2年前の夏、初めてタイに行った。プーケット →チェンマイ →バンコクを約1カ月かけてまわってみた。
素朴でフレンドリーなタイ人の性格には本当に癒されたのだが、一つだけどうにも不愉快な点があった。それは、初老の白人男性と若いタイ人女性のカップルをよく目にしたことだ。
自分の国では女性に相手にもされなさそうな初老の白人男性が、我が物顔で鼻の下を伸ばしながらタイ人女性の腰に手をまわす。金さえあれば女を買える!とでも言いたげなふてぶてしさと、太ってだらしない体、剥げかけて散らかった頭、熱っぽい汗、いやらしい目つき…。その全てが気持ち悪くて、傍から見ているだけで、とても不快だった。
タイ人女性のほうも同類だ。パンツが見えそうなくらい短いスカートを履いて腰をフリフリし、白人オヤジたちの首に腕を回して、上目遣いで媚びを売る。明らかにカッコ悪いオヤジを前に、にゃにゃにゃ~ん♪と甘えた猫のように接する彼女たちを見ていると、「白人なら誰でもいいのかよ!」、「あんたらに自尊心はないの?」と、正直、同じ女として蔑む気持ちになった。
タイには旦那(フランス人)と来てたから、年齢も国籍も違うが、広い意味では私たちも「白人男性×アジア人女性」カップルなわけで、それはそれは嫌な気持ちになったのだ。
しかし、この初老の白人男性と若いタイ人女性のカップルの現実と行く末は、本当はとっても悲しい。それを教えてくれるフランスのドキュメンタリーをユーチューブで見つけたので、今回はそれを紹介しようと思う。
Pourquoi il ne faut pas marier une asiatique – documentaire émouvant
なぜアジア人女性と結婚するべきではないのか -心動かすドキュメンタリー

彼の名前はエドワード。イギリス人の46歳。43歳で離婚し、独身生活が始まった。彼いわく、この年齢になると女性との出会いは絶望的で、3人の子どもの母親とか、痛い歴史をもった女性くらいしか出会えないと言う。
そんななか、彼はタイへ行った。若くてきれいなタイの独身女性が、自分にとても優しくしてくれた。みんな、「自分と一緒にいたい」と態度で示してくれる。1週間タイで遊び、ある日彼はお気に入りの女性を見つける。

それが彼女、チップだ。友達と外国人男性を探すために寄ったホテルのバーで、エドワードと出会ったそうだ。目が合い、微笑みあう2人。お酒を飲み、会話をし、エドワードがそろそろホテルに帰ろうとしたとき、チップは言った。
「私の家は遠いの。今夜、一緒にいてもいい?」
こんなことから一夜をともにした二人。エドワードは誰かが自分のそばにいてくれることが、とても嬉しかったという。それから二人は一緒に生活し始め、エドワードは彼女に「君の面倒を見てあげるよ」と言った。彼はますます彼女と一緒にいるのが心地よく感じ始める。

初めてチップがエドワードの部屋に来たとき、トイレに入って、彼は思った。「僕がトイレに行っている間に、彼女は財布を持っていなくなっているかもしれない」と。しかし、実際はそんなことはなく、その後お金をわざと見えるようにおいていても盗られることはなかった。次第にエドワードは彼女のことを信用するようになる。
それよりむしろ、タイではお金の管理は彼女に任せておいたほうが得だと、だんだん思うようになった。安くて質のいいお店に連れて行ってくれるし、旅費の節約にもなった。次第に彼女に支払いを任せるようになり、最終的には、彼女がエドワードの財布を管理するようになった。
そんなタイ旅行で彼女と5週間過ごしたのち、エドワードはイギリスへ帰国する。
遠距離恋愛スタート

エドワードはイギリスに帰った瞬間から、現実に引き戻された。男女の出会いの場へ足を運んでみても、自分が害毒をまき散らすような存在に思え、老いすぎてしまっていることに気が付くだけだった。彼はますます、もう一度タイに行って彼女に会いたいと願うようになる。
その頃、チップはと言うと、夜の仕事を辞め、実家の農家で働くようになっていた。子育てに必要なお金をエドワードからもらう。エドワードいわく、送金した額は大した金額ではなかったらしい。毎日電話で話し、2人の仲は縮まっていく。彼女からタイでの毎日の暮らしぶりを電話で聞くうちに、エドワードは「もうイギリスにはいられない、タイに行きたい!」と思ったのだそうだ。その頃の彼の心境は、彼女にとても必要とされていて、自分が彼女たちの家族を支えて守っていくんだ、という騎士にでもなったかのような気分だったという。
チップさんの過去

