ホームニュース過労死する考え方「好きなことを仕事にすれば苦痛にならない」

過労死する考え方「好きなことを仕事にすれば苦痛にならない」

2016年10月7日、三田労働基準監督署は元電通社員 高橋まつりさん(享年24歳)の自殺について、これを過労死と認定した。彼女はSNSを通して、何度も「仕事が辛い」、「死んでしまいたい」と、その苦悩を打ち明けている。なぜ彼女のように、自ら命を絶つまで、精神的に追い込まれてしまう人が後を絶たないのだろうか。

それは、よく自己啓発本などに書いてある、「好きなこと&やりたいことを仕事にしていれば楽しくて、苦にならない」という理想論の押しつけにあるのではないかと思う。

ある心理カウンセラーはこんな風に言っていた。

「フランス人は、どうやら年に有給休暇が5週間あるそうなんですよね。で、フランスでは1カ月のバカンスのために11カ月働く、と考えているらしいんですよ。つまり、仕事っていうのは辛く苦しいもので、休暇のために全てをやっているという考え方なんです。

こういう話を聴いたら、日本人のみんなは羨ましいと思うだろうし、僕も以前はそう思っていたんですけど、でも今の僕は、長期休暇をとるよりも仕事している方が楽しい。僕は講演会やブログを書いている方が楽しいし、そんなに長期の休暇にこだわらなくてもいいと思うようになった。」

この話を聞いて、同意見だという人もいるだろう。嫌な仕事を一生続けるくらいなら、誰だって楽しい仕事がしたい。そのためには、自分の好きなことを仕事にしよう!というのもわかる。

しかし、この論調が怖いのは、「仕事に苦痛を感じる人がダメ」、「仕事が楽しくないのは能力が低いから」というように、自分を責めて精神的に追い込んでいくような論調に結び付いてしまう点である。

好きでやっている仕事、自分でやると決めた仕事なのに、楽しくない。辛い。
こんな風に思う自分がダメなんだ、こんな自分には生きている意味はない、死にたい…。

こんな考え方が、真面目で、意識高い系の優秀な人を過労死へと追い込む

好きなことを仕事にしていれば、楽しくて苦痛を感じないなんて、嘘だ。そんな人間もいるかもしれないが、それはごくわずかなラッキーな人に限られているだろうし、みんながみんな自発的に「休みよりも仕事を優先させたい」と思うようにならなくて、当然だと思う。

仕事はお金を稼ぐためだと割り切って、日々のやらなくてはいけない業務をこなす。仕事が楽しいと感じていなくても、こんな生き方をする大人を、筆者は立派だと思う。

仕事が楽しいと思う瞬間もたまにはあるが、ほとんどが面倒だったり、つまらない業務だ。仕事とは、「楽しいことばかりではない」というのが大半の人の感覚ではないだろうか。それを、自己啓発のためだとか、好きなことを仕事にしているのだから休みなしでもいいとか、そんな理想論を押しつけるのには無理がある。もっといえば、景気が良かったバブル期までで終わりにすべきだった古い考え方だと思う。

しかし、それなら仕事が辛かったらすぐに辞めてもいいかというと、そういうわけでもない。近年、入社3年以内に会社を辞める新入社員が3割になったと言われている。こんなに早く仕事を辞めてしまってはスキルは何一つ身につかないし、長年続けてみて初めて経験できる「仕事の面白さ」だってあるだろう。

それに、仕事以外の時間に、キャリアアップのために勉強することも大切だと思う。休みの日にまで、仕事のための勉強をしようと思えるモチベーションを持つためには、やはり大前提として「好きなことを仕事にする」ほうがいい。

しかし、好きなことだから苦にならない、好きな仕事だから休みがなくてもいいというのは間違っている。そんな人もいるが、そうではない人もいる。

仕事に対する考え方、価値観の多様性を社会が認めていかない限り、いつまでたっても過労死はなくならないだろう。

好きなこと、やりたいことが仕事。仕事をしているのが楽しい。休みがなくても構わない。

そんな考え方も良し。

仕事はお金を稼ぐための手段。家族を養うため、海外旅行に行くため、趣味に使えるお金を貯めるために働く。

そんな価値観も大いにありだ。

仕事が好きじゃなくたっていい。仕事が楽しくなくたっていい。お金のために割り切って仕事したっていい。

仕事に対する考え方は人それぞれ。

あなたは、仕事の考え方を人に押し付けていませんか?

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