フランスに料理の勉強をするために留学する日本人は多いが、その逆はどのようなものなのだろうか?日本食の調理方法などを紹介する雑誌“Wasabi”の編集者であるパトリック・デュバルさん。彼は日本にとても詳しく、様々な分野で日本ガイドとしても活躍している。パリでアマチュア向けの日本料理学校も運営する彼は、まさにフランスの日本食エキスパート。そんなパトリックさんの仏語インタビュー記事があったので、翻訳してみた。
– 日本食への情熱はどこから来るものなのですか?
パトリック: 私はジャーナリストとしてキャリアを築くなかで、度々日本を訪れました。そのなかで、多彩でバラエティー豊かな日本食に出会い、フランスで良く知られている単純な“スシ”だけにとどまらないことを知り、感動しました。私は日本食の多様性を発見していきたいと思い、何もないところから始めて今では3か月ごとに発行されるフリーペーパーを編集しています。“Wasabi”はフランスにあるほぼすべての日本食レストランで配布されています。
– 日本食は健康によくダイエットにも最適だとよく言われますが、それはどうしてですか?
パトリック: 日本食は脂肪分が少なく、ほとんどソースを使いません。食材本来の味を前もって引き出すような調理をすることが多く、スパイスなどで味を消すようなことはしません。その例としてよく用いられるのが、今まで欧米諸国にはなかった“生魚”。これはとてもシンプルで自然な食べ方ですよね。日本食はフランス料理に比べて、大きく味を変えることを好まないような印象を受けます。火を通した野菜でも、日本食の場合は必ず歯ごたえを残す。その根底にあるのは、“火の通り過ぎた野菜は死んでいる”という考え方からくるのです。
– 寿司職人になるには10年ほどかかると言われていますが、どうしてそんなに長くかかるのでしょうか?
パトリック: 寿司職人は魚についての豊富な知識を習得する必要があるからです。彼らは魚のどのパートは生で食べ、どのパートは火を通すかを熟知しています。魚のさばき方や、魚のどの部分が上質なのか、その階級までをも理解しているのです。
– 日本食の中で一番作るのが難しいものは何だと思われますか?
パトリック: スシでしょうね。見た目にはとてもシンプルな食べ物ですが、とても奥深くて専門的です。魚を正しくさばく方法や、お米に十分空気を含ませる寿司飯の作り方などを知らないといけませんから。
– フランスにおける日本食ブームについて、どのように説明されますか?
パトリック: 20~30年間、フランスにはたくさんの中国料理レストランがありました。しかし、これは衛生上の問題が挙げられるようになるとともに、中国料理ブームは去っていきました。フランス国内の多くの中国人はその代りに日本食レストランに切り替えたわけです。それに加えて、フランス人は数年前から日本の文化に興味を持ち始め、食はその流れの一部だったとも言えるでしょう。
– フランスでの一部の消費者たちはまぐろの赤身が原因で、衛生面を気にするあまり神経質になり、寿司を避けるようですが、どのように思われますか?
パトリック: フランスではマグロの赤身を目にすることはめったにありません。ヨーロッパの市場でも赤身が取引されることはなくなりました。フランスの市場に流れるまぐろ(スシ)の大半はthon albacoreを使用しており、脅威でもある地中海産のマグロは使われていません。thon albacoreの切り身も赤いので、消費者レベルでの混乱を招いているようです。
– 日本の典型的なデザートって、種類が少ないような気がするのですが?
パトリック: 日本はフランスのようにデザートの伝統というのが存在しないようです。すでに料理の中で砂糖を使用している場合があるので、食後のデザートというのは生まれにくかったのではないかと思います。寿司飯もかるく砂糖が入っていますし、焼き鳥も表面がキャラメリゼ(照り焼き)になっていますしね。私が今、心に浮かんだデザートは、日本のオムレツです。正方形のフライパンを使って作るのですが、砂糖と醤油とみりんで甘く味付けされていて、とってもおいしいんです。