フランス料理の名前といえば、「~風」、「~添え」などの言葉が並び、カタカナの羅列でやたらと長いですよね。メニューを広げて、それぞれの料理がどんな食べ物なのか想像できなくて焦ったという経験はありませんか。しかし、フランス料理の名前はわからなくて当然なんです。そこで今回は、本場フランスのレストランでフランス人たちがどのように料理を注文するのかを参考に、「フランス料理名が長い理由」を探ってみたいと思います。
1. 説明することが前提
フランスでもブラッスリー(手軽な飲食店)ではなく、それなりのレストランならサービス係がメニューを持ってきて、そのまま放置されることはまずありません。各テーブルで、メニューに書かれた料理の説明をひとつひとつ丁寧に説明してくれます。「この食材は○○地方でとれる~のような野菜で…」と食材についての説明をしてくれたり、「さくさくのパイの上にフランべしたえびをのせ、その上にカリカリに揚げたオニオンラペをちりばめ、クリーミーな特製ソースで仕上げました」など、調理方法まで教えてくれます。
メニューを見て注文するのではなく、メニューは単なるガイドラインのようなもので、サービス係の説明を聞いてはじめて注文するというのがフランス流。「説明ありき」のメニューなので、どんな料理が出てくるのかわからなくて当然なんです。
2. フランス人でもよくわからない
説明を聞けばわかるかと思いきや、フランス人でもわからないことが少なくありません。凝ったレストランならアフリカや東南アジアの聞いたこともない食材を使用しているので、フランス人もわからなくて当然なのです。
例えば、筆者が最近行ったレストランでは、「Magret de canard en désir d’abeille, duo de salade」という料理がありました。これを日本語に訳すと「ミツバチが欲する鴨フィレ肉のロースト サラダ添え」です。この”ミツバチが欲する”という部分がどういうものなのか謎ですよね。
他にも歴史的な出来事を料理名に盛り込んだり、あえて外国名のまま起用したり、お店によって様々です。これは、メニューにある料理名もお店のクリエイティビティ(創造性)を表現するひとつの手法だから。料理名を見て、お店の人の説明を聞き、「他では味わえない一品を食べよう」とフランス人のお客さんは決めます。レストラン側が自由に決定する料理名はお店のブランディングとオリジナリティをアピールする大切な要素なのです。
3. 質問しましょう
食事にかける時間が世界で一番長いフランス人は、レストランにいる時間もとても長いです。「食事中せかせかしない」というのがフレンチの一番大切な作法だというフランス人も少なくありません。そのため、メニューを広げてから料理を注文するまでの時間も日本人に比べると長いです。
「何を食べるか決める時間」も食事の一部であり、メニューを広げてサービス係と料理についての相談をする時間も貪欲に楽しもうとします。「今日のおすすめは?」、「アントレ(前菜)とプラ(メイン)を頼んだら量は多い?」、「サービスのあなたが好きな料理は?」、「この食材って何ですか?」…などなど。きちんとしたレストランなら、お客さんが注文するときの時間をたっぷりととってくれます。また、サービス係のほうも食事が始まる前にお客さんとコミュニケーションをとるように教育されます。
だから、フランス料理のメニューはわからなくて当然なのです。「お客さんにはわからない」ことを前提につくられているからです。ですので、長いカタカナが並んだフランス料理の名前に気後れする必要はありません。サービス係に質問し、コミュニケーションをとって、レストランのコンセプトやオリジナリティを存分に楽しみましょう。