以前書いた記事『フランスで妊娠できて幸せ♪日本にはないフランス妊娠生活の良いところ5つ』では、いかにフランス人が妊婦に優しいかを書きました。
筆者は現在フランスで妊娠8カ月です。ここでは、電車に乗ればほぼ100%席を譲ってもらえ、年配のフランス人女性からは「無理しないでね」、「手を貸そうか?」と優しい声をかけてもらえ、スーパーのレジでも並ぶことなく優先してもらえ、お出かけのたびにとてもいい気分になります。
それなら日本での現状はどうなのかとネットで調べてみると、妊婦に対する世間の風当たりの冷たさと肩身の狭さを感じている女性が多いようです。動きの遅い妊婦は邪魔者扱いされ、優先席にすら譲ってもらえないという話をよく耳にします。(以下、ママリQより抜粋)
・私も妊娠してたとき、優先席の前に立ったんですが、寝たふりをする人、漫画を読んだり携帯をみて気づかないアピールをする人ばっかりでした。(ゆきゃんたさん) ・妊娠してから、優先席に座る人の事を気にしはじめましたが、大学生やサラリーマンばっかり座ってますね…。優先席前に立つと、舌打ちされた事もあります。(たまるちささん) ・出産した後もですよ〜!電車で赤ちゃんが泣けば、うるさい!泣かせるな!公園で遊んでたら、うるさい!きゃあきゃあ騒ぐな。保育園や幼稚園の近所の人が、うるさいからって幼稚園にクレーム出す世の中です。少子化少子化言う割に、子供を育てるのに適してないですよね。(ぶーぶさん) |
もちろん日本でも、周りの人に親切にしてもらった経験がある女性もたくさんいますが、実際に日本とフランスの両方で妊娠&出産を経験した人の話を聞くと、日本は産め産め言う割には世間は冷たく、逆にフランスは産むのは個人の自由と放っておいてくれるわりに、妊娠した途端に世間が優しくなってくれると語っていました。
なぜ日本はこんなにも妊婦に冷たい社会なのでしょうか。そこで今回は、ネットでの妊婦さんたちのコメントや、実際に日本で妊娠した経験がある女性の話を元に、日本人が妊婦に厳しい理由を分析してみました。筆者は日本人が妊婦に冷たいのは以下の4つが理由だと思います。あなたはどう思いますか?
妊婦の数が少ない=わからない
日本人が妊婦に厳しい理由のひとつとして、日本全体の妊婦の数が少ないのではないかと思います。出生率は年々低下し、2016年の年間を通じた赤ちゃんの出生数が、現在の形で統計を取り始めてから初めて100万人の大台を割り込み、過去最少の98万人台にとどまっています。
これはつまり、ほとんどの日本人が自分の家族や友人、知り合いで妊婦の人がいないということです。身近に妊婦がいないからこそ、妊娠がどういうものかがわからないし、お腹に赤ちゃんがいる人のことを自分のこととして考えられないのではないでしょうか。多くの人にとって、妊婦という存在は「自分には関係のない人」なわけです。
反対に出生率が1.99と先進国のなかでも多いフランスでは、妊婦を身近に感じている人が多いようです。事実、電車の中で席を譲ってくれるのは子育て世代の男性や20-30代の女性が多いです。
行動力がない
電車の中で席を譲ってもらえないと不満をいう妊婦さんがいますが、これは必ずしも「席を譲らない人」のみに責任があるわけではないと筆者は思います。周りの人に気づいてもらえない、察してくれないと嘆く前に、妊婦さんのほうから「妊娠しているので席を譲ってくれませんか?」と声に出して頼めばいいのになぁと思います。それでさすがに断る人はいないだろうし、例え断られたとしても「変な人だ」と思って気にしなければいいのではないでしょうか。
言い出しにくいという気持ちもわからなくはないですが、仕事でクタクタでやっと席に座っているかもしれない他人に「どいてくれ」とお願いするのだから、それくらいの気まずさを経験して当然だと思います。何も言わずにお腹をさすって優先席の前に立っているから、「妊娠アピールをしてる」とイラつかせてしまうのではないでしょうか。そんな「私に気が付いて!」という遠回しなアピールをするより、本当に立っているのがしんどいなら潔くスッと「席をゆずって下さい」と言えばいい。この行動力が妊婦さんの側にも必要だと思います。
また、席に座っている側の人も「本当は譲ってあげなきゃいけないけど、声かけるのが面倒だし、気まずいし、このまま自分が乗っている間は見なかったことにしよう、誰か他の人がゆずってあげて」と思いながら寝たふりやスマホいじりしている人が大半なのではないかと思います。要するに、席をゆずる側も、ゆずられる側も行動力がない。どちらも行動に移さないから、結果的にどちらもモヤモヤとした嫌な気持ちを抱えてしまうだけで終わり…なのではないでしょうか。
「辛くても我慢しろ」という根性論
1億2000万人いる日本人を全て同じとして語ることはできませんが、日本人は欧米人に比べて「辛くても我慢しろ」という根性論が好きな人が多いと思います。特に、「俺(私)も昔はこれくらいの大変なことをやってきたんだから、お前もできて当然」という論調をよく耳にしませんか?
