ホームつきあい「君は日本人なのに目が丸いね」と外国人に言われて学んだこと

「君は日本人なのに目が丸いね」と外国人に言われて学んだこと

マダムリリーが大学生のころの話だ。当時はまだ、海外長期滞在の経験もなく、外国人留学生の友だちが少しずつでき始めていたぐらいで、あまり海外の事情や欧米に詳しくなかった。そんなある日、飲みの席でアメリカ人の男女2人にまじまじと顔を見られて、こう言われた。

 “君は日本人なのに目が大きくて、丸いんだね。
日本人はみんな、もっと目が細いものだと思っていたよ。”

こう言われた瞬間、正直カチンと来た。馬鹿にしてるのか?と。日本人はみんな目が細いと思ってたのか?こう言えば、日本人は喜ぶとでも思っているのか?自分たち(白人)の目の大きさを、暗に自慢しているのか?目が大きいと褒めつつ、実はマウンティングしているのかと疑って、ものすごく嫌な気分になったのを覚えている。

しかし、こちらの嫌な気分とは裏腹に、アメリカ人たちはとても無邪気だった。話している様子に全くもって、悪気がない。失言したと悪びれる様子もないし、馬鹿にしているわけでもない。ただ単純に思ったことを口にした、という印象だった。

それから数年経ち、マダムリリーはフランスで生活するようになった。そしてまたフランスでも、同じようなコメントをされたのである。

アジア人は基本的に、目がブリデ(吊り目)だよね。

フランス人たちは全く悪びれる様子がなかった。悪意も、嘲笑も、何もない。前回のアメリカ人と同様、単純に思ったことを口にした、という感じだ。

そこで、ようやく気が付いた。どうやら欧米では、日本人が思っているほど、「目が細い人」に対してマイナスイメージがないらしい。欧米人は日本人ほど、目の大きさにこだわりがないのだ。だから、こんなにも無邪気に他人の目の大きさを指摘できるのである。

そこで、フランス人に「二重と一重の違い」を説明してみると、「目の上に皺があることなんて考えたこともなかったよ!」と感心されてしまった。しまいには、「なんでみんな二重のほうがいいと思うの?」と、質問される始末である。

考えてみれば、日本での「デカ目信仰」は、目が小さいというコンプレックスが背景にあるからこそ生まれた独自の美的感覚だ。事実、アジア人が美容整形する個所で最も多いのは目元である(日本人が美容整形したい箇所ランキングより)。そんなコンプレックスがあるからこそ、目が大きい人が美しく、目が小さい人は醜いという美の基準が生まれるのである。しかし、これは世界共通ではない。

 

白人がもつ容姿のコンプレックス

それに対し、元々どの人も平均して目が大きい欧米人は、目の大きさで美醜を判断しない。彼らがコンプレックスを抱いているのは、成長するにしたがってどんどん大きくなっていく鼻。欧米では細くて小ぶりな鼻こそ美しく、顔の中心にある大きな鼻を「醜さの象徴」のように嫌う傾向がある。もちろん、欧米人が美容整形する顔の箇所で、最も多いのは鼻だ。

「君は日本人なのに目が丸い」と外国人に言われて人生変わった話
ノーズジョブ、美容整形のビフォーアフター

以前、金髪と付け鼻をつけて外国人に変装したANAのCMに抗議が殺到し、放映が中止になったことがあった。日本人からすると、このCMのどこがダメなの?と不思議かもしれないが、これを見た白人は「大きな鼻」を馬鹿にされたように感じたという。その原因は、白人がもともと「大鼻コンプレックス」を持っているからだろう。

こう見ると、美の基準なんて、国によって全然違うんだなとつくづく思う。

いや、これは何も美醜に関することだけではない。私たちが普段何気なく思っている「これがいい!」という価値判断は、実は環境や社会、文化によって作られたもの=虚像にすぎないのだ。「目が大きいほうがいい」、「鼻は小さいほうがいい」なんて、よくよく考えてみると本当に馬鹿げたルールだと思う。小さな世界で通じる、視野の狭い固定観念でしかない。自分が正しいと思っている常識は、実は常識でも何でもないのだ

 

この出来事から学んだ17のこと

マダムリリーが、このアメリカ人の発言によって学んだことは多い。これを機に、自分が無意識に持っている固定概念や決めつけを意識するようになった。そういった意味で、アメリカの友人が言った「君は日本人なのに目が丸いね」という一言は、人生を変える忘れられない一言となったようにも思う。自分が「真実」だと思っていることも、単なる思い込みなのかもしれない。そうやって疑うきっかけになった言葉だからだ。

この体験で学んだのは…
1. 自分が普段思い悩んでいることも、他の人からすると「何それ?」程度の話だということ

2.  固定観念というのは、自分が意識していない間に、いつの間にか出来上がっている、ということ

3. 「普通~でしょう?」とか、「常識で考えれば~」という言い方をする人は大きな勘違いをしている、ということ

4. 気に入らないことを言われた場合でも、すぐに頭に血が上ってはいけない、ということ

5. 人間と言うのは無意識的に、他人はみんな自分と同じ考えだと信じ込んでいる、ということ

6. 悪気のない一言が相手を傷つけ、知らないうちに嫌われることもあり得る、ということ

7. すぐに差別だ、偏見だと決めつけるのではなく、どういう意図があっての言動かを見極めることが大切だ、ということ

8. 海外経験が豊富な人がよく言う「視野が広がった体験」というのは、自分の固定概念を崩される体験を指す、ということ

9. 外国人と話すときは、容姿にはできるだけ触れないほうが無難だ、ということ

10.  外国人の外見を褒めるときは、顔が小さいとか身長が高いというような身体的特徴を褒めるのではなく、「今日の服が素敵」、「あなたに似合っている」とか、「きれいだね」と言って褒めるほうがいい、ということ

11. 美の基準とコンプレックスは表裏一体である、ということ

12. どんな人間も、程度の差はあれ、ステレオタイプや偏見がある、ということ

13. 相手の意図することを勝手に捻じ曲げて、おかしな翻訳をすることが、卑屈な性格を生む原因の一つだ、ということ

14. 相手の意図することを勝手に解釈し、自己完結して関係を終わらせるよりも、コミュニケーションをとって理解しあおうとすることが大切だ、ということ

15. ヘイトスピーチは言葉の一字一句が問題なのではなく、なぜそれを言うのかという「理由」のほうが問題だ、ということ

16. 「私は正しい」という妄信は、私から自由を少しずつ奪っていく、ということ(参照

17. 世界には、自分の知らないビックリするような常識や価値観がたくさんある、ということ

 

哲学者のアウグスティヌスは言った。

“The world is a book, and those who do not travel read only one page.” 

―世界は一冊の本である。旅をしない者は、1ページしか読んでいないのだ―

世界は広い。あなたが「真実」だと信じて疑わない概念は、1冊の本の1ページだけに書かれていることに過ぎない。だからもっと旅をしよう。もっと世界のことを知って、もっといろんな国の人と話をしてみよう。

外国人の何気ない一言が、あなたが見る世界をまるっきり変えることになるかもしれない。

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