知っている人も多いかもしれないが、フランス人は基本的に毎日髪を洗わない。私が調べたところによると週に2~3回の頻度でシャンプーをするのが平均らしい。人によっては週1だったり、毎週わざわざ美容院に行って髪を洗ってもらっている人もいるほどだ。
毎日髪を洗う人が多い日本人からすると、考えられないフランス人の常識である。
随分前になるが、あるテレビ番組で人気モデル・タレントのマリエが3日に1度しか髪の毛を洗わない、頭がカブトムシの臭いがする!という秘密を告白され話題になったが、フランスでは3日に1度の洗髪は至って普通。マリエ自身もアメリカではそれが普通と言っていたが、ヨーロッパでも同じである。
毎日お風呂に入るのに、なぜ髪も一緒に洗わないのか?
フランス人に聞いてみると、「髪に悪いから」という答えが返ってくる。事実、フランスの美容院に行ってみると「髪の毛に良くないから毎日シャンプーはしないで下さいね!」とはっきり言われてしまった。
では、日本人とフランス人の洗髪に対する考え方の違いはどこから生まれてくるのか?
1つは、単純に気候の違いからくるものだと思う。島国で湿度の高い日本の気候に比べ、フランスの空気は本当に乾いている。フランス スキンケア事情5つの「驚いた!」でも取り上げたように、気候が変われば当然スキンケア・ヘアケアの方法も変わってくる。私も乾燥肌になってしまった在仏日本人のうちの1人であるが、空気の乾燥が肌に与える影響と同様、髪に与える影響も大きい。私の場合、フランスに来て2週間で潤いのないバシバシの髪になってしまった。美容師さんのすすめる通りに、実際に髪の毛を洗う頻度を2日に1回にしてみるとバシバシ感が少しはおさまった。乾燥した気候のフランスでは1日髪を洗わなくても日本にいた頃のように頭皮がべたつくことがない。つまり、日本に比べてフランスの気候はシャンプーを必要としないといえるだろう。
2つめの理由は日本は相手に気を使う、尊重する文化を持っているからである。例えば日本では冬になれば風邪をうつさないようにマスクをする人がいるが、フランスではそもそもマスク自体が売っていない。それにフランスの道端にはタバコや犬の糞、アルコールのビンなどが平気で落ちていたりするが日本の道は本当にキレイである。単に日本には道をキレイにする人がいるからというわけではなく、日本人は全体的に「公共の場を汚くしてはいけない」という意識を持っているから、また子どもの時からそう教育されてきたから日本の道端は汚くならないのである。
これはつまり、他人とうまく共存していこうとする日本人の文化からくるものであり、日本人が毎日髪の毛を洗うのも「他人に頭がクサイと思われたらどうしよう・・・」という危惧の念からくるものではないかと思う。反対にフランスでは、頭から異臭を漂わせているにも関わらず頭を洗わないという人もいて、他人に対する思いやりの違いをみてとることができる。
他にも、日本人の衛生面に対する厳しさ、フランス人の怠慢さ、キレイより節水をとるフランス人の特質など、考えられる理由はいくつもある。
いずれにせよ、ロクシタン、ロレアルパリ、ケラスタズなど世界的に有名なフランス発祥のヘアケアブランドはたくさんあるのに、当のフランス人はあまり髪を洗わないという事実は何とも皮肉である。