2010年、日本のキューピーマヨネーズが米アマゾン部門売り上げ1位を記録した。欧米のマヨネーズと違い、「どんな料理にも使える」というのが受けているようで、米国アマゾンの場合、レビューはほとんど満点、海外の有名食品メーカーを抑え、マヨネーズ部門売り上げ1位となっている。どこの国でも買えるマヨネーズだが、どこの国でも買えるからこそ「日本のマヨネーズ」へのおいしさに注目が集まっているのかもしれない。
マヨネーズが世界で最初に注目されたのは、18世紀のフランス・パリ。本来なら鮨は日本で食べるのが一番おいしいように、マヨネーズもフランスで食べるのが一番おいしいはずだ。しかし、ここフランスで生活する日本人は仏産マヨネーズを「酸っぱすぎる」、「ディジョン産のマスタードが入っているのが余計」と言って、わざわざ3倍近くする値段の日本産マヨネーズを買っていく。700円近くする日本のマヨネーズを海外の日本人はちょっとずつケチケチ使うらしい。本来なら世界一おいしいはずのフランス産マヨネーズを買わず、あえて日本のマヨネーズを買う。日本製マヨは高い値段を払ってでも買いたいおいしさらしい。
それではそのおいしさのひみつとは一体何だろうか?そこで今回は日本産のマヨネーズが海外(アメリカやフランス)のものに比べておいしい理由を5つ紹介する。国内シェア60%を誇るロングセラー商品のキューピーマヨネーズを例に、日本産マヨネーズのおいしさの秘密を探ってみよう。
1. 全卵か卵黄か
日本のメーカーが販売しているマヨネーズは全卵タイプのものも存在するが、最もシェアの高いキユーピーの製品は卵黄タイプ。一方、世界では全卵タイプのものが主流である。卵黄タイプは全卵タイプに比べ、コクのある味とクリーミーな食感が特徴的だ。アメリカ人が「キューピーマヨネーズはクリーミーでまろやか」と表現するのは、たまごに秘密があるのかもしれない。
2. ボトルの違い
マヨネーズの入っている容器の違いにもおいしさを保つ秘密がある。キューピーマヨネーズはみなさんご存知の通り、あの独特の形をした搾りだし式のソフトチューブ。マヨネーズの天敵である「酸素」を通しにくいポリエチレンボトルを使用している。酸素から守るバリアをミルフィーユのように何層も重ねてできた容器だそうだ。海外で主流な瓶詰めされたマヨネーズと違い、おいしさをより長くキープできるボトルの設計に日本の食品メーカーのこだわりを感じる。
3. 酢の違い
日本のマヨネーズは日本人の好みに合うようにくせのない植物油と「米酢」を主原料にしている。海外の酢は、例えばアメリカではdistilled vinegar(主に野菜などを発酵させて作る酸度10~15%の高酸度醸造酢)が主流。フランスではブドウ酢が一般的だ。これらのお酢は日本の米酢とは違い、鼻にツンとくる酸味の強さが特徴的である。反対に日本の米酢はやわらかい、まろやかな酸味が特徴的だ。日本のマヨネーズは海外のものと比べて「ソフト」だと言われるのは、酢の違いによるものだと推測する。
4. うまみ成分へのこだわり
5基本味の1つ「うま味」は、料理のおいしさを生む大切な役割を果たしている。1908年にだし昆布の中からうま味成分が発見されて以来、日本ではうまみ研究が発展した。一方で、西洋文化圏においては、フランス料理におけるフォン・ブイヨン・コンソメのように出汁によってうま味を増す料理法も一部存在したものの、多くの料理においてはトマト(トマトはグルタミン酸を豊富に含む)、チーズのような酸味などが強い食材によってうま味を補給したり、何より肉料理においては肉の煮汁自体がうま味の供給源となったため、うま味を増すことに多くの意識は向けられなかった。そのため、日本の学者の主張するうま味の存在は、多くの欧米の学者には懐疑的に受け止められ、うま味なるものは塩味・甘味などがほどよく調和した味覚に過ぎないと考えられた。うま味と言えば、うま味調味料を世界で最初に発売した「味の素」が有名だが、このように日本は古くから“うま味”へのこだわりが強かったように思う。商品開発の段階で、うま味を追求したマヨネーズづくりが海外に比べて進んでいたのではないだろうか。ちなみにキユーピーマヨネーズにも味の素のピュアセレクトマヨネーズにも、原材料に「調味料(アミノ酸)」と表示してあります。
5. マヨネーズの使い方
日本に訪れる外国人が驚くことの1つに、日本人のマヨネーズの使い方がある。彼らいわく、日本人は何にでもマヨネーズをつけて食べるのが異様に映るらしい。それもそのはず!欧米と日本ではマヨネーズの使い方が根本的に異なるのだ。欧米では、ポテトフライや野菜スティックにディップさせて食べるのが一般的だ。マヨネーズはどこかファストフード的な側面が強く、塩や醤油などの1つの調味料として捉える人は少ないように思う。要するに海外ではマヨネーズ味がメインになることはありえないのだ。反対に日本ではポテトサラダやお好み焼き&たこ焼き、マヨネーズピザ、ツナマヨネーズおにぎりなど、割と何にでもマヨネーズを合わせて食べる。つまり、それだけ日本のマヨネーズが「どの食べ物にも合う」ということ。これも日本の食品メーカーが商品開発の段階で、「これをつけると全てのものが美味しくなる。」ことを念頭に商品づくりを進めたからではないだろうか。確かに個人的には、フランスのマヨネーズは酸味が強いのでポテトサラダには向かないなと思う。
↓ この動画は東京のマヨネーズレストランに行ったアメリカ人の反応。
やはり、「何にでもマヨ」は異常にうつるらしい。