部活動の先輩からのしごき、上司との強制飲み二ケーションなどはこの精神をよく反映しているものだと思います。これは妊婦さんに対する対応にも当てはまり、「みんなそれくらい我慢してる」→「だからお前も辛くても我慢できる」と押し付けている節があるように思います。
ちなみにフランスでは、妊婦に一番優しいのは「出産経験のある女性」です。「私も妊娠してた時は大変だったわよ」と良き理解者になってくれ、「こんなに暑い日は大変でしょう?」と声をかけてくれたり、「お腹が重いとすぐに息が上がって疲れるのよねー」と労わってくれます。こういう女性の先輩が世間にいるとわかると、とーーっても心強く、妊娠していることを歓迎されているような気持ちになって嬉しいです。
本来、日本でも妊婦の大変さを一番理解し、労わるべき存在なのは経験したことのあるおばさんたちです。しかし、ここでも「私も大変だったから、あなたもそれくらい我慢しろ」という論調が使われ、結局は妊婦さんだけが逃げ場のない肩身の狭い思いをしなくてはいけないのではないかと思います。
他人とコミュニケーションしない文化
ヨーロッパやアジアなどを旅していて、またフランスと比べてみていつも感じることなのですが、日本人は街中のそこら辺にいる他人とスモールトーク(雑談、世間話)をする人が異様に少ない国だなぁと思います。海外では割とすぐにちょっとしたことで赤の他人との会話が始まるのですが、日本人はそれぞれが個人またはグループの殻のなかに入っているようで、基本的に殻と殻同士が混じり合うことはない、という印象を受けます。
筆者はスモールトークが割と好きな方で、日本でもフランスでもわりとすぐにそこら辺の人に話しかけるのですが、日本にはマタニティーマークなるものがあることを知った時は衝撃でした。そんなわざわざ他人とのコミュニケーションを避けるためのツールを身に付けておくよりも、その場で目の前にいる人に話しかけたほうがよほど早くて簡単なのにっ!これって必要ないだろーと思いました。そもそも妊婦じゃなくても、電車の中で具合が悪くなったときは「すみません貧血でフラフラするので、席を変わってくれますか?」と頼める社会であるべきです。
とはいえ、やはり日本でスモールトークをするのは、フランスでするよりも少し勇気がいります。「変な人だと思われないか?」というフランスでは全くしない心配をすることもあり、これは日本で他人に話しかける人が少ないのが原因だと思います(でも、実際に話しかけてみて感じが良かったり、親切なのは断然日本人なんですけどね)。
日本でも「関係のない人とは会話しない」という雰囲気から、ちょっとしたことで他人と会話をする雰囲気になれば、より助けを必要としている人の声が届きやすい社会になるのではないかと思います。
おわりに
以上が筆者が思う、日本人が妊婦に厳しい4つの理由です。あなたは妊婦さんを取り巻く日本の社会や世間の風当りをどう思いますか?なぜ日本社会は妊婦に優しくないと言われているのでしょうか。コメント欄で教えてください。