ホーム海外事情外国文化仏のごみテレビがひどい リアリティ番組が日本にもたらす脅威とは

仏のごみテレビがひどい リアリティ番組が日本にもたらす脅威とは

震災以降、マスコミ叩きがひどくなった。怪しいお米セシウム米や、フジテレビ抗議デモ、花王不買運動など日本のマスコミに対する批判は日に日に高まっている。しかし、マスコミに対する批判は日本だけのことではない。フランスでも、マスコミの批判が高まっている。

世論調査専門家Ipsosの調査によると、1999年から2004年にかけて視聴者のテレビ満足度は減少し、視聴者の60%がテレビ番組に不満を持っていると言う。日本語の“マスゴミ”にあたる、フランス語はtélé poubelle(テレ プベル)である。プベルとはゴミという意味で、テレ プベルは直訳すると『ごみテレビ』である。

それではフランスのテレ プベルとはどういった番組のことを指すのか?フランス語版ウィキペディアには以下のような記述がある。

La « télé réalité » et autres émissions “voyeuristes” (Loft Story, Secret Story,Occupation Double ..)

リアリティ番組や、その他のぞき趣味的な番組を指す(ロフトストーリー、シークレットストリー、オキュペーションダブルなど)

フランスでごみテレビの象徴だとされ、日本にはまだ馴染のない“リアリティ番組”とは一体どんなものなのだろうか?

リアリティ番組とはアメリカで1948年から放送されたどっきりカメラ番組に起源をもつ、視聴者参加型バラエティ番組である。素人出演者たちが直面する物語や体験を楽める番組で、ヨーロッパでもテレビを席巻する人気を博しているのだ。

例えば、日本のフジテレビと提携契約にあるTF1が現在放送しているリアリティ番組、「シークレットストーリー」では、男女の素人参加者が10~15週間シークレットハウスと呼ばれる家に閉じ込められ、そのなかで他の参加者に自分のヒミツがばれないように生活しつつ、他の参加者のヒミツを密告すれば賞金がもらえるという番組である。ヒミツの内容は、「私はアインシュタインと同じIQである」とか、「性転換しようと思ってる」とか、「参加者Aと恋人関係にある」といったものだ。

 

 日本にあった番組で例えるなら、フジテレビの「あいのり」や日本テレビの「キスだけじゃイヤ!」あたりがリアリティ番組に分類される。しかし、日本のリアリティ番組とフランスのリアリティ番組は決定的に違う、ゴミ要素が全部で3つある。

まず1つは、視聴者投票だ。フランスのリアリティ番組では大抵が視聴者による電話やインターネットでの投票があり、視聴者は「もうこれ以上テレビで見たくない参加者は誰か?」を選ぶ。毎週1人ずつ参加者が減っていき、視聴者投票で残った人がファイナリストとして賞金がもらえるようなゲームになっていることも多い。

番組視聴者に参加者を落とす権利があるというのはつまり、テレビ局が参加者を叩くことを促すということに等しい。視聴者による民主主義的な投票を番組製作者側は謳っているが、実際カットや編集でテレビ局が意図する方向に視聴者を誘導することも可能で、「この編集では私が悪者のように見えてしまう」と抗議・反論する者もいる。実際に、フランスのリアリティ番組に出演した人が後に自殺を図るようなケースもでている。仏のごみテレビ、シークレットストーリー

第2に、「のぞき」が欧米のリアリティ番組に言える特徴だ。先に述べた「シークレットストーリー」もシークレットハウスにはトイレと視聴覚高等評議会の定める部屋以外には全て監視カメラが設置されている。24時間参加者の様子をインターネットで閲覧できるような番組も多い。こういった“覗き見”できる部分が、テレビ視聴者の変態気質を助長するのではないかという懸念があるのだ。

そして第3に、これがリアリティ番組で一番の問題だと個人的には思うのだが、番組製作者側の“悪意”を感じるものが多いという点だ。先ほど例に挙げた「シークレットストーリー」では、téléphone rouge(ホットライン)で参加者に電話がかかってくる。その内容は「参加者である恋人の女Aをだまして、参加者女Bと一週間同じ部屋で生活したら賞金をあげる」とか。

番組の焦点は参加している素人同士のメロドラマ的人間関係や恋愛・苦闘であるがゆえ、番組制作者は参加者同士で裏切りや嘘、嫉妬心やけんかなどを生むようなドラマを生んで視聴率を稼ごうと必死なのだ。視聴者はテレビに出ている素人参加者が、泣いたり怒ったり、騙したり騙されたりする姿を映像で追って楽しみつつ、嫌な奴は電話をしてオトスことができるのだ。

このリアリティ番組で一番気持ちが悪いのは、テレビ出演者をまるで動物園の檻のなかにいる動物かのように鑑賞できる点だ。フランスのリアリティ番組を見ていると、「賭博黙示録カイジ」の鉄骨渡りを見物しているパーティー参加者のような気持ちになる。自分の家という安全なところから、テレビに出ている素人がもが苦しみ、悲しむ姿を観察する。「シークレットストーリー」では、テレビに出演している人のヒミツやたくらみを全て知っているのが視聴者だ。リアリティ番組のなか起こることをコントロールしているような気分にもなれる。

カイジの鉄骨わたり

とはいうものの、リアリティ番組というのは高視聴率番組であり、フランスでも多くの人が毎週楽しみにしている番組なのだ。私はリアリティ番組反対派なのでこういった番組は見ないが、毎週続けてみてみれば面白くなるものなのかな、とも思う。参加者が来週はどう動くか?が気になって次の週も見てしまう。そんな視聴者の気持ちもわからなくもない。

しかしながら、人間の妬みや自己顕示欲、復讐心や嫉妬心、お金への執着などを取り巻く人間ドラマをテーマにした番組を見て育つ子どもはどうなってしまうのか?と心配に思う。欧米のリアリティ番組のフォーマットがより巧妙に日本にローカライズされていくという説もあり、こんな中身のないゴミ箱テレビが日本でも流行ってしまったらと考えると、とても恐ろしく思う。

写真:Eric Driggers

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1コメント

  1. 俺もリアリティー番組は嫌いだけど、日本の番組もひどいから、何もいえないなー。

    ただびっくりしたのはイギリスのBIG BROTHERというリアリティー番組はSEXまで盗撮するらしいです。

    それはちょっとやりすぎでしょ!って思う。

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