「セックスをしない日本の若者たち」は海外のメディアで、度々話題になる。それらの記事のどれもが、「若者の恋愛離れ&セックス離れが少子高齢化と人口減少の原因になっている」という結論で締めくくられているが、これは本当なのだろうか?
そこで今回は、世界のメディアで伝えられる「日本人のセックスレス」について疑問を抱いた日本人ブロガーのYuta Aokiさんが書いた記事がとても興味深かったので、ここで紹介しようと思う。あなたは海外のメディアが伝える「日本」にどのような印象を持っていますか?
誤解1 :セックスレス=低い出生率
海外のメディアでは、日本人のセックスレスと出生率を関連付けて捉える記事が多い。つまり、日本の若者がセックスに対する興味関心を失い、その結果として少子化が深刻な状況に陥っているというものだ。
しかし、実際に詳しく調べてみると、セックスの頻度と出生率には相関性がないことがわかる。
上のグラフは、縦軸出生率、横軸がセックスの頻度(1年に何回するか)を国別で示したものである(世界一のコンドームブランドDurex社調査より作成)。これを見てもわかるように、セックスの頻度が多いからと言って、必ずしも出生率の上昇に結び付いているわけではない。
ギリシャ(Greece)やクロアチア(Croatia)、ブルガリア(Bulgaria)などの国では、セックスの頻度は大いにも関わらず、出生率は日本と変わらない。調査国のほとんどの国が、年に 80-120回の頻度だと回答しているが、生まれる子供の数は国によって様々だ。
実際には、セックスの回数が出生率に結び付くのではなく、どれだけ避妊しているかによるところが大きいし、たった1回のセックスで子どもができる場合だって大いにある。だから、セックスレスと出生率の低さは別ものとして捉えたほうが良い。海外のメディアはこの2つを混同して書かれたものが多いため、日本の社会問題を間違った形で伝えてしまっている。日本の出生率の低さの原因は、セックスレスのような単純なものではなく、より複雑な課題点を含んでいるのだ。
誤解2: 出生率の低さは日本特有の問題
少子化問題はなにも日本特有の問題ではない。世界のメディアでもそのように伝えているものもあるが、なかには「日本の出生率の低さは異常だ」という書き方をしているものもある。
例えば、英紙『 the Guardian』の記者、ジャスティン・マッカリー氏は同紙で、日本人女性はマッチングサイトなどを利用して、一時的なセックスフレンドを探していると書いた。この記事の書き出しは、「2003年の日本の合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の平均数)は1.29であり、この数字は世界で最も低い」であった。彼はさらに、高学歴の女性は出生率が低いという傾向が強いと付け加えている。
このグラフは、縦軸が出生率、横軸がIQスコアを示している。世界的なトレンドとしてIQが高い国ほど、出生率が低くなっていることがわかる。この事実から照らし合わせてみると、日本は必ずしも出生率が低いというわけでもないのではないだろうか。日本は単に世界のトレンドをフォローしているに過ぎず、シンガポールやキューバなどのほうが”特異”ではないか。
誤解3: 長い労働時間がセックスレスの原因
海外のメディアで度々話題になる日本の社会問題ひとつに、「過労死」がある。日本の労働環境は過酷で、長い労働時間がセックスレスの原因に結び付いているのではないかと推測するメディアは多い。また、日本で働いたことのある外国人の意見がしばしば取り上げられることがある。ある外国人はFacebookでこのように語っている。
「 the Guardian の記事では、日本のセックスレスの問題が民族的・文化的な問題だとしてあげられていたけど、そうではないと思う。本当は、”働きすぎ”が問題なんだよ。」
しかし、実際には長時間労働とセックスレスには相関性がない。
このグラフは縦軸がセックスの頻度、横軸が労働者一人あたりの年間平均労働時間である。
このグラフでは、どの国も大体同じような位置に集まっている。例外として、日本が他の国に比べて圧倒的にセックスの回数が少ない。また、ギリシャは労働時間も長いが同時にセックスの頻度も多いという結果になっている。他の国でも、労働時間が長くなるほどセックスの回数が減るという相関性は見られない。
しかし、この統計はフルタイムで働く人のみを統計に加えたわけではなく、パートタイムやアルバイトも数に加えられており、サービス残業などは換算されていないため、実際には「長時間労働とセックスレスには相関性がない」とは言い切れないのではないかという意見もある。
誤解4: ゆっくりとした経済成長がセックスレスの原因
東京で活動するBloombergのコラムニストであるWilliam Pesekは、こう断言している。
「日本人のセックスレスのルーツは、文化にあるのではなく、経済にある。文化が障壁になっているのではなく、経済の見通しに不安を抱いているため、一生のパートナーを探すような伝統的な人間関係を割けるようになってしまったのが、本当の問題なのである。」
しかし実際には、経済成長の度合いとセックスの頻度には相関性がない。
このグラフは縦軸がセックスの頻度、横軸が国内総生産(GDP)成長率である。このグラフを見ると、経済成長が低いとセックスの頻度が減るというわけではないとわかる。
確かに、日本の景気動向にセンシティブな人もいるが、この場合は「なぜ日本人だけがセックスレスに繋がるのか」を明記しないと、説明したことにはならない。
誤解5: 女性の社会進出がセックスレスにつながった
これも間違いだ。日本人女性が昔よりも比較的強くなり、男性を萎縮させ、結果としてセックスレスにつながったという見方をするメディアもある。the Guardianの記者、Roland Keltsは、「日本女性が社会的&経済的に強い立場となり始めた時期から、現実の女性よりも2次元の世界にはまる日本の男性が増えた」としている。
しかしながら、ジェンダーギャップとセックスの頻度には相関性がない。
女性が社会に進出するようになったからと言って、それがセックスレスに繋がるというわけではない。自立したタフな女性に圧倒されてしまう男性もいれば、そんな女性たちを魅力的に捉える男性もいる。以前に比べ、日本人女性のほうも、自分の性欲を表現しやすい時代になったとも言える。だから、セックスレスと女性の社会進出を関連付けて考えるのには無理がある。
まとめ 日本人がセックスレスで何が悪いの?
このように、海外のメディアでは日本のセックスレスと、出生率の低さを関連付けるものが多いが、実際には関連性がないことがわかった。さも、日本人のセックスレスが悪いことだと世界は伝えているが、「そんなことないんじゃないの?」というのが、Yutaさんの結論である(マダムリリーもそう思う)。
Yutaさんの記事では、セックスの頻度と自殺率にも関連性はないし、セックスの頻度と満足感にも関連性がないと紹介している。他にも、彼の記事ではより詳しくデータ元なども紹介しているので、興味がある人はぜひチェックしてみてほしい。
あなたは日本人のセックスレスについて、どう思いますか?
参照:yutaaoki.com