父親を18歳、母親を27歳で失くした彼女。娘を生み、その父親と離婚した後、バンコクへ出稼ぎに行った。プラスティック工場で働き始めたのだが、給料は1日4ドル程度だった。
毎月、娘への養育費として40ドル送金していた。自分の食費と生活費としては、月に80ドル。この生活を2年続けたが、このままの生活していてはいつまでたっても貯金はできないし、娘を大学に行かせることもできないと気が付く。そして、彼女は夜の世界へ足を踏み入れるのである。
知り合いにバーを紹介してもらい、そこで働き始める。「稼げて、外国人男性に出会える仕事だ」と紹介されたそうだ。夜の仕事をしている女性は、何も全員がお金のために働いているわけではないらしい。なかには、生活の面倒をみることのできる男性との出会いを求めて働いている女性もいるのだとか。

彼女の親友であるミントさんはインタビューにこう答えている。
「外国人はみんなお金持ち。だから私も外国人の彼がほしいの。タイ人は長時間過酷な労働をしても、お金がない。それに比べて外国人は、ちょっとしか働かなくていいのにたくさんのお金を稼げる。私はタイでよく見かける初老の白人男性が羨ましいわ。外国人が羨ましい。」
彼女たちはなぜ、夜の世界で働くのか。それは、自分の子どもの将来のためである。チップさんの願いはただ一つ、娘が自分と同じような人生を歩むことなく、幸せな人生を歩んでもらうこと。
しかしそれには、お金がかかる。
彼女がバーで働くのは、娘の将来のために必要なお金を稼ぐ手段であり、もし娘が同じ仕事をしたいと言い出したら全力で否定すると語っている。
再び始まった同棲生活
そんな彼女に必要とされ、求められていると感じたエドワードは、再びタイへ入国する。目的はただ一つ、彼女を助けることだ。しかし、この時の自分を後に振り返ってみると、「網にかけられた魚」のようだったとエドワードは語っている。
彼女に再会して、彼は驚いた。華やかな夜の世界から離れ、タイのド田舎に連れていかれる。次の日、目を覚ますと麦わら帽子をかぶった農民が田んぼで米の収穫をしている姿を目にする。そして、彼は思う。
「俺はこんなところで何やっているんだ」

そんな彼の心境とは裏腹に、タイ式の結婚式が行われた。エドワードはこれまでプロポーズもはっきりはしなかったし、結婚をほのめかすこともなかったのだが、いつの間にか自分たちの結婚式を開かれたという。
タイ式の結婚式は、欧米とは全く異なっている。結婚に必要なのは、豚の頭と、全財産やクレジットカードを入れた籠(後で回収できる)。村長がやってきて、みんなで食事をする。みんなで飲んで、食べ、何もかもがあっという間に過ぎていき、まるで夢のようだ。
そして、昼の12時になり、そこで結婚式終了。全員が仕事場に戻った。結婚したことになった。
その後は、チップさんの実家で、彼女の娘と、姉、兄などと生活するようになった。仕事はどうするかという話になり、チップは豚の生産農家になろうと提案する。その日から彼は朝の6時に起床し、豚の飼育を始めた。
エドワードはイギリスで2年前に不動産を売却していたので、その分の財産があった。それら全てを現金化し、タイで仲良く夫婦として生活を始めるようになる。

彼はタイで自分の銀行口座を開くことも出来たが、チップと結婚して夫婦になったことだし、これまでにお金のことでは彼女を信用していたので、彼女に財産の管理を任せることにした。彼がもっていた全財産を、彼女に渡したのである。
しかし、その頃からお小遣いすら貰いにくくなるという関係が始まった。バイクのガソリン代すら貰うのに苦労したそうだ。他にも、テレビのことで喧嘩になった。エドワードはイギリスの有料テレビチャンネルを申し込みたいと言ったのだが、チップはそれに反対する。そんな話すら聞きたくないという態度だ。
エドワード、家を買う
チップの実家のある田舎町Ban Krasangは、のどかで平和だが、エドワードにとっては死ぬほど退屈だった。そんな生活をしている欧米人なんて自分だけだと思っていたが、バイクで中心街に出かけたある日、自分と似た状況にいる男性がいることを知った。

彼らはチケット売りなどの仕事をしている。しかし、当然ながら物価は欧米諸国の五分の一。家は1軒200万円程度。彼らのような初老の白人男性は毎週新入りがやってくるらしい。ノルウェー人、オランダ人、ドイツ人、イギリス人、スコットランド人…。長くタイに残る人もいれば、すぐに国に帰ってしまう人もいるそうだ。
しかし、エドワードは自分の財産を有効活用するために、タイで家を建てた。
外国人はタイに来れば、物価があまりにも安いので、いつまでもお金がなくならないような気がしてしまうのだとか。そして、そんな幸せな生活がいつまでも続くと信じてしまう。しかし現実は、お金が尽きる。
タイのバンコクには「No Money No Honey 」と書かれたTシャツがお土産として売られているが、こんな冗談みたいな状況が現実として襲ってくるのだ。
タイでは、外国人は家主になれない。だから、白人男性が建てた家の名義は、タイの奥さんのものとなる。そして、家が出来上がったら、それでさようならというケースも珍しくないそうだ。

