NHKの世論調査で、日本ではフランスのパリで起きたような大規模テロに対して、備えができていると思うか尋ねたところ、「備えができている」と答えた人が20%だったのに対し、「備えができていない」と答えた人は70%を超えた。どうやら大多数の日本人の見解では、「日本はテロ対策ができていない国」ということらしい。
日本経済新聞電子版の調査によると、日本あるいは日本人がテロの標的になると思うかどうか聞いたところ、回答者1,043人のうちの9割が「思う」と答えた。
要するに、日本人は「日本でテロが起きるだろうけど、備えができていない」と考えている人が最も多いようである。
日本が今後、ISISのテロ被害に遭う可能性があるのかどうかは別として、仮にパリで起きたような大規模テロに日本が対抗するとすれば、日本人の気質はテロに強いのだろうか。そこで今回は、フランスのテロ対策を見てきたパリ在住の筆者が思う、「日本人がテロ対策に強い&弱い理由」を2つずつ紹介する。
日本人がテロに強い点1:団結力
日本人は集団意識が強いので、非常事態が起きたときの団結力は他国に劣らないと思う。東日本大震災の時もそうだったが、国全体が“震災一色”に染まり、お笑い番組を“不謹慎”と批判するほどの「国民全体が一つにまとまろうとする力」は、危機感を保つ上でプラスに働くのではないか。
日本人がテロに強い点2:徹底させる力
パリでは1月のテロ以降、ショッピングモールや美術館などでも荷物検査が行われるようになったが、これも時間の経過と共に「形だけ」のものとなった。フランス人の気質として、「何かを長期間徹底する」ことが苦手な上、ルールを個人の裁量で勝手に変更することも多いので、荷物検査のようなテロ対策には不向きな性格である。
これに対し、日本人は基本的にルールがあれば守る。非常事態の後になされたテロ対策なら尚更だ。さらに、真面目で勤勉な性格もあいまって、荷物検査でも徹底的にバッグの中身を検査するのではないだろうか。フランスでは荷物検査される側も、「こんな検査何の意味もないんだから、急いでいるし、通してくれ」と抗議する人もいたが、日本人なら検査される側も律儀に協力してくれそうだ。
このように、「団結して対策を徹底させる点」に日本人は長けており、この点だけをとれば日本はテロ対策に強いと言える。しかし、日本人がテロに弱いといえる気質があるのも確かだ。
日本人がテロに弱い点1:日本は平和だという慢心
滝川クリステルのオリンピック招致スピーチでされた落とした財布のエピソードのように、日本人はどこか「日本は平和な国」であることを誇りに思っている節があるのではないだろうか。それ自体は決して悪いことではないが、“危機感をもつ”という点ではマイナスである。
また、「日本は平和だ」と思っている人が多いので(実際に犯罪率も低いが)、フランス人に比べると日本人は人を信用しやすく、警戒感が低い。人を疑う習慣がなく、経験に基づく「危険を察知する力」もあまりないので、テロの計画を立てている集団があっても気が付きにくいかもしれない。
日本人がテロに弱い点2:屈しない精神力
今回のパリ同時多発テロ事件を通して、「フランス人はやっぱりタフだなぁ」と改めて思った。筆者は連日の報道でノイローゼ気味なったりもしたが(参照)、周りのフランス人は至っていつもどおりで正直驚いた。テロの次の日に普通にパリ市内へ買い物に行ったり、レストランで食事をしたり…。「テロに屈しない」ことを証明するために、あえてレストランのテラス席で食事をするような運動もおこったほどだ。このようなフランス人の精神的な強さが、テロの脅威からいち早く回復するのに一役買ったように思う。フランス経済に与える打撃も、最小限度に抑えられたのではないか。
しかし、これがもし日本で起こったなら、日本人の強い団結力がマイナスに作用していつまでも「テロの脅威ムード」が続いてしまうのではないかと思う。テレビなどの報道も、フランスでは割とすぐにテロ報道以外の放送が流れたが、日本の場合は「たくさんの人が亡くなったのに不謹慎だ」という理由でテロ報道が長期化しそうだ。
日本人はフランス人に比べ、影響されやすく、素直で従順な人が多いので、こういった報道によってストレスを溜めてしまう人が増えるのではないか。筆者も若干陥ってしまったが、テロ報道によりノイローゼになる人の数がフランス人よりも多いように思う。
まとめ
以上が、日本人の気質からみたテロ対策における強みと弱点だと思う。あくまで筆者の憶測なので、このとおりになるとは言い切れないが、テロ対策に国民性が反映されるという点は納得していただけただろう。
あなたは日本でテロが起きた場合、日本人の国民性としての強みと弱みは何だと思いますか。コメントで教えてください。