フランスを旅行するときの一番の楽しみといえば、やはり食事ではないでしょうか。パリには数え切れないほどの美味しいレストランがあるので、本場フランスのフレンチを堪能するべきです。
しかし、フランスのレストランの食事は案外難しいものです。パリ在住の筆者が友人を日本から招いた時、最も厄介だったのがレストランの食事でした。レストラン選びや注文の仕方、食事の流れなどは日本と違う点が多いからです。
そこで今回は、フランス語を話せない人でもパリのレストランで美味しく、楽しく食事できるためのポイントを9つ紹介します。これを読めば、初めてフランスのレストランで食事する人でも絶対に失敗しないでしょう。
※注意
ここでは、旅行者やフランス人が最も利用する中級レストランとビストロ、ブラッサリーでの食事をメインで解説しています。
レストランの種類を知る
まずは、フランスのレストランの種類とその位置づけを知りましょう。フランスのレストランは大きくわけて3つに分けることができます。
- ガストロノミー
いわゆる高級レストラン。要予約。ディナーで一人100€以上。ドレスコードがあるので注意。フランス人は誕生日や結婚記念日などの特別な時に食事する場所という位置づけ。シュークルートやポトフ、ピザ、ラクレットのような家庭的な料理は出ない。 - 中級レストラン
ガストロノミーほどの高級感はないけれど、ちゃんとしたレストランという雰囲気をもつお店。ドレスコードなし。人気店は予約が必要。ディナーは50€~。味は高級レストランに負けないくらいの美味しさでも、店内面積が狭かったり、雰囲気がカジュアルだったりする。 - ビストロ&ブラッサリー
庶民派レストラン。ディナーは20€~。カジュアル雰囲気のレストラン。フランスのサラリーマンが昼食に利用したり、週末に友人と飲みに行く場所という位置づけ。食堂や居酒屋という雰囲気。
1のガストロノミーは明らかに別格なので違いがはっきりしていますが、2と3の違いは実はとても曖昧です。ブラッサリーでも中級レストランのようなきちんとした店もありますし、その逆もまたしかりです。もちろん、フランスの一般人が普段行くレストランといえば、2と3。食事の目的や予算に応じて、レストランの格式を選びましょう。
レストランを予約する
日本でレストランを予約する場合は、「今日はお寿司が食べたい」、「焼き肉が食べられるお店がいい」というように、最初に食べたいものを決めて予約するパターンが多いです。しかし、フランスの場合は何を食べたいかでお店を絞るのは、日本ほど簡単ではありません。お店のシェフが季節や旬に合わせて独自にメニューを考えるので、行ってみないと何がおすすめなのかわからないというケースがほとんどだからです。
そこで、やはりレストランを予約する際に参考になるのが、ネットの口コミ。もちろん、インターネットには載っていなくても、評判のいいレストランもたくさんあります。しかし、ネットで高評価を得ているお店を予約するのは、パリ初心者がお店選びで失敗しない確実な方法のひとつだと思います。
ちなみに筆者のおすすめサイトは、La fourchette(ラ フォルシェット)。日本では全く知名度のないサイトですが、探しているレストランのエリアや料理のジャンルを選択して、高評価のレストランを検索することができます。このサイトの最大の魅力は、La fourchette経由で予約をすれば20~50%の割引をしてくれる点です。この割引があるのとないのとでは大違いなので、パリジャンもよく利用しています。
フランス料理の構成を知る
フランスのフレンチレストランは、メニューの構成が大体いつも同じです。レストランに入って、メニューを広げたら必ずこの3つのワードを目にするでしょう。
- Entrées(アントレ)
前菜のこと。前菜とはいうものの、少食の人はアントレだけでお腹いっぱいになる人もいます。値段が安いお店ほど量が多い傾向があるので、注文前に量を確認しておくといいでしょう。サラダ類やカルパッチョ、ハムの盛り合わせやフォアグラ、エスカルゴ、テリーヌ、スープなどはアントレに含まれます。 - Plats(プラ)