エドワードもその一人だった。エドワードの家がもう少しで完成という頃になって、チップの態度が変わり始めた。チップが自分を憎んだり、怒ったり、嫌いになったり…というのならわかる。しかし、彼女はひっくり返したように態度が変わったのだ。
問題は、「彼女がすること」ではなくて、「彼女がしないこと」である。彼女は自分の生活や仕事に集中するようになり、彼の気持ちを全く顧みようとしない。彼女は毎朝6時に起き、夜中の2時までミシンで縫い仕事をする。
エドワードはと言うと、インターネットの繋がらないパソコンでDVDを見て、暇を持て余す。農場をウロウロして、ハンモックに横になり、どうしたらビールを貰えるかプランを立てる。
文化の違いと、すれ違い

チップは彼をこんな風に表現している。
「彼はいつもしゃべってばっかりよ。彼は本当によくしゃべる。私はおしゃべりは好きじゃないし、落ち着いた静寂の中にいるのが好きなのに。」
エドワード:
「自分の立場がひっくり返ったと実感したのは、彼女が自分の存在を全く有り難いと感じていないことに気がついた時だ。今更、愛なんてなくてもいい。でも彼女は、僕に対して全く愛情がなかったんだ。僕たちがこれまでに一緒にしてきたことすべてが、彼女にとっては”ゴミ”でしかない。僕がいないほうが、彼女は幸せなんだと思ったよ。」
チップ:
「エドワードがタイに来たとき、彼は全く働く気なんてなかった。周りの人には、今のままではダメだ、長続きしないと言われました。彼は一日じゅう何もしないから。周りの人からは、エドワードの財産が底をついたら、自分の国に帰らなくちゃいけなくなって、彼はどこにも行くところがなくなるわよと言われました。」
エドワード:
「チップは昔、愛についてよく語っていました。でも今では、愛だけでは食べていけないと言います。」
チップ:
「エドワードは”チップ、愛してるよ~”って言うけど、あなたの愛は食べられないわ!って感じよ。あなたのくそみたいな愛では、栄養が満たされるわけではないのよ。」
エドワードは気がついた。タイで彼女とずっと一緒に生活していくこともできるが、それは本当の夫婦関係ではないことに。家族を養っていくことはできるけど、人として、人間として、個人として、侮辱され続けるのだなぁと。
エドワードとチップはついに、別れを迎えるのである。
その後のエドワード

そして、現在。
「僕は全てを失った。イギリスに帰っても、イギリスにも何もない。持っているもの全てをタイへ来るために売ってしまったからだ。僕のタイの元奥さんは、家があり、農場があり、バイクもあるが、僕には何も残されていない。イギリスには友達がいるけど、彼らには彼らの生活があるから、とてもじゃないが頼れない。両親も兄弟も、この世に家族と呼べる人とのつながりもない。とても怖い。」
その後のチップ

「エドワードと結婚して、生活はよくなったわ。前は姉の家に居候させてもらっていたけど、今は自分の家がある。暮らしは楽になった。愛のために結婚する女性もいるけど、お金のために結婚する人もいるわ。そして私たちタイ人はとても貧しいから、よりいい暮らしをするためだったら何だってするの。結婚して、幸せになって、生活していくため、十分に食べていくためのお金を得る。」
おわりに
動画の最後では、エドワードが帰りの飛行機代をチップにもらいに行く交渉に行き、そこで彼は「必ずまた戻ってくる」と約束する。それに対し、チップは「バイバイ、永遠に」と答える。エドワードは50歳の誕生日を迎え、一文無しになった彼がイギリスに帰るところで、このドキュメンタリーは終わる。
マダムリリーがタイに行ってはじめて初老の白人男×尻軽タイ人女のカップルを見た時、単純に軽蔑した目で見てしまったが、このストーリーを見て、そんな自分を反省した。
「騙されるバカな白人のおじさんと、冷酷なタイ人女性」というように、安易には片づけらない事情がある。
おかしいとは思いつつ、女性が自分のそばにいてくれることが嬉しくて、現実感を失ってしまった男性の心境も痛々しいし、「よりいい生活をするためなら何でもする」という結論に至らせた彼女の苦労を思うと、またこれも胸が痛い。
もちろん、白人とタイ人のカップルはみんなこうなるというわけではないし、幸せに仲良く暮らしているカップルはたくさんいる。しかし、あまりにも生きている世界が違いすぎる2人が、価値観を互いに合わせて行き、愛し合って生活していくと言うのは生半可なことではないのだと思った。
あなたは、このストーリーをどう思うだろうか?
