今月の北海道男児置き去り事件では父親へを非難する声が多かったが、日本はつくづく子育てする親へのプレッシャーが高い国だと思う。以前から芸能人の子育て論がネットで炎上することがあったが、社会全体に「親とはこうあるべきだ」といった見えないプレッシャーのようなものがあるように感じられる。
そもそも子育てに正解なんてないのに、関係のない他人があーだこーだ言って親たちを苦しめているようで、かわいそうに思うこともある。世界はもっと広いし、日本的な育児方法が世界で一番優れているわけでもない。子育ての仕方には、もっと多様性があってもいいはずだ。
そこで今回は、アメリカ人ママが紹介した「世界の様々な子育て事情」を取り上げる。これを見れば、育児方法に正解はなく、世界にはいろいろな育て方があることがわかるだろう。
フィンランドはゆとり教育
フィンランドは子どもの学力が世界でもトップレベルだ。経済協力開発機構(OECD)による世界41ヶ国の15歳を対象に学習到達度調査(PISA)では、フィンランドは常に上位に入っている。特に、「科学」「問題解決能力」「数学」「読解力」の4分野においての成績がめざましい。なぜ、フィンランドの子どもは学力が高いのだろうか。
それはのびのび学ぶをモットーにしたゆとり教育だ。フィンランドでは小学校が7歳から始まり、授業は45分で、学校にいる時間短い。学力が満たない子どもは進級させず、「出来るまで待ってあげる」「無理な進級はしない」という、とてもおおらかな教育方針だ。
子どもはみんなで育てるもの
ギリシャやスペイン、インド、イタリアなどでは、家族以外の他人も子育てを助けたほうがいいと考えられている。例えばブラジルでは、祖父母や兄弟姉妹、いとこなどの親族と一緒に一つ屋根の下で暮らすことは珍しくない。ブラジル文化は家族の絆をとても大切にしているので、子どもの世話やしつけは親だけの責任ではないのだ。この文化背景があるので、ブラジルの親たちは気軽に親戚や地域の人に子育ての相談や手助けを求めることができている。
子どもが子どもの世話をする
ポリネシアでは、子どもが乳児のうちは大人が面倒をみるが、子どもが歩けるようになったら幼児の世話は子どもが見るようになる。ポリネシアの幼稚園生は幼児のあやし方を教わるそうだ。よちよち歩きのポリネシアの子どもが他の国の子に比べてて自立しているのはこのためだと言われている。
母乳はみんなでシェアする
かつては日本でも「乳母」という言葉があったように、母に代わって、子に乳をやる女性がいたが、現代では「他人の母乳を我が子に与える」こと自体に抵抗感・嫌悪感を抱く人が大半ではないだろうか。
しかし、アフリカのケニア、コンゴなどの国では、母乳をシェアすることは当たり前だ。むしろ、母乳が出るのに捨ててしまうことのほうがもったいない。母乳が知人や親せき、友人のものでなくても、誰のものか分からない母乳であっても、母乳は母乳という考え方だ。
育児休暇の違い
ドイツでは、出産予定日の6週間前~出産後8週間まで育児休暇をとることができる。もちろんこの期間中は、給料は100%支払われる。職種や収入によって異なるが、12か月休業し、その間給料の65%を支払われるケースもあるそうだ。この育児休業は、独立した個人事業主の女性にも適用され、12か月の育児休暇と前年の収入の80%が支払われる。
ノルウェーでは、育児休暇は10か月で、給料の全額支払い。12か月の育児休暇なら80%である。また、育児休業をとれるのは母親と父親のどちらかなので、必ずしも母親でなくてもいいそうだ。
スペインの子どもは夜更かし
スペインの子どもは寝かしつけられるのが遅い。スペイン人からすると、子どもを19時に寝かせるというのは、あまりいいアイデアではないそうだ。例え小さな子どもであっても、大人と同じように「家族の夜の時間」を楽しむ権利があるとされ、子供の社会性を育むと考えられているからだ。結果として、夜の10時以降に寝る子どももスペインでは珍しくない。
おむつをしない赤ちゃんもいる中国
日本で大量のオムツを購入する中国人の赤ちゃんは、みんながオムツをしているというわけではない。中国では、「開襠褌(カイタンク)」と呼ばれるお尻丸見えのパンツを子どもに履かせる親もいる。なぜこんな形なのかというと、いざ赤ちゃんがおしっこをしたくなったら、どこでもその場でしゃがめて用を足せるようにするためだそうだ。しかし、経済成長の進む現在の中国では、紙おむつを金銭的、物流網的に購入できる層が増えているため、今後はこのお尻丸見えルックが見かけられなくなるかもしれない。
子どもが一人で歩く国
日本の子育てで、海外の人に一番驚かれることといえば、小学低学年の子どもの登下校ではないだろうか。日本に来た外国人は、小さな子どもが一人で電車に乗って、学校や習い事に行く姿を見て感心する。それと同時に、「子どもだけで出歩かせて大丈夫なのか」と心配する。
日本は他の先進国に比べて治安がいいことから、現在も子どもだけの登下校が一般的だ。しかし、子どもの連れ去り事件などが増える現代、今後は欧米のように親が登下校の送り迎えをする時代がやってくるかもしれない。
屋外に赤ちゃんの乗ったベビーカー放置
デンマークやスウェーデンなど北欧諸国では、気温が氷点下の日にカフェの外に赤ちゃんが乗ったベビーカーが並び、親たちが店内でお茶をしている光景を見かけることが珍しくない。北欧の親たちは、外気に触れさせることが子供の発育に良く、レストランなどに行くときは、混雑している店内に入れる方が危険だと考えてこのような行動を取るそうだ。これと同じことをアメリカでしたら、即逮捕されてしまう。実際に、以前ニューヨークでデンマーク人の親がレストランで食事をする間、生後14ヶ月の娘をベビーカーに乗せたまま外に放置していたところ、複数の通行人が警察に通報をして親が逮捕されたことがあった。
親も子ども平等に
スウェーデンでは、親も子どもも平等であるという考え方が一般的だ。子どもはしつけるべき存在というだけではなく、「個」として大切にするべきだと考えている。これはつまり、親も子どもも、家族の中では同等の権利をもっているということで、家族の決め事などは親だけで決めるのではなく、子どもにも意見を聞き、子どもの意見を尊重する。子どもにも親と同じ権利があると考えているので、親が子どもに体罰をすることは法律で禁止、罰則と
されている。
おわりに
いかがでしょうか。世界のお父さん、お母さんたちは様々な価値観で子育てをしていることがわかるだろうと思う。日本の子育て法とは違うやり方がおかしいわけでも、劣っているわけでもない。それぞれの親がそれぞれの考えで、子どもを育てている。これでいいのだ!