日本人は日本人と結婚するのが一番いい。
そう信じている人は意外と多い。しかし、私はこういった意見を聞くと、徳川幕府の鎖国政策のようなとても閉鎖的な印象を受ける。ヒト・モノ・サービスがめまぐるしく、世界中を行き来する現代で、「日本人と結婚すべき論」はとても時代遅れのような気がする。
とはいっても、日本人と結婚するのが一番いいと唱える人の言い分もわからなくもない。私自身、フランス人と結婚し、こうしてフランスで生活しているが、国際結婚は日本人同士の結婚に比べて“苦労が多い”というのも事実である。フランス語はまだまだ勉強中の身であり、一生フランスでやっていけるだろうか?という不安もある。他にも、彼の家族とはうまく打ち解けられているだろうか?とか、彼に頼りすぎてはいないだろうか?とか、子どもの教育はどうなるのだろか?とか…。不安要素を挙げれば切りがない。
今は私が彼の母国で暮らしているが、2人で日本で暮らしていたころは「彼は日本人の友達とうまくいっているだろうか」、「家族に会えないで寂しくないだろうか」、「外国人という“無力感”を感じてはいないだろうか」と、あれこれ思いを巡らせていたものだ。国際結婚で、2つの国の両方に住むというのは難しい。どちらかは“外国人”として生きなければならない。夫婦2人の母国が違うというのは、それ相応の壁となる。
しかしそれでも、日本人と結婚するのが一番だとは言い切れないのではないというのが私の考えだ。そもそも、「日本人は日本人と結婚するのが一番いい」という、その発想自体がナンセンスだと思う。
私の知る限り、「日本人は日本人と結婚すべきだ」と唱える人は、以下4つの根拠を元にしている場合が多い。
1. 文化、結婚観、家族観などの異なる外国人とはわかりあえないと思うから
2. 言葉の壁があるから
3. 国際結婚は離婚が多いから
4. 自身が国際恋愛or結婚で失敗したから→ 省略
まず、1の「文化、結婚観、家族観などの異なる外国人とはわかりあえない」と考える人だが、この考えの究極は「“異”は理解できない」ということになる。確かに、日本人同士なら文化、家庭、仕事などあらゆる面で似ている。似ているから理解しやすいというのもわかる話だ。だが、本当にそうだろうか?似た者同士だとうまくいくというなら、同じ町で育ち、同じ学校に通い、同じ大学に行った幼馴染との結婚が一番いいということになる。むしろ、根本的に似ているのがいいというなら、同性と結婚すべきだ。外国人という“異”を同じ人間として捉えられないというのであれば、異性も受け入れられないのではないだろうか。男と女という時点ですでに、相手が日本人であっても、外国人と結婚するようなものである。
2の「言葉の壁」は、国際結婚ならではの障害と言える。中には全く会話の出来ない(共通言語のない)カップルもいるが、あれは私にはよくわからない謎なので、ここでは英語なり日本語なりの共通言語があり、意思疎通に問題のないカップルに限定して話をする。
例えば、あなたが何かにムカついていてムスッとしているとしよう。それに感づいた彼が「どうしたの?」と聞く。あなたは「何でもない」と答える。この「何でもない」という言葉のニュアンスを日本人ならうまく感じ取ることができるだろうが、フランス人だと「本当に何でもないんだ」で終わってしまう。言葉の持つ意味は日本語とその他の言語で異なるからだ。
しかし、これは何も国際結婚に限った話ではない。たとえ結婚30年の日本人カップルでも、夫婦2人とも日本語のネイティブスピーカーでも、人間同士のコミュニケーショというのは難しい。日本人同士でも性格が真逆だったら、使う語彙もその意味も変わってしまう。先ほど例に挙げた妻の言う「何でもない」という言葉の意味を旦那は理解し、学習していかなければならないし、その反対もまた然りである。日本人同士でも長い夫婦生活の中でコミュニケーションを怠り、すれ違いが当たり前となってしまえば、相手のことがまるで理解できなくなってしまう。そうなれば、お互い日本語で会話していても、“共通語”では会話していないことになる。
日本語同士だからと、安心しきってしまうのはいかがなものかと思う。例えパートナーが日本人で、あなたのよく知る日本語で会話をしていても、あなたのパートナーの意味することは違うかもしれない。相手の意味することを理解しようとする努力が必要な点では、相手が外国人であっても、日本語以外で会話する場合でも、同じである。
第3に、国際結婚は離婚率が高いからやめた方がいいという人がいる。確かに、国際結婚の難しさはどこでもよく指摘されるし、統計でも簡単に調べられる。それに先ほども述べたように、国際結婚は越えなければならない壁も多い。それがリスクとなり離婚に繋がるのも事実であろう。ただ、実際に国際結婚している者からしてみると、結婚のなかの国際結婚だけを別枠にして離婚率のデータを取ること自体に違和感を感じる。なかでも、○○人との離婚率は〇%といった国別での統計も意味が分からない。自分の伴侶をいつまでも“外国人”として捉えること自体が間違っているのではないだろうか。恋愛や結婚、人間関係において相手を自分とは違うものとしてしか捉えられないのならば、結婚や恋愛はおろか、あなたは日本人以外と付き合わない方がいい。
日本人は日本人と結婚するのが一番いいというのは、間違っている。必ずしもそうだとは言い切れない。
あなたが日本に生まれ、日本で育った100%日本人でも、日本の社会があなたに一番ピッタリくる世界だとは限らないのと同じことだ。
それ以前に、男女であるだけで外国人同士のようなものなのだから。