ホームジャパン「これだからゆとり世代はダメだ」と言う大人のほうがバカな理由

「これだからゆとり世代はダメだ」と言う大人のほうがバカな理由

 1988年から1996年生まれのゆとり世代が社会で働き始めて数年たった。メールで遅刻の連絡をしてきたり、指示しないと何もしようとしなかったり、上司にタメ口をきくなど、これまでの常識では考えられないようなことを平気でする若者が増えている。このようなゆとり世代の新人教育に頭を悩ませる大人も多い。

 しかし私は、「ゆとり世代はこれだからダメだ」という論調が大嫌いである。ゆとり世代は馬鹿だと批判する大人たちのほうがよっぽど無能に思えるし、問題の本質をはき違えているように感じる。

 ゆとりを批判する大人がダメな一つ目の理由は、「責任転嫁」だ。ゆとり世代は「周囲の人や社会に対する不平不満、批判が多く、問題を人や社会のせいにする」という特徴があると言われている。

 しかし、実際よく考えてみると、ゆとり世代がダメだと言っている大人たちのほうがむしろ責任転嫁をしているのではないだろうか。

 ゆとり教育と言うのは小中学校は2002年度から、高校は2003年度から教育指導要領が変更されて始まったものだ。当然のことながらこのゆとり教育をすすめようと動いたのは当時の政府である。ゆとり世代は当時、選挙権のない子どもなわけだから自分たちで「ゆとりにしてほしい」と名乗り出たわけではなく、戦後から続いた「詰め込み教育」を問題視した大人たちが勝手に決めたことである。

 ゆとり教育に移行したからゆるい若者が増えたという仮定が事実だとして、責めるべきなのは当時子どもだったゆとり世代ではなく、そんな政策を推進した政党に票を入れて、支持をした大人たちである。当時の小泉首相人気に流され、「ゆとり教育を始めたら日本の若者がダメになる」と声をあげなかった大人たちのほうがよっぽど責任は重い。

 政治に関心を持たず、当時のゆとり教育推進を見て見ぬふりをしていた世代の人間が「これだからゆとり世代はだめだ」と批判したところで、それは全くのお門違いだと言える。責任転嫁をする若者を批判する前に、まず当時の自分の責任について考えてみてほしいと思う。自分の責任を放棄して、年下の責任転嫁を責めるのは愚かだと言える。

 第二に、「ゆとり教育のようなゆるいことをやってしまったので常識のない若者が生まれた」という安易な結論付けに疑問がある。果たして、当時のゆとり教育はそれほど影響力をもった改革だったのだろうか。

 「日本」という一つの国の単位でゆとりだの詰め込みだのと論じているが、海外の教育事情から比べてみると日本のゆとり教育はちっとも「ゆとり」とは呼べないのではないか。学習塾に行かないのが普通で、子どもに習い事をさせず、高校受験がないような国は、日本でいうところの「ゆとり教育」の最たるものであるが、これらの国の人たちはみんな常識がなく無能なのか。

 2002年のゆとり教育への移行が、例えば中学校での内申書を廃止したり、国公立高校受験を全面廃止にするなどの変革であれば子どもたちに与える影響力は大きかったであろうが、たかだか従来のカリキュラムから授業時間が2割減ったとか、円周率が3.14から3になったという小さな”変更”だけで、「ゆとり世代ができあがった」というのはあまりにも極論すぎる。

 考え方が甘い若者が増えてきたのはゆとり教育のせいだといえば、事態を簡単に理解できたかのように思えるが、そう思えてしまうところが一番の落とし穴で、安易に「ゆとり教育がダメだったから」と結論付けてしまうのは浅はかだと思う。

 それに、現在の17歳から26歳ゆとり世代に限らず、いつの時代も若者は年長者から見ると「ゆとり」なのではないか。戦争を生き抜いた世代の人から見れば戦争を知らない世代は「ゆとり」だろうし、食べるものに困った時代を生きた人から見ればモノに溢れる時代に生まれた人は「ゆとり」だ。だから、ゆとり世代が生まれるというのは、単に世代交代でしかない。自分が「大人」という括りのなかに入ったことを自覚し、大人の接し方をすることが求められる。

 最近、テレビやネットでは「ゆとり世代はこんなにダメだ」というトピックが面白半分で取り上げられるが、これらを鵜呑みにすることなく、目の前にいる若者と真摯に向き合うことが大人として求められると思う。

 ゆとり、ゆとりと言葉だけが先走ってしまうが、ゆとり世代でも「今時こんな子もいるのね」と感心してしまうくらい常識的でしっかりした人もたくさんいる。反対に、ゆとり世代ではない人でも常識やコミュニケーション能力にかける人がいるのも事実だ。

 「ゆとり世代はこれだからダメだ」という安易な論調に走らず、目の前の若者をいかに成長させることができるかを考え、努力する。少なくともそんな大人でありたいと思うこの頃だ。

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