「海外不適応症」という言葉を知っていますか。これは、言葉の壁や文化の違いからくる生理的・心理的ストレスが引き起こす心因性精神障害のことを言います。
日本ではその実態があまり知られていない「海外不適応症」ですが、症状が深刻な人は心身症などの精神障害、それがさらに昂じると自殺、殺人などへと発展するケースもあるのです。程度に違いはあれど、海外に住む日本人のほとんどがホームシック、カルチャーショックによる心と体の不安を経験しているのではないでしょうか。深刻な心因性精神障害にならないためにも、これから海外で生活する人も、すでに海外で生活している人も、一度は「海外不適応症」について考えてみましょう。そこで今回は、海外不適応症に関するサイトやパリに住む日本人の意見などを参考に、海外不適応症になってしまう理由を6つご紹介します。これに1つでも当てはまる人は要注意です。まずは、できるところから改善を始めてみましょう。
1. 現地の言葉が話せない、理解できない
海外に住む人が共通して抱える悩みが「言葉の壁」です。日本で“英語がペラペラな人”として周りから尊敬されていたような人でも、実際に母国語が英語の人の集団に入ると「一番英語ができない人」になってしまいます。現地の言葉で意思疎通ができればいいですが、そうでない人の場合、普段の生活でも障害が多くなってしまいます。現地の人に英語で話しかけた時に「何言ってるの?」と露骨に嫌な顔をされることも…。裏を返せば、現地の言葉ができればできるほど、「言葉の壁」はなくなり、日常生活におけるストレスは軽減されます。海外でストレスなく快適に生活するためには、やはり現地語の習得が最優先です。
2. 現地で悩みを打ち明けられる友人がいない
「海外で日本人とつるむな!」とは、いろんなところで言われていることですが、長期間(1年以上)海外で生活する場合は積極的に現地に住む日本人と友達になることをおすすめします。海外生活での不安を聞いてもらえるだけでも気持ちは楽になるはずです。それに、海外生活をする日本人というのは大体同じような悩みや不安を抱えているものです。人に話してみることで、「~と思うのは自分だけじゃないんだ!」と気が付き、孤独感が軽減されていくでしょう。「語学を学ばなければならないから日本人とはつるまない」と頑なになってしまっては、ますます海外生活が苦しくなる方向へ追い込んでしまいます。
3. 元々海外生活のモチベーションが低かった
留学やワーホリ、退職後の生活を海外に移したという人は自分の意志で外国を選択しているため、海外生活へのモチベーションがとても高いです。反対に、自分の意志で外国に住むことを決めたわけではない「ご主人付添い型」タイプの人は注意が必要です。現地での目標もこれといってない場合、人生の方向性を見失ってしまいます。ただただ有り余る時間を過ごす毎日になってしまい、うつ状態になりかねません。まずは、心から実現したいと思える夢や目標を見つけること。そうすれば自ずと海外での時間を有意義に過ごせるようになるでしょう。
4. 日本にいる家族や友人に理解してもらえない
海外生活をしているみなさんは経験があるでしょうが、日本に住む日本人に外国暮らしの実情を理解してもらうことはとても難しいことです。なぜなら海外に住んでいるというだけで、順風満帆で優雅な生活を送っているというイメージをもたれてしまうからです。日本にいるころに頻繁に長電話をしていた友人でも、国際電話をかけるとなるとそれなりの理由が必要なのではないか?と変に気をつかってしまったり…。海外で生活をしたことのない人にその実情をあれこれ言葉で説明しても、体験する以外に理解するのは難しいのではないでしょうか。
5. “できない”自分を責める
慣れない海外生活では“できない”ことにたくさんぶつかります。日本では当たり前にできていたことでも、思うようにいかないことが多い海外生活。海外での暮らしというのは、まさに「チャレンジの連続」です。しかし、チャレンジの度に「自分にはこんなこともできないのか」、「こんなこともできない自分はダメなやつだ」と責めていては、海外生活がますます苦しくなるだけです。勝手が違う海外ではできないことが多いのだと割り切って、思うようにいかないことがあっても焦らず、1つ1つできるようになる努力を続けましょう。「今日できない」という1点に集中するのではなく、今日の失敗は「できるようになるまでの通過点」と捉えるようにしましょう。
6. 現地で新しい人間関係が築けない
海外だからこそ、新しい人間関係を築く力が必要になってきます。2で挙げた現地に住む日本人との人間関係を築くことも必要ですが、その土地に適応するためには現地に住む人との交流も必要になってきます。新しい人間関係を築くとはつまり、自分の居場所を築くことだと思います。今現在、現地の人とうまく話せなくて居心地が悪くても構いません。重要なのは相手との人間関係を大切に育んでいこうという意思です。1つ1つの出会いを大切にし、居心地のいい環境を自分でつくりましょう。