テレビのバラエティ番組などで活躍するおネエ系タレント。しかし実際に私たちが同性愛者と接してみる機会はあまりなく、何となく嫌悪感を抱いてしまう人も少なくないのではないだろうか。2007年日系ビジネスが発表した日本の同性愛者は274万人で、10人に一人が同性愛者だという。昔に比べれば日本も同性愛が社会的に認められてきてはいるが、それでも他の先進国と比べると同性愛者たちの権利の保障が遅れており、日本では同性愛者への偏見や無理解が目立つと指摘されてしまうことも少なくない。
また、日本の同性愛者の約6割が自殺を考えたことがあるという研究結果もあり、同性愛者の置かれた社会状況が同性愛者の精神状況に影響を与えていることがわかる。日本でも異性愛者であろうと、同性愛者であろうと、社会的差別のない同等の権利をもてる国へ変化していくべきなのではないだろうか。そこで今回は、目をそらしがちな「同性愛者の権利」に関する日本と世界の認識や捉え方の違いを紹介する。
世界の同性結婚事情
日本が同性愛に理解がないと言われてしまう理由のひとつに、同性愛者の「結婚」が日本ではまだ認められていないことがある。現在では世界の多くの国で同性結婚(またはそれに準ずるもの)が認められているが、同性結婚は以下の3つに分類できる。
1. 同性結婚を認めた国(地域)
同性結婚を異性間の婚姻と同等とみなし、夫婦とほぼ同じ権利を認める国や地域を指す。オランダ、スペイン、スウェーデン、アルゼンチン、カナダ、南アフリカ共和国など10か国、アメリカの11州で認められている。
2. パートナーシップ法がある国(地域)
男女の婚姻とは別枠の制度として、異性結婚の夫婦に認められる権利の全部もしくは一部を同性カップルにも認め、保証するという法律(パートナーシップ法)を認めている国もある。結婚を、同居、協力、扶助、貞操など互いの義務と、生活財の共有権や遺産相続権などの互いの権利とを相互に規定した一種の民事的な契約関係であるとみなしてみる。パートナー法とはそうした婚姻に付随する権利と義務のすべて、もしくはいくつかを、同性間のパートナーシップにも認め、民事契約関係を政府が公証したり、制度的に保障したりする内容を持つ法律のことである。このパートナー法を採用している国は、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、スイス、ブラジル、ニュージーランドなど13か国、アメリカ6州、メキシコ2地域、オーストラリア2地域である。
3.同性カップルの権利を保障する国(地域)
同性結婚は認めていないが、同性カップルの権利に対し、何らかの形で法的な保証をあたえている国もある。例えば、イスラエルでは1994年、 非登録の同棲制度が制定され、1996年までに配偶者控除、1998年以降、寡婦・寡夫控除、2000年までに年金に関する権利、2001年までにパートナーが生物学上の親である場合に限り、その子を養子縁組する権利が認められるようになった。裁判所は、同性カップルにさらなる権利を認める判決を下す傾向にあり、イスラエル政府は、異性愛カップルに認められる権利の全てを同性愛カップルにも認められる方向で検討を進めている。
このように日本より経済的に発展していない国でも、同性愛者の結婚を認めている国は多い。最近ではアジアでも法案を検討中、または議論が始まっている国もあり、例えば台湾では同性結婚を認めていないものの、昨年8月11日、台湾初となる同性(女性カップル)による仏式結婚式が執り行われた。それに対して、日本においては、社会民主党が選挙公約にフランスのPACSをモデルとした新制度の創設を目指すとし、日本共産党は欧米各国のパートナーシップ法などを参考に、日本でも性的マイノリティの人権と生活向上、社会的地位の向上のために力をつくすとしたが、 国会などで同性結婚に関する討論が行われたことは2013年の現在までない。このように選挙公約で公言したにもかかわらず、結局は同性愛は「後回し」、「先送り」になっていることからみても、日本社会の同性愛に対する無関心さや無理解さが窺える。
世界の同性愛カップルに対する最近の動向
すでに同性結婚ないしそれに準ずるを法的処置を認めている国では、同性愛者も当然社会的に認められた共同生活を送れるものとして次のステップへ向かっている。それは子育てだ。同性カップルも養子をひきとることにより、子育てをできる社会にしようとする動きが出ている。そんな同性カップルの子育てをめぐり議論が白熱しているのが、昨年政権交代をしたフランスだ。世論調査では、国民の3分の2が同性婚に賛成しているが、同性カップルによる養子縁組の是非となると、世論は二分する。賛成派の意見としては「同性カップルでも親の役割は担える」、「親と呼べる存在がいないで孤児院で育つよりはいい」と言った意見が目立つ。反対意見は「同性愛者が親となれば子どもが学校で混乱してしまう」や、「大事なのは子供たちの権利であって、子を持つ権利ではない」と言ったものだ。同性カップルが子どもを育てるべきか?はフランス以外の国でも盛んに議論されている。現在、同性婚が合法な国は世界に10か国あり、うち9か国が養子縁組も認めている。
フランスに暮らす27歳のトマ(Thomas)さん(仮名)は、自分を育ててくれた「2人の母親」を誇らしく思っていることを世界中の人に知ってもらいたいと思っている。
「僕は生まれた直後から2人の母親に育てられました。でも、それで悩んだことは全くありません。大事なのは与えられる愛情です。」
なぜ日本では同性愛者の法改正が進まないのか?
世界の様々な国で、同性婚や同性カップルによる養子縁組を認める動きがあるのに対し、日本ではなかなか法改正が進まない。その理由はいくつか考えられるが、1つは憲法改正の難しさからくると言われている。日本国憲法第24条1項は「 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」、2項は「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」と規定されている。この“両性”の法解釈で意見が割れてしまうという。また、憲法の改正には厳しい条件が存在するので、条文の変更は容易ではない。さらに、第九条に関連していかなる条文の改正を危険視する勢力が存在するため、憲法改正は非常に難しい。
パートナーシップ法などで夫婦と同一の権限を同性のカップルにも認める法律を制定し、夫婦としてでなく家族として籍の登録を認めることも同性婚の法整備の前段階として考えられる。しかし、それ以前に大切なのは国民が同性愛者の権利にもう少し関心をもつことではないだろうか。私は異性愛者だから関係ないというのではなく、先進国の日本として社会的マイノリティーの人権を後回しにせず、誰もが自分のこととして考えることが大切だと思う。同性愛に対する捉え方の違いは、国によって大きく違いがでる。同性愛も異性愛も全く同じ権利をもつ国もあれば、同性愛者が死刑になってしまう国もあるそうだ(宗教上の理由から)。
しかしながら、多くの先進国で性的指向による差別をなくす動きがあるなかで、未だに何の法整備も行われていない日本は問題なのかもしれない。世界のなかの日本が今後、同性愛者とどう向き合っていくのか。性的マイノリティの人権と社会的地位の向上のために力をつくすと約束したはずの日本の政党に期待したい。