海外生活を始めて、今年で7年目になる。最初の頃はホームシックになったり、現地人が嫌になったりしたが、最近はパリがとても居心地がいい。そう思えるようになったのは、「疲れない人間関係のコツ」を自分なりに習得できるようになったからだと思う。そしてこれが、この7年間の海外生活で筆者が学んだことのなかで、一番ためになっている。
何しろ、昔みたいに人間関係で悩まなくなった。
日本にいた頃は、苦手な人とどうしたらうまくやっていけるかとよく悩んでいたものだが、海外生活をして異文化に触れるうちに、そもそも「苦手な人とうまくやっていく」という発想自体が間違っていたんだと考え直すようになった。
苦手な人とはうまくやっていかなくてもいい。苦手だなと思いつつ、それでもどうにかうまくやっていこうとするから苦しくなるし、辛くなる。苦手な人は苦手なままでいいし、無理に相手を変えようとか、自分が変わろうとかする必要はないと思う。そんなのは単なる労力の無駄だ。
私がこう思うようになったのは、海外生活を通して様々な人間に会ったからだと思う。ここでいう「様々な人間」というのは、要するに「自分の考え方には合わない人たち」のこと。もっと言えば、日本やフランスに住む外国人に対して否定的な見方をする人たちのことだ。
「フランス人は日本好き」と日本のメディアは伝えたがるが、実際のフランス人のなかには日本を下に見ているような人も少なからずいる。日本と中国の違いすらわからない人も多いし、アジア全体がお金のない国だと思っている人もいる。フランスが世界で一番優れているかのような発言を平気でする人もいれば、フランス人以外の全ての外国人をネガティブに捉えている人もいる。
自分の考えに合わない人は、何もフランス人だけじゃない。「外国人と結婚した」ということで、日本人からも偏見を持たれるようになったと思う。外国人と結婚する女性を否定的に捉えている人も少なくない。パリに住んでいることで、どんな発言も「自慢している」ように聞こえるのではないかと妙に気を遣うようになった。
日本にいて、日本人と結婚して、普通に日本で生活していれば、ここまで「人の考え方の違い」に触れる機会はなかったのではないかとたまに思う。しかし、だからこそ「疲れない人間関係のコツ」を自分なりに習得できるようになった気がする。
疲れない人間関係のコツは、「あきらめる」こと
どこにいても偏見や差別はある。自分の考えとは合わない人がいる。苦手な人の過去まで遡って、その人の生い立ちや親からの教育まで立ち入ることはできないわけで、あなたがどう足掻いても、他人は変えられないのだ。
だから、戦わない。日本を悪く言われても、変な偏見を持たれても、「ふーん、あなたはそう思っているのね」で流す。これをすぐにできるようになるのは難しいが、海外生活が長い日本人は案外当たり前のようにやっていたりする。
しかし、苦手な人がいる一方で、一人の人間としてあなたを見ようとしてくれる人もいる。元々持っていたイメージや偏見を越えて、真正面からのあなたを見て、評価してくれる人もいる。そういう人と繋がっていけばいい。わかってくれる人はわかってくれるし、自分のことをわかってくれる人との関係を大切にするほうに労力を費やそう。
と、ここまで当たり前のことをだらだらと書いてしまったが、今、海外生活をしていて、周りの人と考え方が合わずに悩んでいる人がいたら、ぜひ参考にしてみてほしい。
馬鹿にされたっていいじゃない。みんなに好かれなくたっていいじゃない、あなたはあなた。
苦手な人との人間関係はそういうものとして、あきらめよう。
写真:David Ip