ホームハウツー海外生活のホームシックを“克服する方法”なんてありません。

海外生活のホームシックを“克服する方法”なんてありません。

今となっては、「フランスに移住を決めてよかった」と思えるようになった筆者だが、こう思えるようになるまでには4年ほどかかった。これまでやはり心のどこかで「一生フランスで暮らすことの不安」はあったし、フランス語を学んで流暢に話せるようになってしまったら、一生日本では暮らせないのではないかと思って勉強を嫌がった時期もある。

日本人に「これからもずっとフランスで暮らしていくつもりなの?」と聞かれれば、灰色の曇りが胸の中に広がるような気持ちになったし、フェイスブックを見れば、家族や友人の時間が“自分抜き”で流れていることに気がついて切なくなった。結婚式やお葬式など、日本にいる大切な人の人生の「大切な時間」に立ち会えない悲しさと、フランスにいて、いつまでたっても周りに頼りきりで自立できていない焦りに押しつぶされそうになったことも何度もあった。

幸い、今ではそんな感情はないし、ここまで頑張ってこられて、乗り越えることができて本当に良かったと思っているが、今振り返ってみても、こちらでの生活をあきらめる選択をするか否かは紙一重だったように思う。

「海外不適応の悩み」と一言で言っても、その中身は様々だが、海外留学やワーホリなどの滞在期間が最初から決まっている人と、国際結婚や海外就職などで海外に行った人ではストレスの度合いが全然違うように思う。

後者の海外在住者が抱える悩みは「この苦しみがいつまで続いてしまうのだろう」という悩みであり、お先真っ暗のように思えて、とても暗い気持ちになるものだ。この先もずっとこの苦しい状態が続いてしまうのではないかという漠然とした不安が、海外在住期間が限定されていない日本人の一番辛い悩みではないだろうか。

筆者はこの悩みのループにはまったときは、いつもこんな考えが頭の中にぐるぐるとまわっていた。

いつになったら、フランス語がネイティブのように話せるようになるんだろう。
いつになったら、フランス人の話すフランス語を100%理解できるようになるんだろう。
いつになったら、フランス人の集まりを楽しめるようになるんだろう。
いつになったら、“日本に帰りたい”と思わなくなれるのだろう。
いつになったら、自分に自信が持て、フランスを“自分の居場所”だと受け入れることができるだろう。
いつになったら、こんな孤独やストレスから開放されるのだろう…。

そんなことを考えては焦り、「こんなんじゃダメ」だと自分を戒めたり、「やっぱり私はダメな人間だ」と情けない気持ちになったりを繰り返してきた。そして、それを何度も繰り返しているうちに、気がついたらいつのまにかこんなことを考えないようになっていた。

今、この状態にいる海外在住者に「どうやって乗り越えたのですか?」と聞かれたら、正直どうこたえていいかわからない。これをしたら乗り越えられるというような小手先の方法やテクニックでどうにかできることではないと思うからだ。

しかし、克服方法をあえて言うなら、“あきらめなかったこと”ではないかと思う。

今、日本に帰りたくてしょうがない人や、海外不適応の辛さが老後まで続くのではないかと不安になっている人は、「どうなれば自分は幸せなのか」をもう一度整理して考えてみるといい。

「海外に適応でき、自信をもてて生活できている自分」が無条件で明日やってくるとしたら、それを手に入れたいだろうか。「海外にいる幸せな自分になりたい」と思っているかどうかを自分に聞いてみよう。日本に帰るか否かの選択になって、帰国を思いとどませる要素は「海外のほうが幸せになれる」と信じられるかどうかではないかと思う。

もしそうではなく、日本で他にやりたいことがあるのなら、日本に帰ったほうがいい。日本のほうが幸せになれると心から思うなら、海外にいる時間はむしろ勿体無い。さっさと、できるだけ早く日本に帰ったほうがいいと思う。

しかし、日本に帰りたい理由が、「今の苦しみから逃れたい」という“逃げ”ならば、海外でもう少し頑張ってみてはどうだろうか。今いる国へやってきた時の“ここで頑張ろう”という気持ちが本物なら、あと少し頑張れ。

あと1日、あと1日頑張ろうと踏ん張っていれば、そのうち踏ん張らなくてもよくなる日がくるから。

日本の将棋棋士、羽生善治の名言にこのようなものがある。

成果が出ないときこそ、不安がらずに、恐れずに、迷わずに
一歩一歩進めるかどうかが成長の分岐点であると考えています。

成果がないように思えても、すぐに日本に逃げるな。負けそうになっても、あと1日頑張ってみよう。

すぐにできなくてもいい。一歩一歩、前に進めればいい。

日本に帰るかどうかという「人生の分岐点」に立ったら、楽なほうに逃げるのではなく、あえて困難な道を選ぶ人になろう。

写真:csilladuray

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