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帰国子女「日本になじめない…」居場所がなく就職もできない海外子女

ナイロビで育った帰国子女であるUEDAさんが、彼から見た日本と日本人の帰国子女に対する反応などをJapanTimesにまとめていました。両親が日本人である帰国子女は日本に憧れ、日本に来てみるもののなかなか日本社会になじめないと言います。あなたはどう思いますか。

 

私は日本で生まれ、生後3か月でケニアのナイロビに引っ越した。英国のインターナショナルスクールへ通い、英国の大学で心理学を学び、現在はドイツで修士号の勉強をしている。日本の学校に通った経験はない。日本語理解レベルは現地人レベルだが、読み書きはあまりできない。

両親からは日本の習慣や日本人の精神を教わってきた。日本の本を読んでくれたり、日本のテレビ番組や映画などを私が暇な時に観れるよう録画してくれることもあった。しかし、両親が世界30か国の子どもが通う小学校に入学させてくれたおかげで、私は自分のことを「○○国の人」ではなく、「グローバルな国民」として認識するようになった。

 

初めて日本人の子どもと遊んだとき

当時のケニアには日本人の家族が3~4組しかいなかったせいもあって、私は子どもの時からあまり同年代の日本人と触れ合ったことがない。日本に帰国した8歳の夏、母は友だちの子どもと私を会わせて遊ばせる会を開いてくれた。

しかし、すぐに気が付いた。私と日本の子どもには何の共通点もないことを。8歳の夏休みはとても退屈だったと今でも覚えている。一緒に遊ぶよう母に言われた子供たちは誰も私の言うことを理解してくれなかったし、他の子どもがインドアでコンピューターゲームをしているのを横で見ていて、何が面白いのか私には全く理解できなかった。

当時私の小学校ではエイズ施設のチャリティーや飢餓で苦しむ子供たちの支援などを積極的に行っていたが、一方で日本の子どもたちはアフリカがどこなのか地図で指さしできない子が大半。日本の子どもたちが流行りのゲームやテレビの話で盛り上げっているのに、私は会話に参加できず、疎外感を感じたのを覚えている。

私の親せきや日本で会う大人たちはみんな私が2ヶ国語話せることを褒めてくれる。しかし、この「褒める人たち」が一番私のことをよそ者扱いしていることも気づいていた。10代になると、私の帰国子女という生活に興味をもつ同年代の日本人と話すこともあったが、日本人がする質問があまりにも的外れで気まずい思いを何度もした。「木の下で生活しているの?」、「虎を食べたりするの?」と聞かれ、私にとってはあまりにも当たり前なことを聞いてくる日本人にショックを受けたこともある。

 

 帰国子女に対する支援不足

日本へ引っ越そうと思ったことが何度かある。日本の大学に進学しようとしたときは、私の日本語レベルではとても難しいことを知った。仕事で日本へ行こうとした時も、不十分な日本語レベルが不利になってしまった。

最も腹立たしいと思うのは、国の帰国子女に対するサポート不足だ。海外の会社では多国語を話せる人材を高く評価するが、日本の会社は違う。日本企業に与える利益をみすみす逃してしまっているように思う。日本は以前に比べ多くの外国人の受け入れをしているが、見た目が日本人の場合は”外国人”の枠組みではなく”日本人としての規範”に合わせなくてはならない。仕事でもプライベートでも、日本には帰国子女の居場所がないのだ。

 

 去年、日本に行った時のこと

そう思うのには理由がある。去年、日本人ではない友達と東京旅行に行ったときの話だ。両親抜きで東京に行くのは初めてだったので、自分一人でどれだけ日本になじめるかを知りたかったし、とても楽しみにしていた。が、行ってみてがっかり。しばらくは日本に行かなくてもいいと思った。

私たちが道に迷った時のこと。駅のどの出口から出ればいいのかわからなかったので、インフォメーションカウンターで道を訊ねた。窓口の男性はそっけなく、しかし礼儀正しく、「ここから出ればわかります」と指さして教えてくれたが、ぜんぜん場所がわからずにいた。

そこで私はあることを思いついた。見た目が外国人の友達に代わりに道を聞いてもらおうと。すると先ほどのそっけなかった窓口の男性は、わざわざカウンターの外に出て詳しく道を教えているではないか!実際のところ、私の友人のほうが日本語のレベルは上なのだが…。それからと言うもの、私は日本語ではなく英語で質問をして、「外国人」を装うことに決めた。そのほうがずっと親切に対応してくれるからだ。

私は今、イギリスにいる日本人駐在員に英語を教える仕事をしている。イギリスにある日本企業へ履歴書を送ったが、日本語レベル不足が理由で断られてしまった(職場はイギリスで毎日英語で話すのに…)。私が大企業で働く社員なら、きちんと英語を話せて、会社を代表できる人を海外へ派遣するが、日本の会社は日常会話の英語ができない人でも海外へ送る。これが理解できない。日本企業も日本の社会も、得られるはずのチャンスを失っていることに早く気が付いてほしい。もちろん、日本の帰国子女でいられてハッピーで帰国してうまく馴染んでいる人もいるが、そうでない人も多く、日本への帰国を絶望的だと思っている人もいる。帰国子女にも日本で居場所があればと切に思う。

MOMOKO UEDA

参照:JapanTimes

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