい剣幕で私の部屋にやってきた。
彼女は語った。
夕方、彼女が地下鉄のホームで電車を待っていた。電車がホームに入るのとほぼ同時に女性が目の前で倒れた。彼女は女性に駆け寄っていったが、周りにいた大半の日本人は女性に目を向けるがそのまま電車に乗り込む。結局、倒れた女性に駆け寄ったのは彼女を含めて3人だけだったという。
「何でみんな倒れた人を見ておきながら、見ぬふりをするの?何でみんな足を止めないの?」
彼女の抗議を一通り聞いて、私はその場の事情を推測し、それっぽい説明をする。
「いや、きっとみんな予定があったりして急いでいたんだよ。それに3人もいれば大丈夫だろうと思って電車に乗り込んだ人もいるんじゃない?」
すると彼女は言う。
「そんなのはわかっている。今日のようなことがアメリカであったら、同じことになるかもしれない。でもね、日本人ってすごく“親切”なんじゃないの?私が道に迷っていたらみんな親切に教えてくれるし、私のへたくそな日本語にもみんな真剣に耳を傾けてくれる。日本人はみんな親切だと思っていたのに・・・。」
それまで親切だと思っていた日本人の意外な冷たい一面を目の当たりにし、ショックを受けたようだった。
“困っている人がいたら手を差しのべましょう!”という教えは、もはや小学校の道徳の教科書にのってる化石のようなフレーズなのかもしれない。面倒なことには目をつむる、というのは日本人に限らず、人間誰しもがやってしまうことだ。しかし、問題の起きるまでやたらと親切な日本人は、人間の本質的な部分が見えた時、その差が浮き彫りとなる。この点が外国人から誤解を受けやすく、また日本人にしてみれば「やりづらい」面でもある。
ヨランダの主張はもっともであり、外国人の意見としてとても新鮮である。いずれにせよ、“日本人のあり方”を深く考えさせられる出来事であった。