ホームジャパンフランス人が日本を一言で表すと、「コントラストの強い国」らしい

フランス人が日本を一言で表すと、「コントラストの強い国」らしい

去年の大晦日のことだ。

クリスマス休暇で旦那の実家があるフランスの地方から、パリへ戻ってきた。お正月はできるだけ日本らしくようと、日本食品スーパーで正月用品を買い込み、サンタンヌ通り(パリの日本街)で年越しそばを食べることにした。一軒のそば屋に入ってしばらくすると、「日本流お正月」と聞いて、期待と妄想を膨らませていたフランス人の旦那が言った。

もしかして大晦日の食事って、これで終わり?

大晦日の日は朝からお節料理の支度や大掃除で忙しく、食事は簡単に出前を頼んだり、年越しそばをかきこむという人も少なくないだろう。日本人にとっては”フツー”な大晦日の過ごし方だが、フランス人にとってはちょっと物寂しいそうだ。

というのも、フランスでの大晦日と言えば、日本のクリスマスのようなもので、カップルで過ごす特別な日なのだ。レストランの予約を取って、いつもよりちょっと高級な食事をし、カウントダウンに出かける。なるほど、そんな派手で特別感のある大晦日を過ごすのが当たり前だと思っているフランス人には、簡単にそば屋で年越しそばをかきこむという日本スタイルの大晦日は地味に映るだろう。「なんか日本の大晦日って、適当だなぁ。」と、がっかりしてしまう彼の気持ちもわからなくはない。

すると今度は何を思ったか、急にレンゲをまじまじと眺め始めた。

フランス人が日本を一言で表すと、「コントラストの強い国」らしい

それは、そばのお椀のなかで、すべらないようにフックがついているレンゲだった。興奮した様子で、フランス人は言う。

こういう細かい所への気遣いが、日本っぽいよね。よくこんなところまで考えたなって、感心するよ。」

フランス人らしく、お得意の持論を展開していく。彼曰く、日本は”コントラストの強い国”らしい。
伝統とモダン、厳格さと寛容さ、きっちりと適当…。日本はギャップが多い国だ。

京都に行けば、着物を着た舞妓さんを目にする。タイムスリップしたかのような伝統的な情景を目にしたかと思えば、すぐ隣にはコンビニエンスストア。スマホを触る子どもに、しゃべるエスカレーター。

人を見ていてもそうだ。電車の中ではきっちり七三分けにしたサラリーマンの横に、髪の毛を金髪に染めた大学生が座る。子どもはみんな制服を着て、大人はスーツを着ているのに、その中間の大学生の服装と言えば、世界で一番奇抜で、自由だ。一見すると日本人は服装や身なりに厳しいようだが、きゃりーぱみゅぱみゅのような原宿系もいれば、つけまつげをばたつかせたギャル系もいる。これだけ見た目や服装で自己表現をする人は、日本以外ではあまり見られない。

言葉も同じである。目上に対しての言葉遣いや敬語のルールは杓子定規的に厳格であるにも関わらず、日本語は言語としては非常に曖昧である。主語を省略し、時制も現在と過去の2種類しかない。~みたいな、~なくない?、てゆうか、なんか…という、曖昧言葉も、他の言語に比べ日本語にはたくさんある。

それでいて価値観は固い。先進国のなかでも女性の社会進出が遅れているし、同性愛者の結婚も認めていない。高度成長期に生まれた企業文化は現在も顕在で、過労死問題は未だに解決されたとはいえない。選挙権が18歳からになったのもごく最近のことだ。

このような面だけ見ると、日本はとても保守的な国の印象を受けるが、実際はそうでもない。あるフランス人は日本のネットカフェを見て、「日本は進歩的」だと言った。「フランスならネットカフェなんて作ったら、オタクだとか暗いとか言われて、批判されてしまうよ」と。

非保守的な部分は他にもある。クリスマスにバレンタイン、最近はハロウィーンなど、欧米文化を抵抗感なく受け入れる。良いと思った新しいものに対しては、非常に寛容な国だ。外国人の数は少ないのに、おいしい外国の料理を食べられる店が多いのはこのためだろう。

日本はコントラストの強い国。
これはなかなか、良い得て妙な表現なのかもしれない。

忙しい大晦日にかきこむ年越しそばと、フックのついた滑らないレンゲ。

そば一杯に、日本の文化が詰まっている。

 

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