昨年の春夏メンズ流行ファッションとして、注目を集めた『短パン男子』。男性ファッション誌「ポパイ」や「オーリー」などが次々と男の短パンを取り上げたせいもあって、街中で短パン男子を目にすることも多くなった。しかしこの短パン男子、男女ともに「大人の男性の短パンは気持ち悪い」という人もいるため、ブーム到来以来賛否両論を巻き起こしている。男性が足を見せることに抵抗があるという人が多く、そんな日本での“男の半ズボン”は外国人から見ると異様に映るらしい。
そこで今回は、日本男子を取り巻く『半ズボン』の現状と、短パン大好きな外国人男性の反応を探ってみよう!
日本ではどんなに暑くても長ズボン?外国人の反応
「日本では、半ズボンを履く男性=イケてない」
そう語るのは、日本での在住経験もある日本好きアメリカ人のJohnさん。外国人向けに日本の情報を発信する海外サイトtofugu.comで、「男性の半ズボンが日本ではどのように見られるか?」を説明していた。
彼曰く、日本では教養があって洗練されているようなスマートな大人の男性は半ズボンをはかない。海やプールのようなリゾート地、または家のなかとその周辺以外の場所で半ズボンを履くのはOKだが、それ以外の場所では周りの人に少し驚かれる(引かれる)という。
日本では街中やちょっとクラッシーな場所で半ズボンをはくことはなく、きちんとした男性は決まって長いズボンを履いており、これが日本と海外の違いだと彼は語る。
しかし、ひとくちに海外と言っても国によって違いがあるようだ。Johnさんの出身であるアメリカでは、「いつでもどこでもTシャツにショートパンツだ」とジョークにもされているほど、ショートパンツをよくはく国らしい。
アメリカで上品なレストランに行ったことのあるヨーロッパの旅行者は、Tシャツにショートパンツで堂々と来店するアメリカ人を見て「おお、噂はほんとなんだね」と苦笑するらしい。
確かにアメリカ人は“ドレスコード”に少しズボラな面があるようだ。
私も日本にいた頃、外国人留学生の入学式や卒業式などにいくつか参加したが、こういった畏まった席でもアメリカ人は普段と同じ格好、Tシャツに短パン姿で出席する人が多かったように思う。反対にこのような席できちっとしたスーツを着たり、時間をかけて縮れ毛をストレートアイロンで伸ばして来るのはいつも決まってイギリス人やフランス人だった。
少し話が逸れたが、服装の決まりがあまりないアメリカ人からすると、夏が死ぬほど蒸し暑い日本で半ズボンがはけないというのはどうにも理解できないらしい。短パン好きのJohnさんは、日本で短パンを履いても後ろ指を指されたり何かを言われたりすることはないが、日本社会に順応したいのなら、日本では男性は長ズボンを履くべきだとアドバイスしている。
それでは、本当に彼がいうように日本では大人の男性は半ズボンが履けないのだろうか?
短パン男子に賛否両論。日本人は男女共に抵抗感あり
男の短パンブームが到来し、街で短パンをはく男性が増えて以来、ネット上では賛否両論が巻き起こっている。「涼しそうだし、さわやかだからいい」、「カッコいい奴が着こなせばカッコいい」という肯定的な意見もあるが、ほとんどの人は短パン男子をあまりよく見ていないらしい。
特に女性からは不評で、「これは無い!」と圧倒的な不人気ぶりだ。
男性の脚なんて別に見たく無い
部屋着ならともかく、これで外出して欲しくない
海パンみたい
せめて膝下なら許せる
キモい
スギちゃん?
男性の意見も同じようなもので、「気持ち悪い」、「中年オヤジが勝俣みたいなアロハ短パンなの見るとムカつく」、「すね毛は剃ってください」といったものだった。
男性の短パンが不評な理由として、一番多かったのが「すね毛が気持ち悪い」で、その次に「子どもみたい」という意見が多い。
日本では男女ともに、「男の脚見せ」に抵抗がある人が多いようだ。そしてこれが、海外と日本の違いをよく表しているようである。
なぜ日本人は男の短パンに抵抗感があるのか?
なぜ日本人は男性の“脚見せ”に抵抗があるのか。海外との違いは一体何だろうか。
まず、すね毛に関して言えば、日本人男性は外国人男性に比べて、そもそも毛が薄い(毛深くない)ので、唯一「毛の多い場所=足」を見せられることに抵抗してしまう人が多いのではないかと思う。
反対に、腕や胸も毛深い男性の多い欧米では脚の毛くらい気にも留めない人が多いのではないだろうか。
それに、本当かどうかは知らないが、欧米人女性は毛深い男性を男らしくてセクシーだと思っている人も多く、筋肉質で毛深い男性はモテるという話を聞いたことがある。
だから欧米では、男性が毛を見せること(見せられること)に抵抗感をもっている人が少ない。
ホットパンツのようなあまりにも短い短パンは海外でも受け入れられないだろうが、膝上だろうが膝下であろうが、どんな短パンを履いてもそれを「気持ち悪い」と形容する人はあまりいないように思う。 日本で男性の短パンに抵抗感がある人が多いのは、男女ともに「男性の毛」に対する抵抗感があるからではないだろうか。
それでは2番目に多い理由である「子どもみたい」という表現は何が原因となっているのだろう。
日本に丈の短い男性用のズボンが普及始まったのは、1950年頃である。
当時は地位が高かった百貨店が、子供服として半ズボンの販売を開始し、都市部を中心に普段着として広まったそうだ。1969年に『ケンちゃんシリーズ』の放映、『ドラえもん』連載が始まったが、主人公はどちらも半ズボン着用だった。これがバブル期になると、子どものファッションは海外トレンドの影響を受け、少し丈が長めのハーフパンツが登場する。
現在でも国立および私立の小学校では、伝統的に折襟またはイートンジャケットの学童服に半ズボンという組み合わせの制服が多数見られる。
つまり日本では丈の短いズボンは子ども用という認識が少なからず、無意識のうちに残っているのだ。中学生になると長ズボンが制服となるが、長ズボンは男の子にとって“大人の仲間入り”を意味するとも言えなくはない。
とはいえ去年の短パン男子ブームにあるように、「短パン=子ども」という捉え方はだんだん消えてゆく傾向にあるのかもしれない。
それによくよく考えてみると、男性が外で足を出せないというのも変な話だ。フォーマルな場や仕事場などでの半ズボンは“ドレスコード”という観点からNGだが、それ以外の場では好きな格好をすればいいのではないだろうか。
真面目な日本の男性には、休みの日くらい好きな格好をして、好きなことをやってほしいものだ。