メインのこと。大きくわけて肉料理のViande(ヴィアンド)と、魚料理のPoisson(ポワッソン)の2つに分けられます。パスタやリゾットもプラに含まれます。ちなみに、Plat du jour(プラ デュ ジュール)とは「今日のおすすめ」という意味です。旬の食材を使っているお店が多いので、要チェックです。 - Desserts(デセール)
デザートのこと。
多くのレストランは、Entrée+Plat+Dessert=60€というようにメニューに表示されているはずです。Entrée+Platのみ、もしくはPlat+Dessertを選ぶことも可能です。
ウェイターが来るタイミングを知る
初めてフランスのレストランに行く場合は、どのタイミングでウェイターがテーブルに来るのかを知っておくことが重要です。このタイミングを知らないことが原因で、「自分たちは放っておかれているの?」と不安になる日本人観光客はとても多いです。
- まず「ボンジュール」と言って店に入り、席を案内される。席について、しばらくするとメニューを運んできてくれる。
- ウェイターが「アペリティフ(食前酒)は何がいい?」と聞いてくる。ここで食前酒を飲みたい場合は、シャンパンやシェリー、ベルモット、キール、キールロワイヤルなどを注文。食前酒を必ず注文しなくてはいけないというわけではない。
- 注文したアペリティフが運ばれてきたのと同時に、料理と飲み物の注文。おすすめなどを聞く。
- 飲み物と、Mise en bouche(お通し)、バゲットなどが運ばれる。
- アントレが運ばれて、食事開始。
- プラの食器を片付けると同時に、「デザートはいる?」と聞いてくる。「いる」と答えると、デザート用のメニューを運んでくれる。
- デザートが運ばれ、デザートを食べきる。
- デザート皿を片付けに来るのと同時に、「食後のコーヒーは要る?」と聞いてくる。
- 「コーヒーいる」と答えると、コーヒーと一緒に伝票が運ばれてくる。
- 会計
もちろん、すべてのフランスのレストランがこれと同じ流れになっているわけではないですが、おおまかな流れはこんな感じです。この店員の動きをある程度知っていると、店員を急かすことなく、「感じの良いお客さん」として最後まで楽しく食事できるはずです。パリの店員さんは急かされるのを嫌いますので。
食材の名前をある程度憶えておく
フランスのレストランは日本の飲食店のように写真が載っているわけではないので、フランス語が分からないと注文はかなり難しいです。メニューには、その料理に使われている材料を料理名の下に小さく表記しているお店が多いので、ある程度食材の名前を知っておくといいでしょう。ここでは、知っていると便利な食材名を少しだけご紹介します。
- porc (豚肉) 、boeuf (牛肉)、poulet (鶏肉)、canard (鴨肉)、veau(子牛)、 agneau(子羊)
- salmon(鮭)、sole(ヒラメ)、daurade(鯛)、crevette(蝦)、moule(ムール貝)、sardine(鰯)、maquereau(鯖)
- legume(野菜)、champigons(きのこ)、poireau(長ネギ)、haricot(インゲン豆)、concombre(きゅうり)
とはいえ、全ての食材の名前をフランス語で覚えるというのは不可能に近いです。フランス料理というのは、シェフの創作力によって作られる面もあるので、普通のフランス人は知らないような食材を使った料理というのも多く存在します。そして、その知らない食材をフランス語で「○○って何?」と店員に聞いてもわからないかもしれません。
ですので、パリ旅行者はメニューでわからないものがあれば、スマホでググるというのもひとつの手です。高級レストランではマナー違反ですが、カジュアルなお店なら問題ありません。
ワインを注文する
ワインを注文するときは、一緒に食べる料理やワインの産地、予算を考慮して注文しましょう。ちなみに、大まかなワインの名称はこんな感じです。
- Vin rouge 赤ワイン
- Vin blanc 白ワイン
- Vin rosé ロゼワイン
