「日本人とはいつまでたっても親しくなれない」
そう語る外国人は実は非常に多い。今現在日本に住んでいる外国人で、日本人の友達がほしいと思っている人でも日本人と親しくなるのはとても難しいと感じているようだ。筆者のフランス人旦那も日本に留学していたころは、「なんで日本人とは知り合いになれても友達にはなれないんだろう?」と言っていたし、日本で英語教師をしているアメリカ人の友人にも「どうしたら日本人と仲良くなれるか?」と会うたびに相談される。
そんな外国人にとっては「人付き合いが難しい日本」だが、私たち日本人にとっては当たり前でスタンダードな人間関係である。この日本人にとっては普通の人付き合いが外国人にとってはとても難解で、日本は人間関係の構築の仕方が非常に特殊だ思われているようだ。
そこで今回は、外国人が日本人と親しくなれないと悩む理由と、日本人と外国人のコミュニケーションのとり方の違いを紹介する。
初対面でも会話の途切れない外国人、何度も会っているのに距離を保つ日本人
私自身、新しく出会った日本人と親しくなる難しさを実感することがある。
一番最近で言えば、ニースで知り合った日仏カップル3組でBBQをした時のことだ。日本人妻たちはそれまでに何度も会っておしゃべりしたり、買い物に行ったりする関係だが、フランス人旦那たちは全くの初対面であった。夫をこのような場に連れて行く妻の立場からすると、自分の旦那が他の旦那様たちと打ち解けられるのか、初対面で会話に詰まることはないだろうかと、行く前にあれこれ心配になってしまうものだ。
しかし実際は、私のそんな心配はまったくの取り越し苦労だった。フランス人たちは初対面とは思えないくらい話が盛り上がっていて、ビジネスやゲーム、最近見たおもしろかったドラマや日本社会、日本人の不思議、ビザの更新方法などトピックも多岐にわたっていた。初対面で会話に詰まるどころか、常に誰かが話をしている状態が最初から終わりまで続いた。
反対に、何度も会っているはずの日本人妻のほうが会話に途切れたり、何を話そうかと気をつかいあっているように感じた。何も知らない人が私たちの情景を見たら、フランス人たちが元々の古い友達で、日本人は連れてこられただけだと勘違いしてしまうかもしれない。
フランス人は初対面でも相手と打ち解けるのが非常に早く、日本人は親しくなるのに時間がかかることを実感した。(言っておくが、私たち日本人妻は決して険悪な仲というわけではなく、世界中のどこにでもあるような、いたって普通の日本人主婦仲間である。)
日本人の妻をもつフランス人男性同士ということで、共通の話題もあるから盛り上がるというのはある意味当たり前のことかもしれない。しかし、旦那がフランス人ではなく日本人だったら?と考えると、同じようにはならないのではないかと思う。何度も会っている人と初対面という違いもあるし、どこの世界でもそうだが女性の方がよくしゃべる傾向にあるからだ。
日本を訪れる外国人がよく言うように、やはり日本人とは仲良くなるまでに非常に時間がかかるのようだ。
日本人の人間関係の特徴のひとつとして、「無意識のうちに相手との距離をはかり、その距離をうまく保つ、相手と争わないことが美徳だ」ということが上げられる。自ら積極的に自分の本当の姿をみせようとはせず、相手が心を開いた度合いに応じて、自分も心を開いていく人も少なくないはずだ。
そしてこの相手の出方を推し量るようなコミュニケーションの取り方や人付き合いの仕方は、外国人にはとても理解できない。初対面でも自分の意見をしっかり言って自己主張をし、そこから自分を相手に理解してもらおうとする欧米型のコミュニケーションは、言ってみれば日本の真逆である。
欧米に限らず、知り合いの中国人や韓国人、台湾人も日本人とはなかなか親密になれないと言っていた。彼らは初対面の相手でもいきなり収入や家賃、家族構成などプライベートな質問をぶつけ、どんどん距離を縮めていく傾向があるようだ。
そんな外国の人からすると日本人のコミュニケーションはさぞかし“じれったい”だろうと思う。日本人同士の会話は話を相手に合わせるだけで中身がないと蔑んでしまう人もいるかもしれない。
「内」と「外」の線引きをする日本人
しかし、かといって日本人も外国人のようにオープンなコミュニケーションを目指すべきかというと、そうではない。
他人の心を思いやることなく、ズケズケと言いたいことを言うことを「人の心に土足で踏む込む」というが、日本人は多かれ少なかれ内と外の線引きができない人を嫌う傾向にある。
個人が意識しなくとも、日本には上履きと土足があったり、他所の人に使う敬語と身内の人に使う言葉を遣い分けたり、「内と外」をしっかりと分けるような社会のしくみになっている。
だから、日本では相手の“内”を守ってあげるのが大人のマナーで、それができない人は常識知らずとして嫌がられる。
反対に、内と外の線引きをしようとしない外国人たちは共通の話題さえあれば、初対面でも話がつきない。内と外の概念がない欧米のパーティーでは、誘っていない“友達の友達”が来ることがある。土足で家のなかを歩いても、私たち日本人が感じるような不快感を持つ人は少ないと思う。
無意識のうちに内と外の線引きをする日本人に「そんな線引きをするな!」というのは無理な話だ。
結局のところ、日本人となかなか親しくなれないと悩む外国人には「文化の違いだからしょうがない」と言うしかない。自己保護意識が強い慎重な日本人社会のマナーを守れる人になってくれとお願いするしかない。
しかしながら、すぐに打ち解けてしまう外国人の人付き合いの仕方を羨ましく思うこともある。日本人は相手の出方を推し量ろうとするからこそ、何となく窮屈に感じてしまうのではないか。
ある調査によると、日本人の約4割が人間関係が面倒だと考えているようだ。
私たちが人付き合いを面倒くさく思ってしまうのも、そんな日本特有のコミュニケーションの“じれったさ”からくるものなのかもしれない。