みなさんは「ハーフ」と聞いて、何を連想するだろうか。
ハーフタレントやハーフモデル、英語がペラペラ…?こんなイメージを持たれやすいハーフだが、いまだにハーフは珍しい存在であるし、私たち日本人が「ハーフの気持ち」を理解できていない部分もあるだろう。
そこで今回は前回に続き、同質性の高い日本社会で生きるハーフの現実を探ってみようと思う。あなたは、ハーフにどんなイメージを持っているだろうか。
ハーフは日本人じゃないのか?
アメリカ人と日本人のハーフ、西倉めぐみさんとともに、高木さんはハーフについての映画を作成した。日本社会でのハーフの生きづらさを取り上げたドキュメンタリー映画である。
「87分間の上映時間の間に、観客たちには映画に登場する5人のハーフになったつもりになってほしいです。ハーフになったつもりで、今の日本社会に生きるというのがどういうことなのか経験してみてほしい。」
西倉さんは語る。
「ハーフのものの見方や、日本以外の国からの影響が原因で、ハーフは度々日本社会で”部外者”と感じることが多いです。”日本人”という定義に、ハーフも含めるべきだと私は思います。日本の人口動態が変わりつつある今、やっと日本はターニングポイントにさしかかったと感じています。私は日本がより多民族社会・マルチカルチャルな社会になればいいと思いますが、これは日本人がこの変化を良しとするかどうかにかかっています。この映画を観終った人が映画館を出るときに、日本の将来は明るいんだと感じてほしいと思います。」
高木さんと西倉さんは、日本人の母親とイタリア系アメリカ人の父親の間に横浜で生まれた、リゼ・マーシャ・弓美さんに出会って、ドキュメンタリー映画の製作を構想することになった。「日本人」というカテゴリーをより包容力のあるものにすることを願っている彼女は、ハーフ130人を取材し、65人からインタビューを実施した。西倉さんは語る。
「2009年、高木さんと、マーシャさん、そして写真家のウィラー・ナタリー・摩耶さんと出会い、ハーフプロジェクトを立ち上げました。私の調べたところによると、ハーフに対するステレオタイプというのは、その多くがマスメディアによって作られています。だから、私たちはこの映画をつくるにあたって、ハーフが実際に経験することを知る機会をつくり、ハーフの物語を語るプラットフォームを提供したいと思いました。」
高木さんがサマーキャンプで受けたいじめを前回の記事で紹介したが、反対に、西倉さんは彼女の混血ルーツが原因で差別を受けたことは基本的にないという。
「日本の小学校に通い始めたころ、混血が理由でとても目立ち、注目されることが多かったのは事実ですが、それが原因で辛い思いをしたことはありません。私とは違う小学校の子どもからは睨まれ、”外人”と呼ばれたことがありますが。」
ハーフプロジェクトに関して、マーシャさんはこう語る。
「日本で生まれ育ったハーフとして、また外国人の見た目のせいで日本のどこに行っても目立ったという経験があるものとして、私はこれまでにたくさん”区別”されてきましたが、”差別”はありませんでした。私が日本語をペラペラと話せることに驚かれても、それは何も差別ではないと思います。ただ、日ごろから常にこのようなちょっとした”区別”の扱いをされると言うのは、考えさせられるものです。これを”人種的疲労”と呼ぶ人もいます。」
マーシャさんはハーフ60人のインタビューを通して、人種差別にあったという経験がある人はほぼゼロに近かったと指摘している。
「周りの子と違うことが原因で、学校でいじめられた経験がある人は5人でした。しかし、これは人種差別と呼べるのでしょうか。」
黒人×日本人ハーフのケース
ハーフの親である外国人の民族性が、日本社会で現地人にどう見られているかがいじめに関係している場合もある。ユーチューブで日本語と英語で動画をアップしているデジャさんは、アメリカ人の父親と日本人の母親を持つハーフである。黒人とのハーフということもあり、彼女の黒い肌は学校でもすぐに目立ってしまった。
「教室で先生がいなくなった後すぐに、クラスの男の子が椅子に立って、”このなかで日本人じゃない人は手をあげてー!”と大声で言いました。みんなが私のほうを見ましたが、私は手を挙げませんでした。」
彼女は続ける。
「私の肌の色のせいで、私が日本生まれの日本育ちだとは誰も信じてくれませんでした。道端で知らない人から悪口を言われたことだってあります。私の後ろにいる子どもが、”見て!外国人が日本語をしゃべっているよ!”と言うのを聞くこともたまにあります。」
デジャさんいわく、白人とのハーフのほうが肌の色が日本人と変わらないため、日本人に受け入れられやすいらしい。
「日本人と黒人のハーフは、一目見ただけで黒人だと決めつけられてしまいます。」
デジャさんは、若い人のほうが中年世代よりも、一般的に黒人ハーフを広い心で受け入れてくれると語っている。
西倉さんも、日本人のほとんどは彼女の「日本人サイド」に気が付かないそうだ。
「日本ではいつも、初対面の人に”外国人扱い”されるのが私の日常です。日本語を話せない外国人観光客だと思われるのです。警察に呼び止められ、私が日本人かどうかを聞かれることもあります。ハーフだと答えると、それで職務質問は終わりです。しかし、人混みの中で”普通の”日本人ではない私を見つけて、物色しているのは明らかです。たまに一目で私がハーフだと気が付いてくれる人がいますが、これはとっても嬉しい。私に日本人の要素があるってわかってくれたの?と感激します。」
日本で嫌な経験をすることも多かったデジャさんだが、日本とアメリカの両方の”架け橋”になれることに喜びを感じているそうだ。
「ハーフは、外国の視点を日本に教えてくれる架け橋だと思ってくれる人もいるようです。」
日本政府がこの先、ハーフに生涯を通じての二重国籍を認めるようになるのかは不明だが、ひとつだけはっきりしていることがある。
それは、この国を構成する人口が変わりつつあるということだ。ハーフの赤ちゃんの数が毎年増えていけば、単一民族であった母国にいながらにして、多様化を目の当たりにする普通の日本人が増えていくはずだ。そうすれば、日本人がハーフを”受け入れる”の第一歩となるだろう。
二重市民権を持つ者を受け入れるか、避けるかの選択は、日本の不確実な未来にとって大きな意味合いを持つ決定となるはずだ。
参照:http://thediplomat.com/