内閣府が2005年に実施した「少子化社会に関する国際意識調査」によると、「結婚生活や同棲生活をうまくやっていく上で大切なことは?」という質問に対する回答結果が、国によって異なることがわかった。日本は「十分な収入があること」が上位に入るのに対して、フランスは「性的魅力を保ち続けていること」が上位に入る。
確かに日本では結婚する上で、「財力」を重んじる傾向にあるといえる。
某結婚紹介所が実施した30代の日本人男性100人を対象にしたアンケートによると、独身男性に聞いた「まだ結婚したくないその理由は?」の回答として、一番多いのは「金銭的に自信がない」であった。他にも「仕事が波に乗り大切な時期だから」、「仕事が安定していない・上手くいっていない」といった仕事(財力)に関する回答が多い。
結婚に伴う責任は大きいものという意識が強く、それだけのものを背負える自信がついて初めて結婚を考えるという男性像がうかがえる。
また女性のほうも結婚する上で、男性側の「財力」を重んじるようである。
山田昌弘編著の『「婚活」現象の社会学』には、婚活は「独身女性によるわずかな高年収男性の争奪戦」という局面を迎えている…とあったが、確かに日本人女性は男性の年収や職業などを気にする人が多いように思う。
既婚者である私の友人に「今の旦那と結婚を決めた理由は?」という質問をしてみると、「ずっと一緒にいたいと思ったから」「生涯共にできる相手だと思ったから」といったお決まりの回答のほかに、「仕事ができる男だと思ったから」、「出世する男だと思ったから」、「上司にかわいがられる世渡り上手な面があるから」など、相手の男性の仕事に対する姿勢を評価した回答が返ってくる。
独身者向けの女性誌で、出版社やIT企業に勤める男性、企業家、医師といった「キラ男」たちが恋愛や結婚の談笑したものをよく目にするのも、日本人女性が男性の仕事に対する姿勢であったり、恋愛・結婚において「十分な収入があること」を大切な要素として考えているからである。
では、性的魅力を保ち続けることが大切だと考えるフランス人の結婚観というのはどういうものか?
そもそもフランスでは、未婚カップルにも既婚カップル同様の社会保障、税制優遇などの法的権利を与えることのできる法律が成立しているため、「同棲」と「結婚」の境目がわかりにくい。友人の事実婚をしているカップルに「なぜ籍を入れないのか?」という質問をしたところ、「法や制度による拘束があるから一緒にいるのではなくて、自分たちが望むから一緒にいる。籍を入れてしまうと、本当の気持ちが見えにくくなる」といった回答を受けた。フランス人は自由な恋愛を好み、「結婚」という制度をあまり重視しないようである。フランス全土ではいまや3組に1組、パリでは2組に1組の夫婦が離婚するといわれているのも、フランス人の「本人たちの気持ちを一番に尊重する」傾向の裏返しなのかもしれない。
フランス人の「本人たちの気持ちを一番に尊重する」というのは、「結婚後も男女の関係を重視する」という感覚に繋がる。
以前フランスのテレビ番組で、妻が容姿に全く気を遣わなくなり、セックスの意欲が沸かなくなって別れたカップルを特集にしたものがあったが、これはフランス人が結婚後も男と女の関係を保つ恋愛関係であることを重視していることがうかがえる。
また、先ほど挙げた独身女性向けの雑誌を例にあげて比較するとすれば、フランス女性誌の特徴として、必ずと言っていいほど登場するのが「セックス」に関する記事である。内容は、恋人にいいセックスを与えられているかをセルフチェックするものであったり、男性がセックスで好むことを紹介している記事であったり、時には女性向けおもちゃの紹介記事だったりする。日本の女性誌にもセックスを特集したものがあるが、量で比べれば絶対的にフランス女性誌のほうが多い。フランス人女性は日本人女性に比べセックスに関心が高く、またいいセックスをしようとする意識が高いといえる。これは同時に、恋愛・結婚関係において男であること・女であることを重んじる傾向があることを示唆している。
「財力重視の日本人と、セックス重視のフランス人」
ここまでそれぞれの傾向を挙げてきたが、言うまでもなく全ての日本人、フランス人に当てはまるというわけではない。
日本人同士、フランス人同士のカップルでも、はじめは価値観があうと思っていても、いつの間にか夫婦間にズレが生じてしまうことも少なくない。
個々にいろいろな考え方があり、どれが正しい、どれが劣っているという問題ではなく、大切なのはパートナーとの間で、ズレをなくす(または理解する)こと。
「結婚生活や同棲生活をうまくやっていく上で大切なことは?」
旦那さん、奥さんに聞いてみよう。