07年度の国連児童基金(ユニセフ)イノチェンティ研究センターが公表した子どもの「幸福度」に関する報告書で、「孤独」だと感じている子どもの割合が最も高かったのは日本。「自分は孤独だ」と感じる十五歳の子どもの割合が29・8%で、平均の7・4%をケタ違いに上回っており、回答のあった24カ国中トップ。ほぼ3人に1人が感じていることになります。
日本の子どもが諸外国に比べて、「孤独」であることを知ったのは私がフランスで暮らし始めてしばらくしてからですが、今ではなぜ日本の子どもが孤独なのかわかるような気がします。
ちなみにこの調査で、「孤独」だと感じている子どもの割合が最も低かったのはオランダでした。調査結果からも、ヨーロッパの子どもは圧倒的に「孤独感」を感じていないことがわかります。
それではなぜ日本の子どもはこんなに孤独なのでしょうか?ヨーロッパの子どもと何が違うのでしょうか?
1つは、日本では“家族全員が揃う機会”があまりないように思います。母親と過ごす時間はあるにしても、父親も兄弟も家族みんなが揃う時間があまりないのではないでしょうか?
日本のサラリーマンは仕事が終わる時間も遅いので、夕飯は父親抜きの家庭も多いし、共働きの家庭では1人で食事を済ます子供もいます。子どもと毎日向き合い、ムダ話でもできる時間がないのなら、子どもは「孤独」だと感じてしまうでしょう。要するに、日本では親子関係が深まるような機会が少ないわけです。
日本の家族が家族みんなで過ごす時間と言えば、週末と祝日、GWと盆・正月くらいです。しかし、ヨーロッパの場合はアジアにはない“バカンス”という文化があります。家族みんなで旅行をしたり、親戚の家を回ったりして過ごす長期の休みです。この長期のバカンスが親子関係をより深めるのではないでしょうか。
親子だけに限らず、人間関係・信頼関係を深めるには“経験”の共有量に比例すると言われています。先月知り合った友人よりも、若いころに一緒に色んな思い出を共有した友人の方が深い友情を築いているのは経験の共有量の違いから来るのです。
日本は祝日が多いですが、単発のちょこちょこした休みではなく、長期の休みを国が認可すべきだと思います。1日や2日休んだところで、大して気分のリフレッシュにはなりませんが、1か月くらいの長い休みがあれば仕事に対するいい区切りにもなるし、家族関係も深まり、少子化対策にも繋がります。バカンスを狙った観光事業、旅行業界が儲かれば、バカンスをとり入れたことによる経済効果も期待できます。
少し話が逸れましたが、子どもとの関係を深めるには“ちょっとした時間”ではなく、“連続した長い期間”で接することが大切ではないでしょうか。そうすれば親の心にも余裕が生まれ、バカンス先で色んな経験を共有することで親子の信頼関係が深まり、結果的に子どもの“孤独感”が解消されるのはないでしょうか。
第2に、日本人特有の“見栄の文化”が子どもの孤独感に影響しているのではないかと思います。日本でも特に都会では、ブランド志向の人が多いように思います。少なくともヨーロッパの人よりは、世間体を気にする人が多いのは事実です。他の鏡に映された自分の姿を認知しようと努力する人が多いのも日本人の特徴で、反対に海外では「自分が良ければ他人のことはどうでもいいんだな、この人は」と感じるような行動をとる人が多いです。“他人の目”を気にする気質は、良い面と悪い面が一体となっています。
“他人の目を気にする”というのは、日本人の素晴らしい面でもありますが、良くない面もあることを知っておくできで、日本の子どもは幼い小学生からブランド志向の弊害を植え付けられていると語る教育評論家もいます。少しでもいい学校に、少しでもいい友達と、少しでもいい服を着せ、少しでも習い事をさせ、少しでも立派になってほしい。
これは親の愛情でもあるし、「他人の目なんて気にしなくていい」という躾をしたら日本では問題になりますが、もう少し“ありのままのわが子”を見つめてあげてもいいのではないでしょうか?親が学校の先生など、周りの期待にいつも答えなくてはならない子どもが孤独だと感じるのも無理のない話です。
なぜ日本の子どもは孤独なのか?
ここでは「家族全員が揃う機会不足」と「日本人特有の見栄の文化」を挙げましたが、他にも色んな原因があると思います。一般にヨーロッパの子どもに比べて日本の子ども(家庭)は“余裕”がないように思います。日本の子どもは(日本の大人もそうですが)、生活にゆとりがない。学校に、宿題に、部活に、塾に、定期テストに受験…。毎日やらなくちゃいけないことが山積みです。
バイクのチェーンに十分な遊びがないとチェーンは切れてしまうらしい。
程よい遊びはバイクの安全装置。
人間もこれと一緒なのではないだろうか?