- Vin mousseux スパークリングワイン
- Vin sec 辛口ワイン
- Vin doux 甘口ワイン
ワインをボトルで注文する場合は、Une bouteille de~(ユンヌ ブテイユ ドゥ~)といい、グラスで注文する場合は、Un verre de ~(アン ヴェール ドゥ)と言いましょう。この時におすすめを聞いてもいいですが、フランス語が分からない場合は質問したところで、「赤と白どっちがいい?」、「辛口がいい?フルーティーがいい?」と逆に質問されたり、産地の説明を早口でされるので聞き取りは難しいと思います。ある程度、ワインの勉強を日本語でしておくと、その知識が役立つでしょう。
肉料理には注意
肉料理を注文したら必ず、「焼き加減はどうしますか?」と聞かれます。ここで、フランス語の肉の焼き加減を説明する単語を知っておくと便利でしょう。
- Bleu(ブル)・・・ 最も生に近い状態。レア。
- Saignant(セニャン)・・・ ミディアムレア
- A point(アポアン)・・・ ミディアム
- Bien cuit(ビアン キュイ)・・・ウェルダン
お店によっては、どんなソースがいいかと聞かれることもあります。Roquefort(ブルーチーズ), Poivre(胡椒), Champigons(きのこ)などのソースが一般的です。
店員にはフレンドリーに接する
日本は「お客様は神様」の文化。店員の教育をマニュアル化し、良いサービスが徹底されています。大学生のアルバイト店員でも、「お店の顔」という自覚を持って接客してくれます。そのため、「いらっしゃいませ!」と笑顔であいさつする店員に目も合わせない客や、「こんにちは」というあいさつすら返さずに用件だけを伝える客がとても多いです。
しかし、フランスは「お客様のほうが偉い」という意識はほとんどありません。店員も客も、同等です。レストランで楽しい食事をしたいのなら、店員に感じよく接することが大鉄則です。そのレストランで楽しい時間が過ごせるか否かは、店員ではなく、店員と客側の両方の責任なのです。
さらに、フランスのレストランの店員は、客に「召使いのようにこき使われる」ことを非常に嫌います。そして、嫌いなお客さんに対しては、最低限のことしかしないなど、露骨に態度に出す人も少なくありません。「店員さんにも礼儀正しく接する」というのは、フランス人の常識です。
日本からフランスへ来る人は、「店員に気を遣う」を意識して対応するといいでしょう。ボンジュールのあいさつを欠かさず、店員に何かをしてくれた度に「メルシー」を言うようにしましょう。
あせらない、ゆっくりゆっくり
フランスの食事は、ほんとーーーにゆっくり。日本人はレストランでもすぐにメニューを決めて、ちゃっちゃと行動しますが、フランス人は食事に世界一時間をかける国民です。このゆっくり食事する習慣は、レストランに着いたときから始まっています。
席について、メニューが運ばれてくるまでもゆっくり。メニューが決まっても、すぐに店員を呼んではいけません。余程急いでいない限り、フランス人は店員が注文を取りにくるまで、おしゃべりを楽しみます。フランス人にすれば、その「おしゃべり」が楽しいわけです。ここで、さっさと店員が注文を聞きに来てしまうと、「せっかくの楽しいおしゃべりを妨害された」と感じ、急かされているように思って怒り出すお客さんもいるそうです。
フランスのレストランでは、迅速なサービスは必ずしもいいものではないのです。客にゆっくりとしてもらうのが、レストランのおもてなし。レストランでは特に、時間の流れが日本とは違うので注意をしましょう。フランス人のように、ゆっくり、のんびりとおしゃべりしながら食事すればいいのです。
まとめ
こうしてみると、
レストランには文化が詰まっている
という気がします。食事の仕方、料理の注文や流れ、使っている食材、店員との会話など、その全てがフランスの文化です。逆に、筆者が日本に帰って、一番「あぁここは日本だなぁ」と感じる場所も、実はレストランだったりします。人が食事をする場所って、その国のカラーが最も出やすい場所なんですね。